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北の海の魔女 93

†††93

「アリス、アリス・・・・・・。ごめんね、わたしのせいで・・・・・・」
少女はうずくまり、アリスだったカエルを手のひらの上に乗せ、ぼろぼろと涙を流して謝り続けました。
カエルはじっと少女の顔を見つめていました。




少女が泣き疲れてもう涙も出なくなった頃にアリスはぴょん、と少女の手の上から床へ飛び降り、さらに二、三回飛び跳ねたところで少女を振り返りました。
「ふ、ふふふ・・・・・・。そうね、もうそろそろ泣き止まないとね・・・・・・。泣いていても何も変わらないもんね」
少女は、パシン!と顔を両手で叩き、立ち上がりました。
そして机の上にあった大きめの空きビンを手に取りました。魔女が薬の研究のときに使っていた余りでしょう。
「アリス、こっちに来て。とりあえずここに入っててちょうだい。そのままだと危ないわ」
そう言いつつ、少女はアリスをビンの中に誘導します。
「そう、そうよ・・・・・・。ちょっと窮屈だけどガマンしてね」
少女は無事にアリスをビンの中に入れると、魔女の研究部屋から廊下へと出ました。
扉を閉じてもたれ掛かり、目を閉じ、深くため息をつきました。
「さてと、これからどうするべきか考えないと」
少女は決然とした表情で自分の部屋へと戻りました。

†††
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北の海の魔女 92

††††††92

「も、もどして・・・・・・」
少女はアリスだった小さなカエルを指さしていいました。カエルは冷たい床の上でじっとしたまま動きません。
そんなカエルと少女を見ても魔女はフン、と鼻を鳴らしただけでした。
「戻す?そのカエルを?アリスに?どうしてだい?」
ずい、と魔女は少女に詰め寄ります。
少女はその剣幕にただ引き下がることしかできませんでした。
「こいつはあたしの所有物だ。で、気に食わなかったからカエルにした。これのどこがおかしいってんだい?」
怯えて声も出なくなった少女に魔女は呆れてため息をつきました。
「・・・・・・しょうがない。この日のために準備してきたことがアリスのせいでパーになっちまった」
魔女は少女から離れつつ独り言を言い始めました。
床にまき散らされた薬品の数々を見て忌々しそうに表情をさらに歪めます。
「また一からやり直さないと・・・・・・。おい」
魔女はいきなり振り返り、少女に声をかけました。
「わたしはしばらくの間この屋敷を留守にする。アンタは今まで通りこの屋敷の掃除をしているんだよ。わかったかい?」
「・・・・・・はい」
それだけ言うと魔女はその黒いローブを翻して部屋から出ていきました。

しばらくしてバタン、という玄関扉の閉まる音が屋敷中に鳴り響きました。
その音を聞いて一分ほどして少女は今まで起きたこと、魔女が出ていったことを知り、
その場に泣き崩れました。

†††

詰みゲー! 3-48

†††3-48

「うっ・・・・・・!」
「なにこれ・・・・・・!」
突然宿を襲った揺れはすぐに収まった。
しかし、クロックタウンでのことを思うとどうにも胸騒ぎがする。
「外に出ましょう!」
それはお嬢様も同じだったらしく、そう言うや否や部屋から飛び出して行ってしまった。
私もすぐに後を追って外に出ると、町の人々は皆一様にぽかん、とした表情で西の空を見ていた。
お嬢様もその方向を見ている。

真っ赤に灼けた夕日に茜色に染められた空に一筋、うねうねと曲がりくねった黒い影が伸びていた。
その黒い影は植物の成長を速回しで見ているかのように見る見るうちに巨大になっていった。
「お嬢様!」
私はお嬢様の手を取ると、影をよく見るべく高台へ上るための道を人をかき分けて走り出した。
「あれはさっきの町から伸びているの!?」
「わかりません!ここだ!この鐘楼に上りましょう!」

寺院に隣接するざっと見て四、五階はある鐘楼の前で私は立ち止まり、お嬢様を連れて扉を開けた。鍵はかかっていない。
見上げると吹き抜けになっていててっぺんにある大鐘が下から見えた。鐘楼は塔のように縦長になっており、螺旋階段が壁に沿ってぐるぐると輪を描いててっぺんまで続いている。
「お嬢様、行きましょう」
「ええ」
再びお嬢様の手を引き、階段を駆け上る。吹き抜けになっているせいか、ハトの巣やフンがあちこちにあった。
てっぺんの梯子を先に上り、後に続いて梯子を上ってきたお嬢様を引き上げる。

「・・・・・・あれはやはりクロックタウンですね」
頭の中の地図と影の伸びている位置を照らしあわせて、そう私は結論づけた。
高台から見ると影は周りの建物を飲み込むようにして大きくなっていた。
影は先ほどよりもさらに巨大になり、形状が安定してきていた。
「あれがわたしの住んでいた街・・・・・・」
実感湧かないわね、と言ってお嬢様は影に飲み込まれつつある街から視線を反らした。
「記憶が戻らなくても問題ない、なんて言ってたけど・・・・・・。正直妙な気分だわ。何て言うか自分の体が切られているのに痛くないっていう感じかしら・・・・・・」
やや自嘲気味にお嬢様はふふ、と笑った。
「お嬢様、」
「わかっているわ。今は個人的な感傷なんか捨てないと。あの影をなんとかしないとね」
「そうですね。ですが・・・・・・」
「なに?」

街を眺めるお嬢様を見て私は不意にお嬢様が遠くにいるように感じた。
いや、以前のお嬢様ではなくなったように感じたのだ。

「お嬢様、私と約束して下さいませんか?」
「どんな約束?」
「『もう弱音は吐かない』という約束です。」

このままでは昨日の約束は無かったことになる。
それは昨日までのお嬢様を忘れてしまうようでとても怖かった。
だからもう一度約束を結び直そうと思ったのだ。

「イヤよ」
「え!?」
しかし、お嬢様は私の真剣な提案を一刀のもとに切り伏せた。フリーズした私を見て、お嬢様がケケケ、と笑う。
「イヤよ、そんなの。わたしは弱音は言いたいときに言うわよ」
「あの、お嬢様、」
しどろもどろになった私を見て、お嬢様は真顔になった。
「・・・・・・その約束、いつしたの?」
「え?」

お嬢様は記憶を失くしているはずだ。約束について話した覚えも無い。だったらどうして・・・・・・。
「どうしてわかったのかって顔ね・・・・・・。わかるわよ。顔を見れば。あなたわかりやすいもの。・・・・・・それで、いつわたしはあなたとその約束をしたの?」
「・・・・・・昨晩です」
「そう・・・・・・。あなたがまた約束を結びたい気持ちはわかるわ。でもわたしとしてはその約束はやっぱりイヤ。わたしはわたしだから・・・・・・。今のわたしも尊重して欲しいの。だから、ね?」
お嬢様は私の手を取った。
「わたしの弱音はあなたが聞いてよ」

そしてお嬢様は不意に、にっ、と笑みを見せた。
全くしょうがないお嬢様だ。
お嬢様はきっと頑として譲らないだろう。そういうところはまるで変わっていない。
「しょうがないですね。お嬢様の提案とあれば、私はそれに従うのみです」
「よし。じゃあ・・・・・・」
「どうしたんです?」
じゃあ、と言って手を差しだそうとしてお嬢様はその手を止めてしまった。かわりにぽかんとした表情で私の顔を見つめている。
「あー・・・・・・、ごめん。あなたの名前、聞いていい?」
「私の名前はオーレン。オーレン・ブルーウォーターです、お嬢様」
「そう・・・・・・。オーレンね。わかったわ」
そう言うとお嬢様は私に手を差し出してこう言った。
「じゃあ、オーレン。握手よ。約束、忘れないでね」
「承りました、お嬢様」
私はお嬢様の小さな手を握り返した。

「さてと・・・・・・。あれを何とかしないとね」
「そうですね。行きましょうか」
西の空に伸びていた影は既に変化を止めていた。
塔。巨大な塔である。直径も高さもわからない。わかるのは塔の根本は少なくともクロックタウンのあった場所の何倍もの面積を占領し、先端は雲の遙か上に伸びている、ということ。
「・・・・・・ちょっと見ない間にすっかり大きくなっちゃって」
「少し大きくなり過ぎですね。叱ってやらないと」
「・・・・・・必ず、必ず倒すわ。例え何年かかってもね」
お嬢様はもう一度西の空に禍々しく聳え立つ巨塔を睨むと、踵を返して鐘楼から下りた。
「・・・・・・お嬢様が宣言なさったのだ。覚悟するがいい」
私も巨塔を一睨みしてお嬢様に続いて鐘楼を下りた。














†††

詰みゲー! 3-47

†††3-47

「・・・・・・あの町どうなるのかしらね」
宿屋に着くとお嬢様は、ばったんとベッドに倒れ込み、ぼそぼそと呟く。
「じきに軍隊が押し寄せてあいつらを始末するでしょう」
「そうだといいけどね」
「何か気がかりでも?」
「あなた、あの赤いのに軍隊が勝てると思う?」
お嬢様が起きあがりこちらを向く。
「『障壁』さえ砕ければ問題ないでしょう」
「『障壁』?」
「『障壁』は奴が纏っていた鎧です。お嬢様が槍で攻撃したときに奴の腹にヒビが入っていたのを見ましたか?あれが『障壁』です。身体全体を硬質の魔力で覆うことで鎧とする魔術で、戦闘時に魔術師がまず使用する魔法です」
「ふーん、硬質の魔力・・・・・・」
「このような具現化された魔力を『マテリアル』と呼称します。マテリアルには軟質なもの、弾性のあるもの、気体でも液体でも構いません。その物理性質は作り出す魔術師の意思、能力、経験に依存して発現します」
「ふうん・・・・・・。じゃあ、堅い『障壁』を持ってる奴ほど強い、ってことでいいの?」
「はい。まあ、一概には言えませんが、かなり重要な目安、と言えます」
「・・・・・・で、あいつは強いの?」
ベッドにうつ伏せに寝転がったまま、足をぱたぱたさせてお嬢様が尋ねる。
「強いですね。私が会った中で一番です」
「へえ・・・・・・。でもあなたがどのくらい強いかわからないのだけれど」
「そうでしたね・・・・・・。まあ、強くもなく、弱くもないってとこですね」
「どういうことよ?」
「魔術師には一般的に三つのランク付けが存在します。一つは 、無属性魔法が使えるかどうか。使えなければ普通の人です。魔術師かどうかの境目ですね。二つ目は属性魔法が使えるか。六つの属性のうち一つでも使うことができればこのランクになります」
「二つ目の方が上よね?」
「はい。一つ目をC級、二つ目をB級、三つ目をA級魔術師と呼びます。私はB級です」
「強くもなく、弱くもない・・・・・・か。なるほどね」
「三つ目は固有魔法・固有能力(スキル)が使えるかどうか。固有魔法は魔術師が一つだけ修得できる奥義です」
そこで私はちょっと説明を中断して、お嬢様をじっと見た。見ずにはいられなかった。ありえないことが一つある。
「ん?どーしたの?何か顔に付いてる?」
「お嬢様がさっき使っていたのが固有魔法です。『次元の門番』は明らかに固有魔法でした。『女王の雷槍』はわかりませんが・・・・・・。瞬間移動の魔法なんてそうそう使えないんですよ。だから・・・・・・」
「私はA級魔術師ってことね?」
「はい。ただ・・・・・・」
「ただ?」
「私がまだ修得していないことからもわかると思いますが、普通は固有魔法を獲得するのにかなりの時間がかかります。少なくともC、B級を経ることなくA級にいきなり昇格なんて私は聞いたことがなくて・・・・・・」
「記憶を失くす前の私はC級ですらなかったのよね?」
「はい。その通りです」
それを聞いてお嬢様は少し納得したような顔をした。
「やっぱりね。そうじゃないとおかしいものね」
お嬢様がなぜ納得したのか私には全く理解できなかった。当然だ。理解できるはずがない。
お嬢様の固有魔法に関係することだったからだ。
「え?それは一体どういう・・・・・・」
しかし、私がその答えを聞くのはもう少し後になる。
私の質問の途中で突然宿が揺れ始めたからだ。

†††

詰みゲー! 3-46

†††3-46

「・・・・・・はあはあ、なるほどね」
「・・・・・・私たちの話、信じてます?」
クロックタウンで起きたことを副町長に話した後、私は町長の複雑な表情を見て、思わずそう聞いてしまった。
「ああ、まあ、信じてるよ。半分くらいは」
「え・・・・・・?信じたの?本当に?」
なぜかお嬢様は驚いていた。説得力もなにもあったもんじゃない。
「実はね、君たちがここへ来る少し前に妙なことを口走っている市民が来てね。今思えば時計塔の爆発を見たんだろうが、どうにも話が支離滅裂なもんでね。とりあえず閉じこめてしまったんだが・・・・・・、彼は正しかったんだろうなぁ。まあ、また今度出してやるかな」
「さっさと出してやれよ・・・・・・」
「気が向いたらね。・・・・・・まあ、ともかく確認のため、軍に要請を出しておこう」
副町長は二枚の紙にさらさらと何かを書くとそれを戸口に立っていた役人に手渡した。
「君たちには宿を手配するので、そこに泊まってくれたまえよ」

†††

詰みゲー! 3-45

†††3-45

お嬢様が、ばん!と扉を開いたので役人達は一斉に何事かという目をこちらに向けた。
「この町で一番偉いのは誰!?」
「お嬢ちゃん、ここはね・・・・・・」
お嬢様をただの子供だと判断して役人の一人がお嬢様に声をかける。
しかし、残念ながら彼の親切心を受け取ってやる暇は無い。
「いや、違うんだ。本当に重要な案件がある。町長はどこだ?」
親切な役人を手で制しつつ、役人全員に尋ねる。
「あの・・・・・・町長は今、私用でいません」
女性の役人が奥からおずおずと発言する。
それに対してお嬢様がすかさず問いを投げ返した。
「じゃあ、二番目に偉いのは!?」
「え?ええと、そうね・・・・・・副町長なら奥の部屋に・・・・・・」
「呼んでくれ!・・・・・・いや、部屋に案内してくれ」
私は話す内容のことを考えて、あまり聞かれない方がいいと考え直した。
「はい・・・・・・、こちらです」
役人の一人がやって来て奥へと案内してくれた。
「申し訳ありませんが私も同席させていただきます。まあ、形式的なものですのでご容赦を」
私たちが副町長を襲うかもしれない、という配慮だろうか。
「ええ、問題ありません」
「ありがとうございます。・・・・・・こちらです」
役人は一つの戸をノックし、失礼します、と断って先に入るよう促した。

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詰みゲー! 3-44

†††3-44

「この町で一番偉い奴ってどこにいるのかしら?」
走りながらお嬢様が私に尋ねる。
「え?お嬢様知っていたんじゃないんですか?」
「知ってるわけないじゃない。私記憶無いのよ」
「だったら何で先走ってたんですか!?」
「へへへ・・・・・・」
私のツッコミにお嬢様は照れたように笑った。
「こっちですよ!付いてきてください!」
私はお嬢様を抜いて先を走ることにした。
「へーい」

「着きましたよ!ここです!」
私は町の中心にある役場の前で足を止めた。
「よし!行くわよ!」
止まった私を置いてお嬢様は、ばーんと役場の扉を開いて中に入っていった。

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詰みゲー! 3-43

†††3-43

「ところで私たちをどこに連れて行くんだ?」
前から、縛られた私、とそれを連れる門兵一人、そして自由に弾むように歩き回るお嬢様の三人でどこぞへと向かっている。
「駐屯所。お前たちの処分はそこの所長に任せる」
「所長ねえ・・・・・・」
お嬢様はしばらくの間黙って弾んでいたが、
「ねえねえ門兵さん♪」
門兵の前に回り込み彼の足を止めた。
「どうし、」
門兵がお嬢様に発した言葉を聞き終わることなく、お嬢様
は門兵の腹を思いっきり殴った。
門兵は頑強な鎧を着ていたのだが、門兵は気絶したのか膝から崩れ落ちた。
「・・・・・・何をしているんですか、お嬢様」
にやにやと門兵の兜を取って彼の様子を確認しているお嬢様を思わず問いただしてしまった。
「ん?生死確認」
「洒落になってない!違う!そこじゃない!どうして殴ったんですか!?」
「え?あー・・・・・・。ほら、このままだと駐屯所に連れて行かれるところだったじゃない?」
お嬢様は倒れた門兵の傍らに立ち、人差し指を立てて説明をする。
「私たちは今すぐに、かつ責任をもって、あの町での出来事をこの町の誰かに伝えなければならないのよ。所長程度の人間には伝えられないわ」
「・・・・・・」
「わかった?」
「は、はい。お嬢様」

今のお嬢様の口調が記憶を失くす以前のお嬢様に似ていたので少し・・・・・・驚いてしまった。

「ほら、早く行きましょう♪」
「はい、お嬢様」
・・・・・・早くお嬢様の記憶が戻るといいが、と思いつつどこか粘っこい不安を断ち切れないまま、私は先を走るお嬢様の背中を追いかけていった。

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北の海の魔女 91

†††91

僕は君に付いているからさ~、と棒を振り回していた魔法使いはちょっと声を低くしてこう呟いた。
「・・・・・・君がどんな選択をするのか興味があったからでもあるのさ・・・・・・」
何て言ったの、と尋ねる少年に幻影の魔法使いは笑顔を見せる。
「何でもないよ。そろそろ戻ろうか。きっと彼ももう決心した頃だろうし」


「やっぱり、お前の作戦を先に聞いてからだ。その後で判断する」
「なぜ?」
「説明するまでも無いだろう。こっちは二万人賭けるんだぞ。そのくらいの譲歩はいいだろう」
うーん、と腕組みして少年はうなる。
「それにもし下らない作戦だったら後で寝返ってやる。最初から敵になるより厄介だぞ、これは」
「う、それは困る」
やれやれ、と少年は肩をすくめた。
「わかったよ。説明するよ」

†††

詰みゲー! 3-42

†††3-42

門兵は怪しい人物を発見すれば拘束しなければならないが、お嬢様をそんな目に遭わすわけにはいかない。
「待て、この方はエストラルト家のご息女だぞ。そんな無礼な態度を取って許されると・・・・・・」
「許すわ」
私の門兵に対する脅しは当のお嬢様の一言によって見事につぶされてしまった。
「お、お嬢様ぁ・・・・・・」
「ま、まあ、とりあえず連行しよう」
門兵はやや戸惑った様子だったが、職務を果たすべく私とお嬢様を縛ろうとした。
「縛るの?」
「ああ」
「逃げないわよ?」
「じゃあ、縛っても問題ないだろ?」
「大ありよ。絶対痛いでしょ、その縄」
「おい門兵。私一人を縛れば十分だろう。お嬢様は縛るな」
「あら、あなたはどうしてそこまで私のために?」
「それはあなたがお嬢様だからですよ」
「何を言っているのかしら、このでくの坊は?」
お嬢様は笑顔で私の心に傷を負わせた。
「わかったよ・・・・・・。そこの男だけを縛るとしよう」
「どうも」
お嬢様は綺麗な笑顔で門兵に会釈をした。
私はめでたく縛られることとなったわけだが。

†††