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詰みかけのゲームみたいな世界に迷い込んで1-15

†††1-15

「くっ・・・・・・!」
立ち上がれそうになかったので転がって後ろにいた少女に対して正面を向く。
が、少女はいない。
「くそっ、そういう魔術なのか」
この世界の魔術などこれっぽっちもわからないがつぶやいてみる。少女が反応してくれれば情報を拾える。
「そうよ」
またもや後ろから攻撃された今度は背中だ。一点攻撃してこないのはすこしありがたい。
痛みにうずくまる俺に少女は言う。
「あたしの術があんたに見破れるかしら?」
笑いながら言ってやがる。見てろ。
俺はまた転がって、壁際に寄った。
「これならどうだ・・・・・・?」
そして立ち上がる。壁を背にして。
これなら背後からの攻撃はできまい。どうだ?
「へえ・・・・・・。でも残念でした」
少女はそう言うと到底届かないような位置から杖を振った。上から下へ。何かを殴るように。
はっとして俺は頭をかばったが杖はちょうど腕を上げてがらあきになったわき腹に当たる。
「ぐふっ・・・・・・」
「どう?まだ降参しないの?」
「へっ、誰が降参なんか」
「強情ねッ!」
少女がもう一度杖を振り上げる。それに合わせて俺は少女に向かって飛び出した。距離は二メートルほど。こいつが『消える』のが早いか、俺が捕まえるのが早いかだ。
少女が一瞬の逡巡の後、杖を振りおろす。俺は一瞬加速し、進行方向もわずかにずらす。
果たして俺は賭けに勝った。杖はそのままなら俺が通るはずだった位置を空振りしたようだ。少女は杖を振ってしまったので一動作遅れる。『消える』には多分、時間が足りない。
俺は少女の胸ぐらをひっつかんだ。

†††
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詰みかけのゲームみたいな世界に迷い込んで1-14

†††1-14

「言ってねえよ・・・・・・!」
言いながら俺はふらりと立ち上がろうとするが少女が更に一撃を食らわせる。
手に杖を持っている。それで殴ったのか。さすがにただの木の棒だけあってかなり痛い。
「・・・・・・!」
俺は杖にしがみついた。少女がふりほどこうとするが俺も離さない。むしろ俺の方が力は強いので杖を奪えそうだった。
杖を奪ってしまえばこっちのもんだ、とぐいっと引っ張った。
すぽん、という抜けた手応えはあった。
しかし、手に何も残っていない。というか少女も消えてる。
独り、路地に取り残された格好であぜんとしていると後頭部に衝撃を受けた。
「な、なにぃ・・・・・・!」
次の声を聞かずとも犯人は明らかだった。
「だから甘いってのよ」

†††

詰みかけのゲームみたいな世界に迷い込んで1-12,1-13

†††1-12

「勝負?」
「そうよ」
さきほどの可愛らしいだけだった少女はもうすでに真剣な顔つきになっている。まあ、まだ十分すぎるほどにきれいだが。
「あんたは・・・・・・あたしたちの誇りを地におとしめた。その報いよ」
そう言ってちら、と地面に落ちた紙切れ、チラシを見る。
紙切れ一枚で大げさな、とは思ったが、それが気に障ったのなら謝るべきだろう。
「ごめん。ごめんなさい。そこまで大切にしているとは思わなくて」
そう俺が謝っても少女は頑なに首を横に振った。
「ダメよ。もう勝負することは決まった。覚悟なさい」
あまりに頑固なので、ついカチンと来てしまった。
「・・・・・・謝ってるじゃないか!もういいだろう!」
「うるさい!決着をつけるわよ!表に出なさい!」
「わかったよ!やりゃあいいんだろうが!」
俺は勝負に乗ってしまった。

†††1-13

表、店の外で俺と少女は互いににらみ合った。
「勝負のルールはあたしが決めるわよ」
「好きにしろよ」
ふ、と少女が笑う。
「勝負は『ケンカ』。次の鐘が鳴るまで、この町の中から出ずに行うわ。『参った』と言う、あるいは立てなくなった方が負け。あたしが勝てばあんたはレジスタンス入り。あんたが勝てば放免。それでいい?」
「一ついいか?」
「何よ」
俺が口を挟むと少女は冷たい目で俺を見た。
「俺はお前に手を出さない。悪いけど女に手を上げるなんて死んでもごめんだ。あと、俺が勝ったときのうまみがない。だから、勝負のルールを変更してほしい」
少女は腕組みし、少し考えて言う
「どんなふうに?」
「俺は手を出さない。鐘がなるまで俺が立っていたら俺の勝ち。俺が『参った』と言ったり、立てなくなったらあんたの勝ち。で、俺が勝ったら・・・・・・そうだな、金をくれ」
「金?」
「生憎と一文無しなんで」
「・・・・・・まあ、いいわ。それで文句無いわね?」
「無論だ」
「開始はいつでもいいかしら?」
「いい」
「じゃあ、始めるわよ」
そう言うやいなや少女は懐に手を突っ込み何かを取り出そうとした。それを見て、いや、見ずに俺は一目散に回れ右して人気のない路地に向かって走り出した。
女の子のぽかんとした顔が目に浮かぶようだ。巻いてしまいさえすれば俺の勝ちなのだ。
「甘い!」
腹に重い何か、がめり込ん、だ・・・・・・。
俺は思わず膝をついた。少女の細い足が見える。俺の目の前に立って俺を見下ろしている。
「言ってなかったっけ、あたし魔術師なの」

†††

北の海の魔女52.0

†††52.0

「さて、始めようかね・・・・・・」
魔女が手を上げて魔法を掛け始めました。
魔女の周りに風が立ち、床で渦を巻き、机の上の本のページを好き放題にめくっていきます。
魔女が調合していた薬品の中身がガラス瓶の中から重力から解き放たれたようにふわふわと舞い上がり、赤と青の液体が空中で半分混ざりあい、まだらとなって魔法陣へと吸い込まれていきます。
「さあ、終いだよ・・・・・・」
最後に魔女が両の手を勢いよく振りおろしました。
風が止み、静寂が訪れます。
少女には何も起こりませんでした。

「な・・・・・・何・・・・・・?」
魔女がただ立っているだけの少女を見てよろめきました。
「まさか、お前ではなく・・・・・・?兄だったのか・・・・・・?そんな・・・・・・」
魔女はぶつぶつとなにやらつぶやきながらきょろきょろと周りを見回しています。
「これも問題ない。クリコアトール(*赤と青の薬品のこと)も上手くいっていた・・・・・・。だとすれば・・・・・・」
魔女はつかつかと少女が立っているところまでやってきました。
「そこをおどき」
魔女が乱暴に少女を退かします。そして魔女は魔法陣をじっくりと見直し始めました。
そして、
「アリス!!ここに来なさい!!」
そう叫びました。

†††

詰みかけのゲームみたいな世界に迷い込んで1-11

†††1-11

俺は微妙にまずい何か黒い液体を飲むふりをして、少女の話を半分くらい聞きながら少女の顔を眺めていた。
「・・・・・・大丈夫?ぼうっとしてるけど」
「!!大丈夫大丈夫。ちょっと寝不足で」
「そう。ならいいけど」
少女は自分の分の飲み物をちびりと飲んだ。
「まずい茶ね・・・・・・。こほん、レジスタンスっていうのわね、世界中にいる魔物を片っ端から倒していく人の集まりよ」
ふんふんとうなずく。
「今ね、この町でその気のある人を募ってるの。それであなたに出くわしたってわけ」
「へえ、奇遇だね。全部で何人くらいいるの?」
「全部で数百人いるわ」
「思ったより多いな」
「熱意のある人が多いのよ。戦況だってちょっとずつ良くなってきてるわ」
「前に会った人はもうおしまいだ、みたいなこと言ってたけど?」
少女は一瞬詰まったがすぐに、最近変わったのよ、と言った。

しばらく俺がレジスタンスについて聞いた後で少女は聞いた。
「ねえ。あなたはこのまま何もしないでいるの?それともあたしたちとこの世界のために戦いたい?」
そう望んであの山を出てきたわけだがこうやって選択肢を目の前にぶら下げられると即答できなかった。
「・・・・・・考えさせてくれないか。少しでいいんだ。長くは待たせない」
少女が、えっ、という顔をした。予想外、だったのだろうか。
「まだ決めるべきじゃない気がするんだ。他のレジスタンスもあるって言ってたよね。そこでも話を聞こうと思うんだ。いいかな?」
少女はまだ信じられない、とでも言うような顔で俺を見ている。俺の顔に何か付いているのだろうか。
「?・・・・・・じゃあ、俺は行くよ。あ、支払いはどうしよう?」
と間抜けな質問をレディにしてしまった時、少女が口を開いた。
「・・・・・・入ってよ」
俺は少女のその声色に凍り付いてしまった。低く、呪うようなトーンだった。
「入ってよッ!」
そう言ってチラシを押しつけようとする。俺は思わずその手を払いのけてしまった。
「・・・・・・ッ!」
「なにをするんだ!」
俺は怒鳴ったが、少女は払いのけられて床におちたチラシを凝視していた。
そして、
「あんたに」
震える指で俺を指し、怒りに満ちた目をして俺に言った。
「・・・・・・勝負を挑むわ」

†††

北の海の魔女 51 .0

†††51.0

「本当に大丈夫かしら・・・・・・」
一人残された少女は少し泣きそうになりながら魔女が戻るのを魔法陣の上で待っていました。
しばらくして魔女が戻りました。
「・・・・・・これでよし、と。さあ、始めようかね」
材料をいくつか持って楽しそうな声で言いました。
「これから何をするつもりなんですか?」
「何でもないよ。ちょっとした実験さね」
魔女はこちらを見ずに何か薬品をいじりながら言いました。
「このまほ・・・・・・図形は何ですか?」
少女はうっかり魔法陣と言いかけてあわてて言い直しました。
「そいつはね・・・・・・お守りだよ。そこから出るんじゃないよ」
どうやら言い間違えそうになったことには気づかなかったようです。それよりもお守りと言うまでの間が気になりました。

†††

詰みかけのゲームみたいな世界に迷い込んで1-10

†††1-10

町に着いた。

・・・・・・けどどうしよう。何をするプランがあるわけでもない。ぶっちゃけノリで何も考えずに来ただけだから当たり前だが。
何か魔術師的な格好をしている人を適当に捕まえてみようか、と思っていると。
「ねえ。ねえ、そこの君」
肩をとんとん、と叩かれた。女性の声だったので男性の場合の倍くらいの速度で振り向くと、まさに魔術師っぽい格好をした同い年くらいの女の子(美人!)が立っていた。
頭の大きさに対して不釣り合いに大きな黒くて鍔のある帽子をかぶり、その帽子から流れるように長い金髪があふれ出ている。人形のように美しい顔立ちに、黒いローブを来ていてもわかる均整のとれたスタイル。ただの木の棒みたいな杖もかわいく見える。
要するに俺のストライクゾーンどんぴしゃだったのだ。
(YES!!)
心の中で力一杯そう叫ぶ。女の子がちょっと不思議そうな顔でのぞき込むように俺を見る。
「君、どうかな、レジスタンスやらない?」
「レジスタンス?」
そう、と言いながら少女は紙を差し出す。チラシだった。当然読めない。
「ごめん。俺読めないんだ、字」
ちょっと語弊があるとは思ったが事実なのだから仕方がない。
ああ、と納得したように少女がうなずく。
(説明してくれ。説明してくれ。会話してくれ)
言っておくが下心など全く無い。無いよ。
「じゃあ、説明するわね。立ったままじゃなんだから何か飲みながら」
当然俺は二つ返事でついていった。

†††

北の海の魔女 50.0

†††50.0

「魔法陣?」
「そう、魔法陣。魔法の力を引き出すためのものよ」
「あたしなんでこんなところに立たされたの?」
「なにかの魔法をかけようとしたのよ」
そう言いつつアリスはポケットから小さなナイフを取り出した。
「これで魔法陣に傷を付けるわ」
「それで上手く行くの?」
「行くわ」
アリスはかがみこんで魔法陣を床ごと切り始めました。
床にナイフをぎりぎりと突き立てて陣に傷を付けます。
陣の線を横断するようにナイフで線を引くと、
「これで大丈夫。あたしは行くわね」
「えっ、魔女が来たらどうするの?」
少女がそう言ったときにはアリスはもうドアに手をかけていました。
「大丈夫。何も起こらずに魔法は失敗するわ」
アリスは出ていってしまいました。

†††

詰みかけのゲームみたいな世界に迷い込んで1-9

†††1-9

ハンナとその母が見送って手を振ってくれた、のは数時間前。山を下りて、なぜか上って、ようやくふもとにたどり着いた。
「ああー、もうやめよっかな・・・・・・」
早くも挫折のきざしあり、だが平々凡々な俺には過酷すぎるハイキングであった。
「あーくそ、足が痛え・・・・・・」
などとぼやきつつ、さらに歩くこと一時間。野に咲く花とか、鹿とか見ながらこの世界は驚くほど前の世界と似ていることに気づく。
「もっと違ってもいいんじゃないのか・・・・・・?やっぱり夢なのかな・・・・・・」
そんなこんなで看板を発見。しかし、読めない。
「なんでだー!会話はできただろーが!」
なお、さっきまでの会話がなぜ成立していたかというと・・・・・・謎だ。テレパシー的な何かだと思う。看板には通じないようだ。

面白くないので足下に転がってた石ころを蹴っ飛ばしながら歩くこと更に三十分。
ようやく町に着いた。

†††

北の海の魔女 49.0

†††49.0

「来たのかい、お入りよ」
少女が部屋の前に立つと中から魔女の声が聞こえ、扉がぎいぎい鳴って開きました。少女が腹をくくって中に入ると、
「そこに立っておくれ」
そう言って魔女はなにやら床に書いてある図形を指さしました。少女が大人しくその陣の中に立つと、
「そのままじっとしていなさい」
そう言って背を向けて準備の仕上げを始めました。なにやらごそごそと材料を選んだり、つぶしたり、混ぜたりしています。

「そこで待っていなさい」
しばらくすると魔女はそう言って部屋を出ていきました。
少女が、どうすればいいのかしら、と考えているとドアの隙間にアリスの小さな顔が見えました。
「アリス!」
少女は小声で友達の名前を呼びました。
アリスが音を立てないようそうっと部屋に入ってきました。
「これは魔法陣ね」
アリスは少女の立っている床の図形を見て言いました。

†††