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詰みゲー! 4-8.5

†††4-8.5

ジョンは電車に乗っていた。周りの景色は田んぼとかがある田舎の風景、だったかもしれない。雲は無かった気がする。とにかく景色は全体的に赤みがかっていた。
その列車はジョンは乗ったことのない個室のあるタイプだった。およそ八人乗りの部屋に、ジョンは一人で座っていて、窓際で肘をついてつまらなそうに景色を眺めていた。
やがて、その個室に新しい客が入ってきた。どんな連中かはよくわからなかったが、ジョンと知り合いのようだった。何か話をした気がする。
かなり長い間、話をしていると客の一人が席を立った。それを見てジョンはなぜかついていきたくなって、席を立って追いかけた。
しかし、個室を出たときにはすでにそいつの姿は見えなくなっていた。
というか、個室を出たときに列車の中じゃなくなった気もする。波止場、だろうか?
残りの客もついてきて、ジョンに文句を言った気がしたが、ジョンはかまわずに目に付いた灯台を目指した。
いつの間にか夜になって、くるくると明かりを海にまき散らしている灯台をジョンがよじ登っていく。実際にはどうか知らないが、灯台についた梯子を上っていった。
てっぺんにつくと、仮面を付けた奴が一人いて、こちらに背を向けていた。後ろからは仮面は見えないはずだったが、なぜかつけているのがわかった。
そいつは背を向けたままで仮面を取るとその場に崩れ落ちるように倒れた。すると女がどこからか一人現れてクスクス笑いながら何か細長くて黄色い何かをジョンに手渡した。彼女は暗がりにいて顔は全く見えなかった。

ジョンがそいつの顔をよく見よう近寄ったところで、目が覚めた。

†††

詰みゲー! 4-8

†††4-8

バカ騒ぎの起きている一階から少し静かな二階、そしてベンの部屋のある三階へと上る。
二階、三階には部屋がならんでいるだけだったが、廊下の端には机とイスが置いてあり、座って話すことができた。

「ま、なにはともあれ、『東狼団』にようこそ。ジョナサン」
「・・・・・・。えっと・・・・・・東狼団って?」
「うちのレジスタンスの名前よ」
<由緒ある名前なんだよ>
「へーえ・・・・・・」
「・・・・・・本当にキティの声が聞けるんだな」

ベンが感心した様子で興味深げにジョンを見る。

「特に訓練せずに・・・・・・。へえ、こりゃすごい」
「あ、どうも・・・・・・」
<ジョン、東狼団に入ったんだろ?挨拶しないと>
「いけね、そうだった」

ジョンは黒猫に礼儀を指摘されて少しへこみつつも立ち上がり、ベンに向かって深くお辞儀をした。

「これからよろしくお願いします。えっと、至らないところがあると思いますが、」
「いいよ、そんなカタい挨拶」
「ええ!?」
<カタすぎだよ、ジョン>
「確かにカタいわね」
「え、えーと・・・・・・」
「ところで何でこんなに遅かったんだ?夕方までに連れていくって連絡したろ、ミリア?」
「ああ、そのことなんだけど、兄さん。ちょっと厄介なことになっちゃって」
「厄介?なんだ?」
「・・・・・・来て、兄さん」

ミリアはベンを手招きすると席を立った。ベンはすまないな、とジョンとキティに一言わびて後を追った。

「なんだろ?」
<さあね。『あたし、ジョンが好きなの!』とかかもね>

ごふっ、とジョンは飲んでいた水を吹きだしてしまった。

「・・・・・・てめー、覚えてろよ」
<冗談だよ、冗談。真に受けない真に受けない>
「まったく・・・・・・」
<で?ジョンはどーなのさ、その辺?>
「・・・・・・冗談じゃなかったのか、キティ?」
<気になるものは気になる>
「お前、」
<ちなみにミリアは脈ありだと思うな、僕は>
「・・・・・・!」

(ミリアが、まさか、そんな・・・・・・)

<・・・・・・プッ>
「クソォォォォッ!」

こんな猫に見透かされるなんて!とジョンは激しい自己嫌悪に陥った。

「お待たせ・・・・・・ってどうしたんだい、ジョナサン?」
「なにかしたの、キティ?」
「何でもねえよ・・・・・・!何でも・・・・・・!」
<僕はなにもしてないよ>

ギリギリとキティを横目で睨みつけるジョンと素知らぬ顔のキティを見て兄妹は腑に落ちないという顔をしていたが、話を元に戻した。

「ジョナサンは国軍にも入ったということは、まあ今のところ問題ない。ウチは今、ほとんど吸収されているからな。・・・・・・あ、今の団員には言うなよ」
「はあ」
「ジョン、あなたはあまりこの世界のことを知らないんだから明日はべらべらしゃべらない方がいいわ」
<本当にジョンはおしゃべりだからねえ>
「へいへい」
「・・・・・・それじゃあ、そろそろ寝るとしようか。明日も早いしな」
「そーね」

自分の部屋に戻って行くミリアの背を見てジョンは不思議な気分になった。

(ミリアもキティも花蓮のことを喋らないでいてくれたな・・・・・・。明日になったら二人に礼を言っておこう)


***


ジョンはベンと同じ部屋で眠ることになった。
部屋には二段ベッドが二つ。左の二段目をベンが陣取り、ベンの指示でジョンは右の二段目を占領した。
ベッドに寝転がって、ジョンはベンに質問した。

「残りのベッドの人は?」
「まだ下で騒いでるんだよ。気にしなくていい、帰ってきたら俺が何とかするよ。君はベッドを奪られないように気をつけな」
「わかりました」
「・・・・・・ところで、ジョナサン。ミリアのこと、どー思う?」
「・・・・・・あなたもそんなこと聞くんですか?」

うんざりした表情で見られてベンは慌てて首を振る。

「何か勘違いしてないか?俺はただミリアの様子を聞いただけだ」
「様子?様子ですか・・・・・・おっそろしく元気、かなあ」

ジョンはミリアと出会ったときのそれはそれは素晴らしい出会いの時間を思い出して言った。騙され、殴られ、笑われ、からかわれ・・・・・・。

「そうか・・・・・・。元気だったか。ならいいか」
「なにか気になることでも?」
「いや・・・・・・。それよりももう遅い。もう寝ようじゃないか」
「・・・・・・わかりました」

ジョンにはベンがどうも無理矢理に話を終わらせたような気がしたが、それよりもまるで話を始めたのがジョンであるかのような言いぐさがかちん、と来ていたので大して気にしなかった。

†††

詰みゲー! 4ー7

†††4-7

「そうだね、サッキーをSにするんだったらキッカーは余分だったね。失敬失敬」

ははは、と申し訳なさそうにしているが、どこから突っ込んでいいかわからなくなったジョンはげんなりした表情を浮かべた。

「・・・・・・俺が俺の名前を覚えていればいいじゃないか。そうだそれでいいじゃないか。ははは。ははは、はははははは・・・・・・」

天を仰ぎ、いきなり高笑いを始めたジョン(翔太)に周囲は距離を取った。

「大丈夫かね、ジョナサン君は・・・・・・」
「あれでもミリアちゃんのお墨付きがあるそうだよ」
「でもアレじゃあなあ・・・・・・」
「ダメだな、こりゃ」
「大丈夫ですよ。いつものことなので。すぐに直りますよ」

ミリアがキレイな笑顔で特に何のフォローにもなっていないことを言う。

「ああ、そうか。じゃあ、いいか」
「いや、ダメだろ。お前、ミリアちゃんの笑顔につられただけだろ」
「なんだとお前。じゃあお前、ミリアちゃんの笑顔は要らないと?」
「そんなことはない。ミリアちゃんの笑顔はワシにとっての癒し。誰にもわたさんぞ」
「なに?ミリアちゃんのスマイルは皆のもの。独り占めは許さん」
「なんだと?お前の顔でスマイルとか言うな。お前はせいぜいスッポンがお似合いだぜ」
「言ったな?」
「言ったぜ」

しかし一触即発となった二人のおっさんの横からぬっと忍び寄る影が一つ。
ミリアの兄、ベンであった。

「ミリアがなんだって・・・・・・?」
「わ、若・・・・・・!」
「いや、その・・・・・・」
「首を引っこ抜いてやろうか・・・・・・?」

ベンは自身の握り拳を笑顔で指さした。

「・・・・・・なあミリア」
「なに?」
「ここっていつもこうなのか?」
「そうよ」

ショックから立ち直ったジョンはいつの間にか大騒ぎになっている一階を見渡してミリアに尋ねていた。

「俺やっていけるか不安だわ・・・・・・」
「大丈夫でしょ」
「無理だって!俺そんなにキャラ濃くないもん!」
「主人公だし、そのくらいでいいんじゃない?」
「無理だろぉぉぉ!」

†††

おっさん「ミリアちゃん、スマイル一つ!」
ミリアちゃん「ああん!?」

詰みゲー! 4-6

†††4-6

「おっ、おかえり!みんなー!ミリアちゃんが帰ったぞー!」
「ホントかー!」
「おかえり!」
「キティもごくろうさま!」
「おい、隣のちんちくりんは何だ?」
「ミリアちゃんのいい人でないのかい?」
「まだ早ええよ、ミリアちゃんにゃあ」
「いや、そんなこともあるまいよ。これでも立派な・・・・・・」
「そうだな、ちょっと見ないうちに立派な・・・・・・」
「やかましいッ!!!」

段々と下世話になっていった出迎えの声をミリアちゃんが一喝して黙らせた。

「何よ、ぐちゃぐちゃと失礼なこと言ってくれちゃって。誰が言ったのよ、そこに並びなさい。右から順に首を引っこ抜いてくれるわ!」
「お、落ち着けよミリアちゃん」
「ああ!?あんたのも引っこ抜いてやろうか!?」

ジョンにはミリアちゃんの口から炎がメラメラと吐き出されているかのように錯覚した。
もしかしたら魔法で本当に出していたのかもしれない。

「で、どいつなのよォォォォ!!!!」
「おや、帰ったのか、ミリア。相変わらず元気そうじゃないか」
「ああ、兄さん。ただいま」

それまで口から怒りの炎を吹き出していたミリアちゃんの怒気は階段から下りてきた男の出迎えの言葉でかき消えた。

「兄さん、今から団員を二、三人ほど殉職させるけどいいよね?」

・・・・・・そんなこともなかった。
ミリアは二階から階段で下りてきた男にいつも通りの口調で返事をしたが、それがかえって周囲に恐怖を与えた。

「いいよ」
「やった♪」
「いいの!?」
「はっはっは、ウソだよ。ミリア、その辺でカンベンしてやりな」

ミリアに兄さんと呼ばれた男はつかつかと落ち着いた足取りでこちらに近づいてきた。ミリアと同じ金髪に蒼い瞳。肩ほどまでの長さの髪を後ろで束ねている。服は和服に近い。上は黒の内着に藍で袖の大きな羽織物。下は藍色の袴であり、上下とも重い印象を受けた。ちなみに顔はイケメンだ。

・・・・・・顔はイケメンだ。

大事なことである。。
そのイケメンが近づいてきてジョンに軽くお辞儀をした。慌ててジョンもお辞儀を返す。

「君がサッキー・ジョンか。ミリアから聞いてるよ。俺はベンジャミン・ワッフルワインだ。よろしく。ベンって呼んでくれ」

ベンジャミンが手を差し出す。握手を求めている、ということはジョンにも理解できたが、その前に一つどうしても言わなければならないことがあった。

「あ、あの、ベン・・・・・・」
「ん?なんだい?」
「俺、ホントは坂井翔太って言うんだけど・・・・・・」

ジョン(翔太)がおずおずとそう告げると、ベンは真剣な表情で発音を試み始めた。

「ショ、ショウ、ション、ショウ・・・・・・」

そのときベンは何かを閃いたように手をぽん、と叩いた。
まさに神が与えたもうたチャンス。
初めて他人が自分の名前を正しく覚えようとしてくれている。
頭上で電球がぴかっと光り、海辺で木の棒を掲げれば海も割れる、こっそりと誰かの悪口を言えば後ろに当の本人が立っている。そんな圧倒的な幸運が巡ってきていることをジョン(翔太)は直感した。

くわっと目を見開いてベンは宣言した。

「ジョナサン・S・キッカー!!!」
「ちがうわ、ボケ!!首ねっこ引っこ抜くぞ!!!」

†††



主人公の名前が決まんねー。

詰みゲー! 4ー5

†††4-5

「じゃあ、行きましょうか」

そう言うと少女は杖を縦に一振りした。すると振った杖の軌道に沿って空間に裂け目ができた。

(さっき聞いたレインの魔法に似てるな・・・・・・)

オーレンの話に出てきたレインの『次元の門番(ゲートキーパー)』と目の前の少女の魔法を照らし合わせてジョン(翔太)は心の中でつぶやく。

「さあ、さっさと行くわよ」

少女は体を半分裂け目に突っ込みながら手招きをした。





「へえ、ここがレジスタンスの・・・・・・!」

裂け目を抜けると、三人はだだっ広い平原の上に立っていた。学校のグラウンドにやや似ている。正面には見渡す限り兵舎が建ち並んでいた。ざっと百はあろうか。この中にどれだけの人数がいるのか、ジョンには見当もつかなかった。

「すごいじゃないか、ミリア。数百人って言ってたけど嘘だったの
か?」
「・・・・・・嘘じゃないわよ」

つかつかと兵舎に歩き出しつつミリアと呼ばれた少女は説明する。

「あの兵舎はレジスタンスのものじゃないのよ。正確には国軍のもの。私たちはただ演習場と宿舎を借りているだけよ」
「え?じゃあ、普通の兵士もいるってことか?」
「そういうことよ。正面の十の兵舎がレジスタンスのもの。他は全部国軍の兵士のものよ」
「へえ・・・・・・。真ん中にあるんだな。特等席だ」
「・・・・・・そうね。特等席よ」

†††

詰みゲー! 4-4

†††4-4

「はあー。こっちもでっかい門だなあ」

街の入り口の門とは別に中の城の門をくぐって、その巨大さにジョンは感嘆する。

「この城は二重の城壁、二重の門に守られているのよ」

ひたすらに感心する少年に少女はなぜか自慢げに説明する。

「そういえば俺って城の中を自由に歩けたけど大丈夫なのか、防犯とか」
「ああ。それなら問題ないわ。目印があるから」

そう言って少女は少年の胸を指さした。しかし、少年にはそこに何かがあるようには見えなかった。

「何もないけど・・・・・・?」
<無いんじゃないよ、君に見えないだけさ>

黒猫が少女の帽子のつばの上から発言した。

「マテリアルっていう、魔法の一種みたいなものよ」
「マテリアル・・・・・・?」
「そのうちわかるわ。・・・・・・さてと、あなたはどうするの?」

城を覆う城壁の外の広場で少女は立ち止まり、少年に尋ねた。

「どうする、とは?」
「・・・・・・あたしと一緒にレジスタンスに行くかってこと」
「行くさ。そのために来たんだろ、ここまで」

そうね、と言って少女は少年に背を向け杖を振り上げた。

「じゃあ、行きましょうか」

†††




ミスった。予約投稿のつもりが……!

11月だッ!!!

みなさん、ハロウィンは楽しく過ごせましたか?
私は家にこもって独りでドラマを見てましたよ!うらやましいだろ?

そんなこんなで11月が来ましたね。来てしまいましたね。
私は確か先月、「『詰みゲー!』構想を練りたいから今月は『北の海の魔女』の更新しかしません!」的なことを言っていました。そんな気がします。
まあ、結論から言って先月から特に進展していません。今月走り続ける程度の書き溜めはありますが(そこは安心してください。書きためとバックアップが両方死なない限り大丈夫です)、練りが甘い感じですね。とろろみたいな甘さです。甘いじゃなくてゆるい?

とにかく、言ってたことは変えれないので、今月は「詰みゲー!」の更新に専念します。来月は知りません。一応、リクエストに応える、ということにしておきます。「北の海の魔女」の更新を続けてほしい場合もリクエストしてください。なければしません。
・・・・・・今まであんまり返事もらってないけど。いいや、趣味だし。コンセプトは「誰も見てねぇ」だし。

結局のところ、今回のお知らせの要点は、
①今月は「詰みゲー!」更新のみ。ただし、リクエストには応える。
②来月何を更新するかは、リクエストによって決める。なければ「さまよう羊のように」で。

以上ですねー。

じゃあ、まあ、たぶん来月までちゃお~。

詰みゲー! 4-3

†††4-3

応接間の位置を教えてもらい、青いマントを羽織った少年は無事に目的の部屋にたどりついた。
応接間の入り口にいた兵に会釈をしつつ、コンコンコン、と三回ノックした。すると中から、はい、という少女の声が聞こえた。

「失礼します・・・・・・っと。お待たせ」

少年は中にいた黒づくめの少女に声をかけた。
およそ腰まで伸びる金の長髪に全身を覆う黒いローブ。左耳に光る月形のイヤリングに蒼い目。

「まったくよ。どんだけ待たせるのよ」

少女は組んでいた足を解き、机の上から黒のとんがり帽と椅子に立てかけていた杖を取って立ち上がると、

「これは貸しよ」

と言って少年の脇をすり抜け部屋を出た。

<これは貸しだよ、ジョン!>

そして黒猫がどこから飛んできたのか、少年の顔に取り付いた。

「ふぬっ!はへろ、ひひぃ!」
<なんだい、ジョン。よく聞こえないよ>

ジョンと呼ばれた少年は顔から黒猫を引きはがした。

「やめろって言ったんだよ。あと俺はショウタだ。いい加減覚えろ」
<ふーん>

気のない返事をして黒猫はジョンの手元から逃れると、先に部屋を出た少女を追いかけていった。

<置いてくよー>
「へいへい・・・・・・。今行くよ」

ジョンはため息をついて少女と黒猫の後を追った。

†††