FC2ブログ


詰みゲー! 3-23

†††3-23

時計塔に着いた。ここに来るまでやはり町の人には出会わなかった。
しかし、ここにきてようやく人間の形をしたものに出くわすことができた。
それが幸か不幸かは別として。

時計塔の前の広場の中心には大木が鎮座している。さっきまでお嬢様と魔術の特訓をしていた丘の木よりも大きな木だ。
すっくと伸びたその幹はその大きさと比べても頼もしく、幹から伸びる枝、葉は晴れの日は強い日差しを遮り、雨の日は雨露をしのいでくれる。
それは時計塔にも並ぶ町のもう一つのシンボルともいえる大切な木であった。
しかし今、その木は無惨にも中腹辺りで真っ二つに折られてしまっている。爆発した時計塔の残骸をもろに浴びたことが周囲の瓦礫から見て取れた。ひしゃげた長針が代わりに折れた木に突き刺さっていた。
そして変わり果ててしまった広場の真ん中、折れた大木の前、奇跡的に残った一つのベンチにそいつは腰掛けていた。

「やあ」
ベンチに座っていた男はこちらに気づくとやや疲れた様子で手を挙げた。

†††3-24
スポンサーサイト



詰みゲー! 3-22

†††3-22

「誰もいない・・・・・・」
「・・・・・・」
町に入り、いくつかの通りを横切ったのだが未だに人っ子一人見あたらなかった。
「ここにも、こっちの通りにも」
お嬢様が大通りだけでなく、脇道ものぞいては首を振る。
人のいない昼の町というのは異様な光景だった。
「一体何があったんだ・・・・・・?」
そんなつぶやきが人のいない静寂に飲み込まれていく。

「・・・・・・お嬢様、屋敷に寄っていきましょう」
「・・・・・・なぜ?」
お嬢様の声にはややトゲがあった。余計なところへ寄らず、時計塔へ向かいたいということか、あるいは考えが読まれたのか。
「・・・・・・お嬢様。お嬢様は屋敷で待っていてください。私が時計塔まで行きます」
「嫌よ。わたしもこの目で確かめる」
「・・・・・・あくまで待っていてはくれませんか?」
私の声のトーンが無意識に落ちた。
「ええ」
お嬢様が私の様子に少し身構えたように堅い声で応える。
「そうですか」
私はお嬢様の肩をつかんでやや乱暴に突き飛ばした。

「きゃっ」
お嬢様は尻餅をついた。
ここは路地。両側には石造りの建物が並んでいる。道の幅は狭くはない。
仮に両側の家と家をつなぐように壁を作ればこの道はもう通り抜けることはできなくなる。人の行き交う道路にそんな壁を設計するような馬鹿はまずいないが。
「・・・・・・『石盾(ストーンウォール)』」
そんな馬鹿なことを実現してしまう魔法を使用した。
地面の石畳がメリメリバリバリと音を立ててめくれ、伸び上がって石の壁を形成した。
お嬢様を閉じこめるように石の壁をお嬢様の前後に二つ作り上げる。丈は十分に高いのでお嬢様が自力で上ることはできないだろう。
「オーレン!何よ、これは!出しなさい!」
壁をどんどんと叩く音とともにお嬢様の甲高い声が聞こえる。
「すみません、お嬢様」
お嬢様には聞こえないような小さな声でぼそりと謝って私は踵を返して時計塔へ向かった。

†††

北の海の魔女 86

†††86

「・・・・・・くそォッ!!」
グルップリーが歯噛みして悔しがり、悪態をつく。
「これは幻覚だな!?そうなんだろう!?」
「君がそう思うんならそうなんでしょう。だって・・・・・・見破れるんだろう?僕の幻影を」
妙に自信たっぷりなホルトゥンの笑みを悔しそうにグルップリーがにらみつける。
「私は武器庫に来たはずだ。それが今、宴会場にいるなんてことはあり得ない」
「無意識のうちに移動させたのかもしれない」
ホルトゥンが淀み無く返答する。
「・・・・・・できないだろ?」
「さあねえ」
ホルトゥンは肩をすくめ、手をひらひらと振った。
「貴様・・・・・・!」
「落ち着きなよ」
少年は激昴するグルップリーに冷静に呼びかけた。
「落ち着けるか!そもそもお前は敵だろうが!」
「ごもっともで」
少年は大の大人に怒鳴り声を至近距離で食らっても眉一つ動かさずに軽く肩をすくめてみせた。
「・・・・・・あなたに僕が提示する選択肢は二つ」
少年は魔法使い二人に背を向けて、宴会場に置かれていた木箱(酒が入っていたのだろう)に腰掛け、指を一本立てた。。
「一つ目、魔法で僕たちを攻撃する。運が良ければ僕たちに攻撃が当たる・・・・・・かもしれない」
箱に座ったため、地面から浮いた両の足をぷらぷらとさせて、少年は指をもう一本立てた。
「二つ目、攻撃せずに僕たちの捕虜になる。この場合もちろん、この軍も捕虜にする」
その言葉を聞いてグルップリーの顔つきが更に険しくなる。
「捕虜だと?そんな条件が飲めるか。貴様等に・・・・・・」
「あー、まだ話は終わってないよ」
少年がひらひらと手を振ってグルップリーの言葉を遮る。
「捕虜にするのは『僕たち二人』であって『東の国』じゃない」
「・・・・・・?それの何が違うんだ?」
少年はいたずらっぽく、にやっと笑った。

†††

さまよう羊のように 8-5

†††8-5

がたっ、という小さな物音にココとギャットは身を堅くした。

・・・・・・何の音だ!?
無言でココとギャットは視線を交わしつつ同時に拳銃を構えた。
もう物音はしない。

・・・・・・もっと奥へ行け。

ギャットがやや部屋の奥にいるココに指で振り返らずに指示した。視線は部屋と廊下の境目に固定されたままだ。
ココは指示されたとおり、できるだけ物音を立てないように奥へ進んだ。
すると部屋の手前にいたときには気付かなかったクローゼットが見えた。
ココにも確信があったわけではない。ただなんとなく予感があった、というだけだ。
ココはクローゼットの戸を開けた。

†††

詰みゲー! 3-20,21

†††3-20

「お嬢様、大丈夫で、すか?」
「え、ええ、だ、いじょうぶ。ちょ、っとゆ、れるけど」
一刻も早く町へと向かうため、私は腰が抜けてしまったお嬢様をおぶりながら走っていたのだ。
揺れるのでしゃべると舌をかんでしまいそうだ。
そんなことよりも坂の下にある町、いや時計塔が気になって仕方ない。
中に人はいたのか。
今もいるのか。
爆発の原因は何なのか。
・・・・・・旦那様は無事なのか。
「・・・・・・もう少し速く走ります」
「待って。もう大丈夫よ」
お嬢様がそう言ったので下ろしてみると、もう腰は治ったようでしゃんと立つことができた。
「もう少しです。急ぎましょう」
「ええ」

†††3-21

さらに数分走ると町の様子がどうもおかしいことに気づいた。
何と言うか・・・・・・静かすぎるのだ。建物が、それも町のシンボルとでも言うべきものが爆発した、というのに町全体が妙に静まり返っているのだ。
「・・・・・・何か妙ですね」
「・・・・・・そうね。でも行くわよ。お父様の無事を確かめないと。ついてらっしゃい」
「はい、お嬢様」
お嬢様の声は震えていた。

町に着いた。
馬車で行き来するような距離を走り通したのだ。私もお嬢様もぜえぜえと息を切らしていた。
「はあ、う、はあ・・・・・・。つ、着きましたね」
「うう、くうっ、わき腹が痛い・・・・・・!」
「運動不足ですよ、お嬢様」
「十二歳と同じ速さのお前に言われたくないわよ!」
お嬢様はほとんど倒れそうになりながらも必死で立とうとした。私は倒れかけたお嬢様の腕をすんでのところでつかんだ。しかしお嬢様はその手をゆっくりとひきはがし、一人で立つと前を向いた。

†††

北の海の魔女 85

†††85

「じゃあ、彼らもいいのかい?」
少年はホルトゥンに頷いてみせた。
すると三人のいた武器庫がみるみるうちに変化して、宴会場と酔ってぶっ倒れている兵士達が現れた。
「ありがとう。合図通りだね」
「・・・・・・よかったのかい?魔法を解いても」
少年の言葉にホルトゥンがやや不安気な目をした。
「・・・・・・それはこれからわかるさ」
少年は困惑するグルップリーを見て確信を持った声で断言した。

どういうことだ・・・・・・?
俺は魔法使いだから幻覚魔法は見破ることができる。連中の言葉もハッタリだとタカをくくっていた。
俺の感覚では現実と幻覚は二重に視える。手前に幻覚、奥の方に薄く現実、という具合だ。
武器庫に入ったときには確かにここは(現実は)武器庫だった。魔法使いと少年の立ち位置など見えている幻覚との差異があったので、見破ったものと思いこんでいた。
しかし、今は手前も奥も両方とも宴会場が視えている。魔法の使われているようにも視えない(グルップリーは魔法の発動が視界に入っていれば視えるのです。67.0参照)。
つまり、ここ(宴会場)は現実・・・・・・?

†††

詰みゲー! 3-19

†††3-19

「オーレン!わたしを町まで連れて行って!」
「お、お嬢様・・・・・・」
「お願いよ!お父様が心配なの!」
「・・・・・・わかりました。町へ戻りましょう。走りますよ?」
お嬢様が無言でうなずく。
私は町を振り返り、町へ向かって走り出そうとした。荷物は置いていくつもりでいた。
しかし、なぜか後ろからお嬢様に背中を引っ張られたのであやうく仰向けに転びそうになった。
「ど、どうしたのですか、お嬢様?」
振り返るとお嬢様はまだ座り込んでいた。
私と目が合うとお嬢様はあまり余裕のない血の気の失せた笑みを浮かべた。
「はは・・・・・・。腰が抜けたわ。オーレン、悪いけどおぶってくれる?」

†††

詰みゲー! 3-18

†††3-18

「何だ!?」
立ち上がり、爆発音のした方を、町の方を見ると町の中心にある時計塔の天辺に目がいった。
時計塔の天辺が吹き飛んでいる。
文字盤のあった辺りで内側から爆発したらしく、文字盤の上半分は既に無く、今はひしゃげた文字盤の残骸が残るのみだ。
「時計塔が・・・・・・!」
「時計塔!?」
私のつぶやきを聞こえたのか、お嬢様も立ち上がり目を凝らし、ああ、と絶望したような声を漏らした。
「・・・・・・お、お父様の会議はいつも時計塔で・・・・・・」
「何ですって!?い、いや、きっと大丈夫ですよ、お嬢様!旦那様はきっと避難されているでしょう」
私は少しでもお嬢様を安心させようと根拠のない言葉を並べたが、お嬢様の耳には全く入らなかったようだ。
「お父様、お父様・・・・・・!」
もはや無惨な姿へと化した時計塔を凝視して、がちがちと歯を鳴らしている。
そんなお嬢様の姿を私は見ていられなかった。
「お嬢様、お嬢様、しっかりしてください!」
お嬢様の正面に回って、肩を激しく揺さぶると、ようやく焦点が合った。
しかし、お嬢様は今度は逆に私の肩をすがるように掴んだ。
「オーレン!わたしを町まで連れて行って!」

†††

詰みゲー! 3-17

†††3-17 

「~~~~~~~~~~~~」
「お嬢様、がんばってください」
「うるさい、集中してるから黙ってて」
翌日、私とお嬢様は昨日と同じように町の外の木の下にいた。
やはり同じように木の魔力を感じ取る訓練だ。
とりあえずはあと何日かはこの訓練をしようと思っていた。
「魔力というものはですね、こう、」
「うるさい!」
横から口出しする私にお嬢様は怒って足下の木の棒を投げつけた。

「・・・・・・上手く行かないわねえ」
「それって弱音じゃないんですか?」
「上手く行かなーい!って叫ぶのは弱音よ」
「へえー・・・・・・」
「何よ?」
「いえ、何も・・・・・・」
私とお嬢様は持ってきたランチを木陰で食べていた。
いきなり始めた昨日と違って今日は予定していたのでランチもそれなりのものだ。
サンドイッチ、ソーセージ、パン、フルーツ各種、ミルク、その他。
どう考えても多すぎる。
メイド連中が張り切りすぎたせいだ。
荷物が多くなったのは彼女たちのせいだ、と私がため息をつくと、
「あ、ため息」
とお嬢様がぼそりとつぶやいた。
「ち、違いますよ!これは弱音じゃないです!」
「まだ何も言ってないわよ」

その時、視界の端、町の一角で爆発が起こった。

†††

北の海の魔女 84

†††84

「彼の魔法がどんな仕組みで掛けられていて、なぜあなたに見破れないのかは言えない」
「・・・・・・そうか。・・・・・・で、お前は何だ?」
グルップリーが目の前の少年を指さして尋ねた。
「この子は参謀だよ。彼が今回の作戦の大半をひねりだしたんだ」
ホルトゥンがうすい笑みを浮かべつつ横から説明する。
「・・・・・・ほお」
「いやいや、ホルトゥンのアイデアがほとんどでしょ。何言ってるんだよ」
「そうだっけ?」
「・・・・・・つまりお前達二人だけで、我々は窮地に立たされていると?」
ホルトゥンと少年のやりとりにグルップリーは冷水のような声で質問した。
「・・・・・・そうなるね」
少年がやや真顔に戻って応える。
グルップリーはぎりっ、と唇を噛み、右腕を伸ばした。
「お前達が・・・・・・」
西の国の魔法使いの殺気に少年とホルトゥンは身を強ばらせる。
「・・・・・・やめておけ。お前に俺たちは見切れない」
ホルトゥンが少年も初めて聞くような低い声で告げる。
「見切れないだと・・・・・・?上等だぜ。辺り一面を火の海にすれば関係ないだろ!」
「大将も近くにいるんだけど。巻き添えになっちゃうよ」
少年が静かに忠告する。
「・・・・・・問題ない。彼も軍人だ。こういう時の覚悟はできているはずだ」
「じゃあ、彼らもいいのかい?」
少年はホルトゥンに頷いてみせた。

†††