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北の海の魔女 61.0

†††61.0

時間は少し戻って、アヴィン城からアヴィンの関所へと向かう道中。

「ねえ、ホルトゥン」
「なんだい?」
少年はぼきっ、と森から拾ってきた薪の枝を適当な長さにそろえている。一方で魔法使いは火打ち石で火を点けようと奮闘していた。
「君の魔法って幻影、ってやつでいいの?」
「ああ。皆『幻影(ファントム)』って呼んでる。ついでに僕のことも
ね」
そこでようやく火の粉が上手く燃えやすい枯れ草につき、小さな火ができた。
ほっとしてわずかに肩の力を抜くホルトゥンに少年は忠告がてら話を進める。
「油断しちゃだめだよ。・・・・・・『幻影』についてちゃんと説明して欲しいんだけど」
「そうだね。一度話しておくべきかな。関所に着く前に」
ホルトゥンがようやく付いた小さな火に大きな薪をくべようとしたところ、少年が横からその薪をひょいっと取り上げた。
「こんな大きなのからくべたら火が消えちゃうよ。最初は小さいやつからでないと」
言いつつ少年は先ほどから整えていた薪の中からいくつかを選んで火にくべた。
「へえ、そうだったのか。よく知ってるね」
「まあ、伊達に長いこと旅をしてないからね」
少年はほんの少し自慢げにそう言いました。

†††

詰みかけのゲームみたいな世界に迷い込んで 2-11

†††2-11

「きゃっ」
都の市場をぶらついているとなんか当たった。
ん、と下を見下ろすと髪の白い女の子がうずくまっていた。
白い髪に白いローブ。頭に輪っかがあって翼が生えてたら完全に天使だ。

「君、大丈夫?」
俺が心配して声をかけると、
「あ、歩くときはもっと気をつけて歩いてください・・・・・・」
天使はまだどこか痛むのか、声がいやにぎこちなかった。
「本当に大丈夫・・・・・・?」
「平気です。鳩尾に膝が当たったくらい・・・・・・」
全然大丈夫な事態じゃない。っていうか俺、この子に膝蹴りをかましたのか。
<ジョン!君って奴はいたいけな女の子になんてことを!>
「その言い方おかしくない?」
「・・・・・・?あなたは魔術師なのですか・・・・・・?」
女の子は俺とキティの会話を不思議に思ったようだ。
ん?この子、キティの声が聞こえるのか?
「君こそ魔術師?」
「ええ。私も魔術師です。あなたも?」
「俺はわからないんだよ」
「わからないというと?」
俺はこの世界の人間じゃないんだよ、と言わずにおくかちょっと迷って
結局言うことにした。特に問題は無いだろう。
「俺元々この世界の人間じゃなくて、昨日来たばっかりだから」
「・・・・・・え?」
途端に女の子の顔つきが変わる。
・・・・・・この世界の女の子、皆表情変わりすぎて怖い。

†††

北の海の魔女 60.0

†††60.0

「いよいよだな」
「ああ」
ホルトゥンと少年はアヴィンの関所にいる。そこの城壁から西の国の軍勢がアヴィンを目指してくるのを見ているのだ。

アヴィンは城下町の一つ。アヴィン城の統治下にある町だ。ホルトゥンと少年はアヴィン城に陛下より派遣された客兵、という扱いになっている。
アヴィンは東の国と西の国の境界にほど近くにあり、首都への交通も容易なため、防衛上の重要拠点である。
アヴィン、及びアヴィン城は平地にあり、防御において特筆すべき事柄は無い。

特筆すべきはアヴィンよりも更に国境沿いに存在する「アヴィンの関所」である。

アヴィンの関所とは国境沿いにある二つの山を利用した関所である。
関所であるため、平時は入国者の管理などを担う場所でもある。
しかし戦時下においては優秀な要塞と化すのである。

山を二つ脇に従え、堅固な城壁、城門を有する。
山という障害があるため、大群での攻撃が限りなく困難、という特性を持つ。

攻め手としては関所を無理矢理突破するよりも山を迂回する、山を越える、という選択肢を取ることが上策、と考えられるようになった。

ただし、山の迂回は山の幅の広さ、沼地の存在、などのためあまり良策ではない。
そこでアヴィン攻略において敵が取る戦法は「山を越える」となることが大半だった。
今回もこの作戦で来るだろう、というのがアヴィンでの大方の予想だ。

その場合の対処法もあるのだが、一度確認しなければならないことがあるので、そちらをまず述べておこう。

我らが客兵、ホルトゥンと少年に王様より下された命令は、
「アヴィンを攻める軍を全滅させること」
であった。

†††

地形について説明しましたが多分完全に理解できなくても話にはついていけます。
アヴィンの関所は攻めにくい、程度に思っていれば十分のはずです。

詰みかけのゲームみたいな世界に迷い込んで 2-10

†††2-10

「さー入るわよー」
キティを肩に乗せてミリアが城壁から出ている橋に向かって、てけてけと歩き出した。橋は深く幅の広い堀をまたいでかかっている。堀は全て見ることはできないが城壁をぐるりと囲んでいるようだ。
橋を渡るときにのぞき込むと堀には川が流れていた。流れは結構速い。
「落ちちゃダメよ」
「あ、ああ・・・・・・」
<う、うん・・・・・・>
俺とキティはそろって似たような返事をした。

城門の中は人々がにぎやかに歩き回っている。買い物、仕事、ナンパ、・・・・・・目的は様々でとても滅びかけの世界とは思えないほどに活気がある。
門をくぐり抜けるとミリアはくるりと華麗に振り返り、言った。
「さて!じゃ、あたしは一度レジスタンスの本部に行くわ」
「え?」
「キティ、ジョンのこと見といてね。迷子になるといけないから」
<ラジャー!>
キティはミリアの肩から俺の肩へと器用に乗り移った。ちょっとすごい。
いやいやそうじゃなくて。
「俺も付いていけばいいだろ。なんでわざわざ別行動を・・・・・・」
「怖いの?」
「怖くねーよ!・・・・・・いや、やっぱちょっと怖いかも」
「あんたをいきなり本部に連れていくの、正直面倒なのよね」
「面倒だから置いていくのかよ!?」
「まあ、じきに迎えに行くからその辺ぶらついててよ」
<よろしくね!ジョン!>
「ショウタだ!」

かくして俺とキティだけで都をぶらつくこととなった。
「さすがに活気あるなー」
<都だしねー>
「武器とか売ってないな、食いモンとか服ばっかりだ」
<武器って・・・・・・。そんな危ないものその辺に売ってないよ>
「そりゃそうか」
<あ!見てよ、あの娘かわいい!>
「何!どこだ!?」
そんな感じで俺たちがぶらぶら、ぶらぶら、ぶらぶら・・・・・・しているとさすがに飽きてきた。というか腹が減った。
「お前金ある?」
<ないよ。猫にお金なんか期待しないでよ>
「弱ったな・・・・・・。金がないから飯も食えないぞ・・・・・・」

はあああぁぁぁ・・・・・・とキティと二人、空腹にため息をついて、とぼとぼと歩いていると、
「きゃっ」

なんか当たった。

†††
今日のおまけコーナー!
「さすがに活気あるなー」
「武器とか売ってないな、食いモンとか服ばっかりだ」
「そりゃそうか」
「何!どこだ!?」

・・・・・・町人たちから奇異の視線を送られるジョン。
まあ、猫に話しかけてればね。

†††

詰みかけのゲームみたいな世界に迷い込んで 2-9

†††2-9

「これが都よ!」
「これが・・・・・・ってここ城外じゃん!」
俺、ミリア、キティの二人と一匹は巨大な城壁を外から見ることができる場所に立っていた。
「でもすごいな、これ・・・・・・!」
「でしょ」
その巨大さときたら、端から端まで見通せないほどだった。
まさに圧巻だった。
これなら相手がなんであろうと揺るぎもしないだろう。
俺が城壁を感心したように見ているとミリアは俺に向き直り、まじめな顔で言った。
「よく見ておいて。私たちの敵はこんな城壁を持つ城さえ一ヶ月足らずで落とすような連中なのよ」
「あ・・・・・・。そうか・・・・・・」
そうだ。魔物って奴はわずか五年でこの世界の七割を奪った連中なのだ。人間では何年かけても落とせないような城でも落としてきたにちがいない。
ミリアは城壁を端から端まで眺めて言った。
「・・・・・・この城も連中ならきっと落とすわ」

思えば俺はこのとき初めて敵の恐ろしさを認識したのかもしれない。

†††

詰みかけのゲームみたいな世界に迷い込んで 2-8

†††2-8

「都に行くわよ、覚悟はいいかしら?」
「覚悟って・・・・・・。都はどんだけ危険なんだよ・・・・・・」
「生き馬も目を抜かれるようなところよ」
「じゃあ、キティは全身を持って行かれるな」
<都怖いよー!助けてミリア!>
「かわいそうに。誰にいじめられたの?」
<ジョン>
「まあひどい!私が今からやっつけてあげるわね!」
「ひどいのはお前たちだ・・・・・・」
俺は昨日買ったマントを羽織りながら言った。
「・・・・・・改めて聞くわ。準備はいい?」
「俺には何の荷物もない」
<僕もオッケー!>
「じゃあ、行くわよ!」
そう言うとミリアは右手に持った杖を上から下に切りおろした。
ミリアが切った空間に裂け目ができる。まるでファスナーを開けているようだ。
そしてその向こうはこことは違う所へとつながっている。そりゃもう昨日散々な目にあったから嫌と言うほど知っている。
「行きましょうか」
俺たちはその裂け目をくぐり抜けた。

†††
今日のおまけコーナー!

「ところで宿屋の代金は払ったのか?」
「~♪」
「・・・・・・払えよ!毎日を恐怖と戦いながら必死に生きてる人の宿で無銭飲食すんなよ!」
「うっさいわねえ。あんただけじゃもう帰れないでしょ」
「確信犯め!ごめんなさい宿屋の人!宿代ケチりました!」
俺は遙か彼方の空の下の宿屋の主人に謝った。
「・・・・・・本当は前払いだったりして」
「なんだとー!・・・・・・え、本当はどっちなの・・・・・・?」
「さあーね~」
「答えろよ!」
<仲いいね!>
「うっせえ黒猫!」

詰みかけのゲームみたいな世界に迷い込んで 2-7

†††2-7

「おはよう」
「・・・・・・おはよう」
起きるとミリアはすでに片づけを終えており、キティと二人で俺の顔をのぞき込んでいた。正確には寝顔か。
「何してるんだ」
「面白い顔してるから、つい」
「・・・・・・失礼だろ?」
<そうだよ!ジョンに失礼だよ、ミリア!>
「お前もな!黒猫!」
「ジョン、今日は本部に行くわよ」
「ジョンじゃねえ・・・・・・ってお前今すごく大事なこと言わなかったか?」
「昨日言ってなかったかしら?」
「言ってた?」
<全くジョンはこれだから・・・・・・>
「うるさい黒猫。お前これからどこ行くか言ってみろ」
<魔王の城>
「わかった。お前はもう黙れ」
「そうよ、キティ。正解」
<やったあ!>
「本部って魔王の城なのか!?」
「キティがそこに行くと言うなら私は行くわ」
<ミリア!>
「キティ!」
飛びついてきたキティをミリアはがしっとキャッチ・アンド・ハグした。
「・・・・・・結局行き先はどこだよ」
俺の言葉にキティとの熱いハグを終えたミリアはこう言った。
「都よ」

†††
今日のおまけコーナー!
<・・・・・・>
「・・・・・・」
<・・・・・・>
「・・・・・・」
<・・・・・・ねえ、ミリア?>
「何、キティ?」
<いつまでジョンの顔を見てればいいの?>
「ジョンが起きるまでよ」

更新遅れちゃった、ごめんね!

夢幻 5.0

†††

「おはよう、白田」
「おはよう、月橋」
学校へ向かう道の途中で月橋と会った。まあ、いつものことだ。
「どうしたよ、ちょっと元気ないんじゃないか?」
もう感づかれた。やはりこいつは侮れないな、と思う。
「まあ、色々とな」
「また喧嘩でもしに行くのか?」
「喧嘩・・・・・・にならなきゃいいんだけどな」
「そんな危なっかしいことやめちまえよ。毎度言ってるけどさ」
「毎度言ってるけど、無理」
「やっぱりな、全く。・・・・・・ほどほどにしとけよ?」
「ああ」

†††

「国語わかりにくいよなー、なんであんなにわかりくいんだろ」
「そりゃあ、言ってることと板書に書いてあることが違ったらわかりにくいだろ」
「ああ、だからか」
カオルと月橋は仲良く席をくっつけて話している。さらに、
「それにちょっと声も聞き取りにくいし」
「そして、ちょっと体臭がきついしねー」
と女子二人が口をそろえて言う。カオルは国語の先生を少し応援してあげたくなった。
この女子は水谷と林。大きい方が水谷で、小さい方が林。カオルたちは月橋の周りの席を四つくっつけて座っている。カオルの隣に月橋、カオルの正面に林、月橋の正面に水谷。
「次は・・・・・・数学だな」とカオル。
「お昼の後に数学とか・・・・・・、拷問じゃん」と水谷。ぐでーっと机にのびる。
「眠くなっちゃうよねー」と林。
「俺は昼の後に歴史が一番きつい」と月橋。きついどころかその授業を丸々眠っていることをカオルは知っている。皆も知っている。
「そんなこと言っていつも寝てんじゃん」と水谷。
「いかに俺といえど睡魔には勝てん」と月橋。
「どんだけ睡魔強いんだよ・・・・・・」とカオル。
「そーいえばドクはいつでも起きてるよねー?どーやってんの?」と林。
「え?起きれるだろ」とカオル。
ドクというのはカオルのあだ名だ。白田→白→ホワイト→ドクター・ホワイト(?)→ドクター→ドク
というわけである。
「「「起きれないよ!」」」
月橋、水谷、林の三人が冷ややかな目をして言った。
「ちっ、味方ゼロかよ・・・・・・。あ、ちょっとトイレ」とカオル。
「レディ二人の前でトイレなどと言うな!」と月橋。
「そーだそーだ、トイレとか言うな、トイレとか!」と水谷。
「お前の方が大きな声で言ってるじゃん」とカオル。
「トイレ!トイレ!」と言うのは林。
「・・・・・・おい月橋、こいつらのどこがレディなんだ?」とカオル。
「・・・・・・性別?」と苦しげに月橋。
「・・・・・・だってよ、お二方」とカオル。
「うっせえ、バーカ!」と水谷。
「ほめたって何も出ないよ!」と林。
こいつらがレディだったらうちの妹もレディだな、と思いつつカオルはレディ二人の攻撃を受けている友人(月橋)を置いてトイレに行った。

†††

「・・・・・・いつ森に行くんだ?」
カオルが昼休みにトイレに行くと椿が話しかけてきた。
周りには他の生徒はいない。それでもカオルは小さな声で返事をする。
「今週の土曜だ。今日『お参り』するぞ」
そう言うとカオルは友人たちの待つ教室へと帰っていった。

†††

その日の帰り、カオルと椿は猫町へと行った。『お参り』、つまり狐にあらためてギンパチのことを聞き出すためである。

「確認になるが、ギンパチは烏の森に住む猫の長だ。まあ、これモンだな」
そう言って狐は頬につーっと線を引くように指を動かした。やくざもの、ということだ。
「それは知ってる。奴はどうして断病の鎌を持ってるんだ?」
そう聞いたのはカオルだ。
「特に理由は見つからなかった。おそらくは『名の有る品』の収集目的だろう」
そう聞いてカオルがどこかほっとしたように肩の力を少し抜いたのを椿は横で見ていた。
「・・・・・・断病の鎌、の効果は?」
椿はカオルから目を離して事務的な質問をする。
「知らん。断病というのだから病を断つのだろう。それ以上はモノを調べてみないと」
「役立たずめ」
「ふん、なんとでも言うがいいわ小童が。貴様らが鎌を盗ってくればいいだけの話であろうが」
狐がばはーっと煙を盛大に吐き出す。
「・・・・・・それ以外は?」
狐が煙を吐いて黙り込んだのを見てカオルは質問した。
「無い」
「・・・・・・少なくないか?」
椿もやや呆れ顔で言う。
「・・・・・・実は無くはない。奴の友人、という者の名前はわかった」
「それで居所は?」
「わからん」
「「へ?」」
「わからんと言ったのだ!」
狐は面白くなさそうにキセルをくわえたままそう怒鳴った。
「数日でそんなにほいほい情報が出るものか。いつもいつも無茶な注文をしおって」
「それにしたっていつもの調子じゃないな」
「・・・・・・相手が相手だからな」
狐はじっくりと据えた目をした。何かあったのだろうか。
「やくざ者を調べるのは骨が折れる、とか?」
椿が狐の言わんとしたことを推測してつぶやいた。
狐は渋い顔で面白くなさそうに黙ってうなずいた。
「わしの口からこれ以上は言えん。あとはこいつを探してくれ」
狐はそう言うと紙をぴらっとカオルに寄越して奥に引っ込んでしまった。

カオルが紙を見ると『マタキチ』とだけ書かれていた。

†††
水曜日。

「水曜か・・・・・・」
カオルはカーテンを開け朝の光を前進に受けながら日めくりカレンダーをめくって眠そうにつぶやいた。
「あと三日だな」
「今日を除けばな」
カオルはまたベッドに倒れ込み、二度寝するか否かの危ない橋を渡り始めた。
「眠るなよ?」
カオルは忠告した椿の腰にささった刀をぼんやりと見つめた。
「・・・・・・それ使ったらどんだけ楽かなあ・・・・・・?」
「使わないと言ったのはお前だ。俺はいつでもこの刀を振るってやるぞ?」
しかしカオルは寝返りを打って椿にそっぽを向いた。
「いや、まだいいや」
「そうか・・・・・・」

しばらくして寝息を立て始めたカオルの頭を椿がどついたことは一応書いておこう。

†††

「学校ってめんどうだよなあ・・・・・・」
「それ今更口に出して言うことかあ?」
「正にそうね」
「そのとーりっ!」
順に月橋、水谷、林の発言だ。
四人は今屋上でランチタイムという絶対魔法を展開している。実にリアくさい。
「学校に来ている時間も情報収集に使いたいからか?」
午前の偵察から帰ってきた椿は一切空気を読まずに現れた。
四人で昼食を取っているときに正面の水谷と林の間からにゅっと顔を出して質問してきたのだ。
しかしそんなことでカオルは口に含んだお茶を吹き出したりはしない。幽霊が見えることも、いきなり出てくるのも、もう慣れっこだ。
カオルは簡潔に貧乏揺すりにカモフラージュしたモールス信号で返事をする。
<ソウダ>
「面倒と言えば次は体育よ」
「あっ、そうだった。忘れてた」
「月橋はホント時間割覚えないよね・・・・・・」
「確かにそーだね、不便じゃない?」
「代わりにこいつが覚えてくれてるから大丈夫」
「ほほう、じゃあ俺がお前に間違った時間割を教えればお前は詰むワケか・・・・・・」
「容赦ないな・・・・・・」
これは椿だ。
「鬼かお前は!」
これが月橋。
<ウルサイ ミツケタノカ>
合間に椿に返事をする。椿は首を振り、立ち去っていった。
俺はしばらく椿の背中を目で追うが林たちの声でそれをやめた。
「ドクはホントに毒があるよねー」
「普通は時間割くらい覚えてるんだけどね・・・・・・」
林と水谷がははは、と俺たちを笑う。
「俺に毒なんかねえよ」
「へっ、お前なんか毒だらけだね!ドクドクだね!」
「・・・・・・お前それけなしてるつもりなのか?」
「ドクってどくどくだったの!?」
「林・・・・・・?なんで反応してんの?」
いきなり脇からつっこんできた林に俺はできるだけソフトに対応した。
「実は私もどくどく・・・・・・だったりしてね」
「は、はは、ははは・・・・・・」
一瞬だけ黒いオーラとぎらりと光る眼光を見た気がしてカオルはひきつった笑みを浮かべた。
林とはけっこうなつき合いになるのだが未だに底の知れない女だ。

†††

「マタキチ・・・・・・ね。とっとと見つけないとな」
「何も土曜までにギンパチの所に行こうとしなくても、延期すればいいだろ」
そんなことを言う椿をカオルは鋭い目でにらんだ。
「俺たちには悠長に遊んでる暇は無い。マタキチが見つからなくてもギンパチの所には行く」
カオルのきつい口調に椿はむっとして言い返した。
「学校に行ってるじゃないか。アレはいいのかよ?」
「・・・・・・いいんだよ」
カオルの答えはいつもよりも歯切れが悪かった。

†††

「よう」
「おや、カオルに椿の旦那、よくおいでなすった。ささ、どうぞ」
カオルと椿は猫町の一角にある一軒の居酒屋に来ていた。これで六軒目だ。
猫町、というのは妖怪、幽霊、その他諸々人間には見えざる者の巣くう町のことだ。少なくともカオルの住んでいる周辺ではそういった場所を猫町と呼んでいる。つまり、猫町の住民たちが「ここは猫町だ」と言っているのだ。
「いや、今日は人を捜してるんだ。悪いけど食っては行かない」
「ああ・・・・・・。そうですかい、残念です。で、探してる人ってのは?」
「マタキチ、だ」
これは椿だ。
「マタキチ?」
店主のイタチは、知らないなあ、と言って頭を振った。
「まあ、わかったらお知らせしますよ」
「そうか、迷惑かけたな」
カオルと椿は食い下がることなく大人しく店を出た。

「あいつは嘘をついている」
歩きながらカオルは椿に言った。
「何?どこでだ?」
「マタキチを知らないって言ったときだ。椿今日のところはもう帰る。明日は店主辺りを調べておいてくれ」
「あいよ」

†††

「カオ兄ー」
ノックの音とともに妹の声が聞こえた。カオルは自室のテーブルで色々と書いていたのを中断せずに返事をした。
「ああ、開いてるぞ」
その言葉で妹がドアをがちゃりと開けた。カオルは顔を上げずにドアの側に突っ立ったままの妹に言う。
「何の用だ?」
「何の用もなくては兄の部屋に来てはいけないと!?」
「何で感嘆符付けるんだよ。あと、用がないなら出てけ」
「ひどい!でも用事ならあるもん!」
カオルは手を止めて妹の顔をあきれ顔で見た。
「何だよ、早く言えよ。用件」
妹は兄の冷たい態度にむっとした顔をしたが、次の瞬間、かわいらしい笑顔を全開にして、
「お兄ちゃん、ゲームしよ?」
と言った。
「出てけ!」
間髪入れずカオルは叫んでいた。
「何よっ!へん、カオ兄なんか勉強のしすぎで目え悪くなっちゃえ!」
「何だよ、そのリアクションに困る悪態は!」
「ふん!カオ兄のばーか!ばーか!」
そう言い捨てて妹は自分の部屋に戻っていった。
「兄妹というものはいいものだな」
すぐ側でにやにやと笑いながらそう言う椿が憎らしかったのでカオルは、
「ふん!」
と盛大に鼻を鳴らした。

†††

長くなりそうだったから、途中でぶつ切りに。
いつもなら次はココロのパートだけど次もカオルのパートで。
『断病の鎌』編(?)が終わるまでは。

北の海の魔女 59.0

†††59.0

「はああ、なんでこうなっちまったんだろう・・・・・・」
頭を抱え込むアウル。
「まあ、なんとかなるって」
にこにこしながらずんずんと歩いていくホルトゥン。
「・・・・・・」
二人の大人のまるで正反対な歩き方を後ろから眺めている少年。

この一行は現在大臣、アウルの屋敷に向けて歩いている。
今後一体どうするのか。その話し合いをするのだ。

「わかってるのか?失敗したときは少年は魔女の元にいけない。君もおそらくはただではすまない」
「わかってます、わかってます。だから早く屋敷でお菓子でも食べましょう」
「わかってない!」
そんな二人を後ろから眺めながらこの組でやっていけるんだろうか、と最年少の少年は不安になった。

†††
次回は少し時間が飛びます。
で、ついでに書きためも作っときたいのでしばらく休みます。
ごめんね。
続きがどうなるかちょっと想像して待っててください。

詰みかけのゲームみたいな世界に迷い込んで 2-6

†††2-6

「・・・・・・重いわよ。と言うよりも今のあんたの態度が軽いのよ。なんで今そんなに軽いの」
<そうだよ!不謹慎だよ!>
「いいんだよ。心変わりしたんだから」
俺はしゃあしゃあと肉を口に運びながら言った。
そこでミリアは杖の打撃を、キティは猫パンチを繰り出した。
効果は抜群だ!
「全く、昨日自殺しようとした人間の言葉とは思えないわね」
<見損なったよ!ジョン!>
「ぐはっ。てめえら、覚えてろよ・・・・・・!」
俺はそう叫ぶと、ため息を吐いた。
「俺は死ぬのが怖くなったんだよ!笑いたきゃ笑え!死んだ人間が恋しくなって死のうとしたけど、死ぬのが怖くなってやめにしたんだ!俺は・・・・・・」
そこまで一気にまくし立てて、俺は本当の怒りの矛先をごまかしていることに気づいた。。
俺が不謹慎だとか言ったミリアやキティなんかじゃない。

俺だ。
俺は俺に腹を立てているのだ。
死んで花蓮に会いたいと自殺を試み、怖じ気づき、いまだのうのうと生きながらえているこの体たらく。
「情けねえ人間なんだよ・・・・・・」
そんな言葉が自然と口をついて出た。


「・・・・・・死ぬのが怖いことの何がいけないのよ」
俺の言葉にミリアが静かに、しかし怒りさえも秘めた声で言う。
「死ぬのが怖いなんて当たり前よ。この国にいる人は皆その恐怖と戦ってるの。いつ魔物がやってきて、町を、家族を、滅茶苦茶にしていくのかわからない。不安でも毎日を今まで通り生きていくしかない。そんな私たちの気持ちが今日ここに来たあなたにわかる?あたしは、」
ミリアは立ち上がり、俺の目を見据えていった。

「あんたがまた死のうとしたり、死にたいとか言ったり、考えたりしたら、許さない」

俺はミリアの目を見た。真っ直ぐな目。一分たりとも曲がらない正しい目。俺は彼女の目によく似た目を知っている。とても懐かしい、恋しい目だ。同じように覚悟を持って毎日を生きる人間の目だ。
俺もミリアにならって立ち上がった。
ミリアは俺に道を示してくれている。

俺は彼女に俺の心を示さなければならない。
「・・・・・・わかった。俺はもうそんなことしない。二度と。誓うよ。そして一度は過ちを犯した償いとして、あいつに、花蓮に、恥じないよう、俺はこの国でこの国の人のために戦う。これ以上・・・・・・誰かが死ぬのを見ているだけなのはごめんだ」
「当然よ。あなたはもうレジスタンスの一員なんだから」
ミリアが手を差し出す。俺はその小さな手を握り返す。俺たちは強くうなずき合う。キティが握手した手に乗る。顔を洗う。あくびをする。俺がぱっと手を離す。キティが落ちる。キティが猫パンチを繰り出す!効果は抜群だ!

「はーあ、ばかね・・・・・・」
にゃにゃにゃにゃにゃー!と繰り出される猫パンチの連打でやられる俺の情けない姿を見て、ミリアはそうつぶやいた。

†††
今日のおまけコーナー!
「ブラックキャット・スラッシュ」
攻撃力:100
素早さ補正:+300
特殊効果:ジョンに対してのみ攻撃力+150