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詰みかけのゲームみたいな世界に迷い込んで1-7,1-8

†††1-7

「え?ど、どうして」
口ごもってしまった。ハンナの母は遠くを見やるように窓の外を見た。
「何度軍を出しても負けるからよ。終いには兵隊まで逃げ出す始末だと」
「え、それじゃあ・・・・・・」
言おうとした言葉は直前で音になる声にならなかった。
「そうよ」
ハンナの母は今まで腹の底に眠っていた感情を抑えきれずに不気味な声色で言う。
「この世界はね、滅ぶのよ、近いうちにね」

†††1-8

「そんな・・・・・・」
俺は何も言えなかった。
「だからあたしはあの子を、ハンナを連れてここに来たの。多分この辺りが魔物がやってくる最後の場所、国の南東の大陸なの。皆この辺りに移住を始めてるのよ」
そんなことをハンナの母は口元に笑みさえ浮かべて言った。しかし、その目に希望は無い。もう死んでいる人の目だ。今この会話で現実を再認識してしまってさっきまでの目とは比べることもできない。

なんとかしたい、と思った。
なんとも幼稚な感情だった。多分テレビで貧しい子供たちがどうのこうの、とやっているのを見た時に湧く感情に似ていた。
でもひょっとしたら、とも思う。
平凡な人間が元いた世界からひょっこり違う世界に迷い込んでしまって、その世界のために戦ったりして、何かうまいこといっちゃう、というのは物語のテンプレートと言ってもいい。王道だ。
俺は今まさにそんな設定にぴったりの人間ってワケだ。
だったら試してみるのも悪くは無い。
死んで元々。というかそもそも夢の世界かもしれないのだ。何をしたっていいだろう。

「すみません・・・・・・。俺に町への行き方を教えて下さい」
俺は半ば衝動的にそう言った。

†††

北の海の魔女 48.0

†††48.0

「ねえ、魔女が呼んでるわよ」
アリスと少女が魔女について話してから、数日後のことです。いつも通りこっそりとパンを食べた後でアリスが夜に少女の部屋にやって来てそう言いました。走ってきたからかいつもより顔色が悪く見えます。
「魔女が・・・・・・?」
少女はぞくっと背筋に悪寒が走るのを感じました。
「そう。早く行った方が、・・・・・・いいわよ」
アリスはそう言ったものの本当は行くべきじゃない、と言いたそうな表情でした。
「・・・・・・。わかった。行くわ」
少女はそう言って起きあがると着替えを始めました。

†††

詰みかけのゲームみたいな世界に迷い込んで1-6

†††1-6

昼食のスープをいただき、ハンナが昼寝をしているとき、母親が説明をしてくれた。
何から話そうかね、とつぶやく顔からは何を考えてるのか読めなかった。
「うーん、よし。決まった。ことの起こりは五年前さ。たったの五年。それでこの世界の様相はすっかり変わってしまった」
どうやらただの世間話ではないようだ。
「北西の大陸の端の端、そこに穴が開いたと言われてるわ」
「穴・・・・・・?」
落とし穴だろうか?
「落とし穴ですか?」
「そんなわけないでしょ。穴からね、何かこう、訳の分からないものがいっぱいでてきたの。魔物って言われてるわ」
「魔物・・・・・・」
大分トンデモ展開なようだ。
「そう。その穴から無限にわき出てくるの、この世界のどんな動物よりも速くて、凶暴で、強い生物が。話では人間の三倍もある巨人とか、火を吐く竜とか」
まるでRPGに出てくる魔物そのままだ。できれば一生関わり合いになりたくない。
「それでどうなってるんですか。その穴は。塞がったんですか?」
「まさか」
そう嘲るように言った時の母親の顔が印象的だった。
「穴は塞がってないわ。国は何度も何度も穴を塞ごうと軍を出したんだけどね」
「今、抗戦中?」
「そう聞いてるわ。でももう穴を塞ぐどころの話じゃないのよ」
母親の顔は絶望を垣間見せた。
「もう、この国の七割は占領されてしまった、という噂よ」

†††

北の海の魔女 47.0

†††47.0

「へっくしゅん!」
「風邪?大丈夫?」
アリスがくしゃみをした少女に尋ねます。
「ううん、大丈夫。きっと誰かがあたしのこと話してるだけよ」

一緒に倉庫で魔女に隠れてパンを食べているときに少女はくしゃみをしたのです。
「最近魔女が出ていくことが多いわよね」
パンをかじりつつ少女はアリスに聞きます。
「そうね。昼に出かけることも多いわね」
「じゃあ、その時間にここに来るってのは・・・・・・」
そう提案した少女の言葉に、しかしアリスは首を横に振りました。
「ダメよ。魔女の帰ってくる時間が全然予想つかないもの。倉庫にいるときに帰ってきたら大変よ」
「今だって危ないんじゃないの?」
「この時間に魔女がいたことは無いのよ。一度もね。だからここに来るならこの時間なの」
「一度も?」
「一度もないわ」
アリスはパンをかじり、ごくりと飲み込みました。


「魔女って今何してるのかしら」
「何でしょうね」
翌日、アリスと少女は昼の掃除をしつつ、雑談をしていました。
「・・・・・・ねえ、魔女って何ができるの?」
「え?」
アリスは予想外の質問だったようで驚いた声を出しました。
「ふと浮かんだのよ、魔女って何してるんだろうって。で、」
「・・・・・・何ができるのかって?」
アリスが少女の言葉の続きを代わりに口にした。
「そんなのあたしも知らないわよ。別に助手ってわけじゃないし。でも逆らわない方がいいとは思うわ」
「どうして?」
「どうしてって・・・・・・。あなたをさらってきたのは魔女よ?その相手に逆らうなんてどうかしてるわよ」
「そうかしら・・・・・・」

†††

北の海の魔女 46.0

†††46.0

「よし、そうと決まれば早速使いを出そう。王様はお忙しいが数日のうちにはお会いできるだろう。それと」
男は少年の方に少し近づいて優しく聞きました。
「あと何日かは待たなければならないが、どうする?この屋敷に泊まっていくか?」
お金をほとんど持っていなかった少年は、
「はい!」
と即答しました。
「ははは・・・・・・。こんな時は子供らしいな」
そう言って男は執事を呼び、王様への使いと、少年を部屋へ案内するよう言いました。


その夜、少年はよく眠れなかった。
少年は起きあがって窓から外の町を見た。
眠れないのはいつもとは違うふかふかしたベッドが合わないからなのか。
違う、と少年は首を振る。
魔女に、妹に少し近づいた気がするからだ。
数日待てば確実に魔女に関する確かな情報が手に入る。
そうなれば魔女までは一直線だ。

待ってろよ、もうすぐ行くからな。
少年ははるか遠くの妹に向かって誓うように右腕を差し出した。

†††

詰みかけのゲームみたいな世界に迷い込んで1-5

†††1-5

え、と振り返ると女の子が不思議そうな顔でこちらをじいっと見ている。思わず見つめ返してしまった。
「えっと、君は?」
「あたしは向こうの家に住んでるの」
そう言って指をさす。その指の先にはドーム型の家が点々と建っていた。妙な家だな、と思った。
「お兄ちゃんはどこから来たの?」
「俺は・・・・・・」
夢の中でもこんな小さな子供に嘘を言うのはためらわれた。かといってわからないんだよ、あははー、も選択肢としては無かった。
「ハンナー!どこだい?」
そのとき救いの声が俺の耳に届いた。女性の、おそらくはこの子の母親の、声だった
「お母さーん!ここだよー!」
ハンナと呼ばれた少女が母親に向かって手を振る。母親はハンナを見つけて、ついでに娘の隣にいる男を見つけて近づいてきた。
「料理の手伝いをしてほしかったんだけど・・・・・・あんた、誰だい?」
肝っ玉母さん的な感じで聞いてくる。ありがたいことに敵意は感じられなかった。
「坂井翔太と言います。散歩していたらここに来ました」
嘘は言ってない・・・・・・よ。
「へえ・・・・・・。今から昼食なんだ。あんたもどうだい?」
「えっ、いいんですか?」
「いいさ。ハンナ、牛の乳を搾ってきてくれる?」
「わかった!」
そう言ってハンナは母親の頼みを聞いて走っていった。
転ばないようにね、と叫ぶ母親に手を振り返すハンナ。
全く、と母親は苦笑いを浮かべる。しかし、振り返って俺を見た時にはその目に笑みは残っていなかった。
「・・・・・・あんた、本当はどこから来たんだい?」
え、と口ごもる俺に母親は言う。
「ここは崖に囲まれた山の上なんだ。入り口を通れば鈴の音が鳴るようになってる」
「・・・・・・それをなぜ今言うんですか?俺が襲いかかる、とか思わないんですか」
ハンナの母親はにや、と笑った。
「おもしろいことを言うわね。なんとなく大丈夫だと思ったのよ。・・・・・・今なら娘もいないからね。で、あんたは何なの?」
「わかりません。俺もどこから来たのかわからないんです。と言うよりも俺は今ここが夢の中だと思っています」
母親が俺をしばらくぽかんと見つめ、いきなり笑いだした。
「あはははは!あんた本当に面白いね!その夢の世界について後で説明したげるよ!」
そう言って笑い続ける母親の後を俺はややこしいことになってるんじゃあないか、とため息をついた。

†††

北の海の魔女 45.0

†††45.0

「王様にお伝えすると言っていたことは本当なの?」
男は西の国南西の街ランフェンの郊外に軍が結成されつつある、ということを王様に伝えねばならない、と嘘をついていた。
あの嘘も本当だったのか少年は聞いているのだ。
「・・・・・・本当だ。私は西の国へ出向いた施設団の一人だ。我々はランフェンでの軍結成の報を受け、すぐにも王様へお知らせせねばならなかった。そして、私の母が危篤だと西の国を偽って伝令のために帰ってきたのだ」
「ランフェンで軍が起こると・・・・・・この東の国と戦になるの?」
「まだわからないが、その可能性は高い。東と西の軋轢は今に始まったことじゃない。長年にわたるものなのだ。それが今吹き出そうとしているのかもしれない」
「王様にはもう・・・・・・」
「お耳には入れた。じきにこの国は警戒態勢に入るだろう」
「そう・・・・・・」
「ところで」
男は少し重くなった空気を変えようとしたのか声色を変えて言いました。
「君はどうして都に来たかったんだい?」
少年は妹が『北の海の魔女』にさらわれてしまったこと、少年は妹を捜して旅をしていることを伝えました。
「北の海の魔女、か・・・・・・。あれに関してはあまりいい話は聞かないな」
「知ってるの?」
少年はこの旅で初めて魔女を知っている人間に会ったので興奮して聞きました。
「ああ、奴は文字通り北の海の島の一つを根城にしている魔法使いだ。長年にわたり人との接触を断ち、悪事を為していると聞く」
「悪事?」
「ああ。詳しくは知らないがなんでも強大な魔法を作り出そうとしているとか」
「東の国は何かしてるの?」
「魔女に対してか?昔はしていたんだが、島に行こうとする者は皆ひどい目にあったそうだ。以来奴は放置されている」
「・・・・・・どうすれば島に行けるかな?」
「さあ、こればっかりは・・・・・・。・・・・・・王様にお会いしてお聞きするか?」
「えっ?そんなことしてもいいの?」
「私を助けてくれたんだ、それくらいはいいだろう。こう見えても私はけっこう偉い臣下なのだよ?」
そう言って男はにやりと笑いました。


†††

詰みかけのゲームみたいな世界に迷い込んで

初回スペシャルだ!!
1-1~1-4まで上げるぜ!
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†††1-1

半年前まではバラ色、とまでは言えないが幸せな人生だった。
半年前までは。
あんなことが起こらなければ俺はこんな山に登らなかったし、こんな事態には陥らなかった。

†††1-2

「ごめん、待った?」
「遅いわよ。何かあったの?」
花蓮がぼやく。俺は走ってきた息を懸命に整える。
「悪い、悪い。目覚ましが鳴らなくてさ」
「どうせまた、止めちゃったんでしょ」
花蓮が素っ気なく言う。
多分、と答えて俺と花蓮は並んで歩き出す。
「時間間に合う?」
と俺は花蓮の左腕の腕時計を指さした。花蓮は時計をちらりと見て、
「余裕よ」
と言った。

†††1-3

「痛え・・・・・・!」
どうやら転んでしまったようだ。もうとっくの昔に寒さなど感じない。この山に入って何時間だろうか。吹き付ける吹雪が情け容赦なく薄着の俺の体温を奪っていく。
もっともそれは好都合なの、だが・・・・・・。
俺は心のどこかで完全にはそう思っていないことに気づく。いや、今気づかないふりをしていたことに気づいたのか。
「早く死なねえかな・・・・・・」
強がってそうつぶやくが歯はがたがたと鳴って、景気付けの意味が全くなくなってしまった。

俺はこの雪山に死ににきていた。
自殺するなら凍死、と俺は昔から決めている。他の方法と違ってきれいだし、あまり迷惑がかからない。死体が見つかることもないかもしれない。カラスにでも食われれば完璧だ。残るは身内が心配することだけだが、生憎俺には身内がいない。

などと考えていたら転んだわけだ。神様が俺に天罰を下さったのだろうか。
そのまま横になって死のうかと伸びていると見てはいけないものが見えた。

洞窟だ。

†††1-4

中に入ってしまった。
俺はふらふらと奥へ進んだ。手頃な岩が地面においてあった。
俺は思い切りそいつに頭突きした。
「俺は・・・・・・、俺は・・・・・・!」
ろくに死ぬこともできない臆病者なのか。あんなことがあっても生きていこうと思っているのだろうか。
約束を破って。

ああ、と天を仰ぎ見る。洞窟のごつごつした岩の陰影が不気味な色合いをなしていた。
くそっ、とぼやきつつも足は自然と洞窟の奥へ奥へと向かう。そんな自分が情けなかった。それでも足は止まらなかった。


世界が抜ける、という感覚を味わった。
地面を見れば草原、だった。イメージ的には春の野、と言っていい。しかし、今は冬だ。というかそもそもここは洞窟の中のはずだ。なのにまぶしい。見上げれば太陽があった。

夢を見ている、という考えが頭の中を占めていく。きっと俺は雪の中に倒れ込んでそのまま死に導かれる前の最後の夢を見ているんだ、そうに違いない。そう思って俺の心を達成感と寂しさが満たす。

ふう、と息を吐いたとき、声が聞こえた。
「お兄ちゃん、何してるの?」

†††

新作を上げるぜ、野郎ども。覚悟はいいか、俺はできてる。

こんにちはこんばんはジャバウォッキー、です。

一応私は「小説家になろう!」にも小説を(ここと同じやつ)を載せています。
しかし、鳴かず飛ばず。一向に読まれてる気配がない。
そこで私は自分の才能のいたらなさを恥じる、前に!一計を案じました。

よし!異世界転生物を書こう!・・・・・・と。
だって、流行ってるみたいだし・・・・・・。いいよね?いいよね。

はーい!新作上げまーす。その名も!
『詰みかけのゲームみたいな世界に迷い込んで(仮)』

・・・・・・ぶっちゃけ、今プロットもくそもない状態でして、超不安なのですが・・・・・・、
ほぼ毎日更新します!

だから『北の海の魔女』と『詰みかけのゲームみたいな世界に迷い込んで(仮)』が毎日上がるわけです。吐きそうだぜ。

というわけで、ここに書いた以上、もう引きさがれません。皆々様、なにとぞ応援よろしくお願いします~!!

追記:拍手、コメントなどをすることで私の創作意欲・創作能力は倍増します。反応を見せてください、お願いしますだ!

北の海の魔女 44.0

†††44.0

「さ、どうぞ」
門番が屋敷の入り口まで着いてきて呼び鈴を鳴らした。するとすぐに執事らしき人物が扉を開けた。
「この子が例の子だそうだ。旦那様の所まで案内して差し上げてくれ」
「わかった。・・・・・・ようこそおいでくださいました。どうぞお入りください」
そう言って執事は少年を中に入れた。

執事に連れられて豪華な廊下を歩く。長い廊下にいくつも部屋が並んでいて、そのうちの一つで執事は立ち止まり、ノックした。
すると中から男が扉を開けた。
「旦那様は?」
執事がその男に聞く。
「今は起きていらっしゃる」
「わかった」
執事が部屋に入り、部屋の奥にある扉の前で止まり、
(こちらです)
と手で示している。少年がその扉の前に立つと、
「旦那様、よろしいでしょうか」
「なんだ?」
「件の少年がいらっしゃっています。お会いになられますか?」
「もちろんだ。お通しせよ」
執事が扉を開け、お辞儀をする。少年が入ってもいいのか、と執事の顔を見ると、執事は軽くうなずいた。
「ああ!来てくれたのか!」
『旦那様』は部屋に入った少年を見るとそう言った。
『旦那様』は大きなベッドから体を起こしていた。体中に包帯を巻いている。
少年はあわてて駆け寄った。
「あああ!横になって寝ていてください!ええと、旦那様」
『旦那様』は素直に横になった。そしてくっくと笑うと、言った。
「気を使わなくてもいいよ。君には命を救われた恩がある」
「わかった。じゃあ、他の人と同じように接します」
『旦那様』、いや男はその言葉にうなずいた。
「あなたは何者なんですか?」
少年は気になっていたことを男にずばり聞いた。
「私は君が設定したようにこの国の貴族で、正に王様の家臣だ」
「じゃあ、僕のついた嘘は・・・・・・」
「嘘ではなく本当だった、というわけだ」
そこで男はハハハ、と笑った。
「びっくりしたよ、全く」
快活そうに笑う男につられて少年もははは・・・・・・と力なく笑った。

†††