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ザ・トップ記事1.2(ここを読むべし)

はーい、みなさんこんにちはどーもどーも、ジャバウォッキー、です。はい、よろしくおねがいしまぁーす。
このブログは私の書いた文章をおいとくところです。
中でもこの記事は常にこの位置にいる。つまりはトップ。常時頂点に君臨する孤高の存在なのだ!!ふはははー!!!

・・・・・・挨拶はこんなもんでいいかな?ここにある作品は以下のとーり、です。
今までのはいいから最新記事から読むわって人はあらすじに飛ぶのもあり、です。サイト案内にあるのでよろしく。

「さまよう羊のように」
現在親友ナッツの住んでいる国に海外旅行して来たココはマフィアに追われる女の子を何となく助けてしまう。その子をマフィアの手から何とか逃がそうと奮闘する話。放置中。

「女神テミスの天秤]
普通の大学二回生で空手サークル所属、現在片思い中の関静(せき・しずか)が家に帰ると、知らない男がいすわっとる!その男は未来から来た魔法使いだった!なんてこった!
そんな二人の一年間を描く。超放置中。

「夢幻」
命の恩人の少女に恋した少年と病の少女を愛する少年の話。
幽霊・妖怪がらみのバトルもの。超放置中。

「北の海の魔女」
おとこのこが魔女にさらわれた妹を助けに行く話。短い話をほぼ毎日更新。なお当初は童話のつもりで平仮名ばかりでしたが世界観が合わなくなってきたのと、単純に面倒くさくなったので今は漢字も入っています。
絶賛更新中。割とオススメ。

「ドレス&タキシード」お姫様と執事の追いかけっこ。一話完結系。適当に更新。放置中。

「詰みかけのゲームみたいな世界に迷い込んで」雪山遭難自殺を試みた少年は別の世界に迷い込む。その世界は「詰みかけ」ていた……。構想中。つまり放置中。

・・・・・・という感じです。各物語を別々に読みたい場合はカテゴリから選んでください。

なお私のオススメは「夢幻」「北の海の魔女」「詰みゲー」です。
「さまよう羊のように」「女神テミスの天秤」は最初の部分が私が最も未熟な時に書いたものなので読みにくいかもしれません。

まあ、他も似たり寄ったりですが。

軽く読むなら「北の海の魔女」
重いのなら「さまよう羊のように」
楽しそうなのなら「女神テミスの天秤」
気持ちの良いものなら「夢幻」
区切りのよいものなら「ドレス&タキシード」
異世界物なら「詰みかけの世界に迷い込んで」

でしょうか。

では楽しんでいってください♪

追記:コメントをしていただけると大変嬉しいです。どうぞご遠慮無くお願いします。

追記2:「北の海の魔女」の話っつーか、魔法ですね。アレがいよいよわかりにくくなってきます。そのうち仕組みには言及しますが、それでもわかりにくい場合は遠慮なく質問してください。後々に響いちゃうので。
ではではー。


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詰みゲー! 4-47 

†††4-47


本の中。試練の塔にて。
目の前にいた番人がジョンに声をあいさつする。

「よう、早かったな」
「ああ、急いでるしな」
「まあ、知ってるけどな。ここでの時間は元の世界では一瞬だからあんまり気にしなくてもいいぜ」
「それは助かるな」
「ああ、そういえば塔の外にお前に会いに来た奴がいるぜ」
「は?」
「早く行きな。彼女ずいぶん待ってるみたいからな」
「え?彼女?」
「いいから行けって」

番人が何を言っているのかまるでわかっていないジョンを塔の番人は外に押し出した。

「ほら、向こうの木の下だ。見えるだろ」
「・・・・・・!」

ジョンは草原に立つ一本の木の下に一人の少女が立っているのを見るや、その木に向かって走り出した。それを見て番人が笑ってつぶやく。

「おやおや、あんなに急いで。そんなに会いたかったのかねえ。・・・・・・まあ、知ってるけどな」


***


少年は木の下に立つ少女に遅れたことを謝った。

「悪い、待ったか?」
「・・・・・・遅いわよ。何かあったの?」
「悪い悪い。目覚ましが鳴らなくてさ」
「そもそもセットしてたの?」
「そうだったな。無かったな、目覚まし」
「まったく・・・・・・、変わってないわね」
「そうかな」
「・・・・・・どのくらい経ったの?」
「まだ一年経ってないよ」
「ふーん・・・・・・。それなのに新しい女に惚れちゃったのね」
「いっ!?」
「わからないと思ったの?あきれたわね」
「・・・・・・怒ってる?」
「ええ、ちょっとね。でもちょっと嬉しかったわ。あんたが立ち直ってくれたってわかったから。あたしが腹を立ててるのは、アンタがその女(ひと)をどこかにいかせてしまったことよ!知ってるんだからね!行かせた理由も!」
「り、理由?俺はあいつが仕事だって言うから・・・・・・」
「だったらアンタがついていけばよかったじゃない。今みたいに必死になって周りに頼み込めばよかったのよ」
「それは・・・・・・」
「理由を言いましょうか?・・・・・・あたしよね?あたしに遠慮したんでしょう?」
「・・・・・・そんなことは、」
「図星でしょ?」
「・・・・・・全部わかってるのか」
「そりゃあ、アンタの考えてることくらいわかるわよ。アンタ単純だもん」
「言ってくれるぜ・・・・・・」
「翔太」
「なんだよ」
「彼女を助けなさいよ」
「・・・・・・ああ」
「ゼッタイよ。約束して」
「ああ、約束する。必ずミリアを助け出してみせる」
「よし。では勇者クン。キミにこれを授けよう」
「なんだよ、そのノリ」

少女はポケットから黄色くて細長い物を取り出した。

「これは?」
「ハチマキよ。あたしからの餞別」
「・・・・・・ちょっとダサくないか?」
「ああ?」
「何でもないです」
「・・・・・・うん。よし、じゃあ、あたしは帰るわ」
「え!?もっといてくれよ!」
「あたしはもうアンタみたいなのとは関わっちゃいけないのよ。今回会えたのは本っ当にすごいことなんだからね」
「行っちゃうのか」
「ええ」
「もう会えないのか」
「ええ。二度はないわ」
「そうか。・・・・・・花蓮」
「ん?」

どこかに歩き去っていこうとしていた少女が振り返る。

「・・・・・・その髪留め、似合ってるぜ」
「ふふ・・・・・・。ありがと」

少女は笑って礼を言い、木陰から出て光となって消えていった。


***


「やっと戻ったか。・・・・・・泣いてるのか?」
「うるせえ。さっさとエヴリスと戦わせろ」
「そうせかせかするな。物事には順序がある。まず帰りの分と復活の分の魔譜を出せ。分量はわかるな?」
「ほらよ」
「確かに」
「早くしてくれ」
「わかったわかった。それにしてもお前そのハチマキはどうしたんだ?」
「うるせー。早くしろ」
「・・・・・・わかったよ。エヴリス!」

部屋の中央に巨大な鎧の騎士が現れた。


***


『隠者の忍び屋敷』玄関ホールにて。
出発の準備を終えたシャープがロベルト、レイン、オーレン、クラリスと別れのあいさつをしていた。

「おや、やっと大将の到着だ。・・・・・・どうだ、ジョン!スキルは手には入ったか!」
「ああ!バッチリだ!」

二階から下りてきたジョンにシャープたちが駆け寄って「どんなスキルだった?」「強い?」「使える?」「そのハチマキなに?」などとジョンを質問責めにした。

「ちょ、ちょっと待ってくれよ。いっぺんには答えられないって」
「じゃあ、スキルの名前は?」
「ずばり《魔導の極意<スペルハート>》だ!」
「スペルハート?どんな能力なんだ?」
「さあ?」
「は?お前のスキルだろう?」
「説明されたけどよくわかんなかった」
「おいおい・・・・・・大丈夫か?」
「大丈夫だって。また説明聞きに行けばいいんだし」
「まだ試練の塔に行けるのか?」
「ああ、行けるよ。来いって言ってたし」
「ま、まあスキルの詳細はそのうち・・・・・・。セントリアに入るまでには把握してくれ」
「オッケー」
「大丈夫かなあ・・・・・・」
「大丈夫だって」
「ところでその黄色いハチマキはどうしたんだ?」
「餞別だよ」
「誰からの?」
「・・・・・・さーてと。行くぜ、シャープ!」
「あ、ああ」

あからさまに話題を逸らしたことに誰もが気づいたが聞き直す者はいなかった。みんなは空気が読めますから。

「あ、待ってジョン」
「何だ、レイン?」
「今回のミリア奪還作戦は軍の正式な作戦になったわ。王様の許可も得てあります」
「あ。それはありがとう。知らないところで頑張ってくれて」
「いいのよ。つきましては、ジョンを正式に軍人に任命しなくちゃならないの」
「いいよ」
「そのためには名前が要るのよね。サッカーだかサッキーだかそんなあやふやな名前では困るのよ」
「いや、俺はサッカーなんて言った覚えないぞ。サッキーも無いけど」
「だから今決めてちょうだい、名前」
「坂井翔太で」
「却下」
「何で?ホント今更だけど何で?」
「呼びにくいし変換が面倒」
「おいお前いま変換って言ったか?」

そこでいきなりシャープが割って入った。

「ジョン。さっきのスキルの名前なんか中々いいじゃないか。アレにしたらどうだ?」
「は?」
「ジョン・スペルハートと名乗るのだよ」
「いやいやいや。それは無いだろ」
「なぜだ?」
「それだと俺はスキルを使う度に『スペルハート!』って自分の名前を叫ぶ奴になるじゃないか」
「うむ。だがそれがいい」
「何考えてんだ、爺さん」

更にそこにロベルトがやたら楽しそうに口をはさんだ。

「ではジョナサン・S・ハートにすればよいのでは?これで問題は解決です」
「いいわね、それ採用」
「勝手に採用するなよ、レイン。・・・・・・ロベルト、Sは何の略だ?」
「スペルです」
「やだよ!解決してねえよ!」
「うぉっほん!えー、それではジョナサン・S・ハートよ。汝を、」
「勝手に名前採用すんな。あと大事なことをドサクサに紛れてやろうとするな」
「いいじゃんしつこいもん。みんなも飽きてきてるよ?」
「ヤなもんはヤなの!」
「でも、もう書いちゃったもん。これ正式な紙で出生証明書とかに使う奴。変更できないんだよねー」
「え・・・・・・。ちょ、おま、なんて書いたんだよ・・・・・・?」
「サッキー・ジョン。」
「あー!あー!い、一番キライなヤツを書きやがった!」
「わたしはこれが一番気に入ってるからねー」
「う、ウソだろぉ・・・・・・」

かくして勇者は旅に出るのであった!!


†††

詰みゲー! 4-46

†††4-46


『隠者の忍び屋敷<ハイドアウトマンション>』の中庭。ひまわりの前にジョンは立っていた。ジョンがミリアと「先にひまわりが咲いているのを見た方が勝ち」という賭けをしていたあのひまわりである。賭けの対象となっていたひまわりは奇しくもミリアが屋敷を出た一ヶ月後にしてミリアが行方不明になった翌日に咲いた。

(・・・・・・これで俺の勝ちだな、ミリア)

ジョンはひまわりの鉢植えに「俺の勝ち」と書いたプレートを突き刺して中庭を後にした。


***


ジョンの自室にて。ちょうど出発のための荷物を小さなリュックに入れ終えたところだった。

「・・・・・・これでよし。荷物はこれで全部だな」

そのとき、部屋の扉をこんこんとノックする音が聞こえた。ジョンがどうぞ、と応えると扉を開けてノックの主が部屋に入ってきた。ノックの主はクラリスだった。
クラリスの顔はまるで一日中泣いていたかのようにぱんぱんに腫れていた。

「ジョン・・・・・・。今、時間ええやろか」
「あ、ああ。いいよ。ちょうど荷物をまとめ終わったところだよ。どうしたんだ?」
「その・・・・・・聞いといて欲しいことがあって・・・・・・」
「・・・・・・ふーん。まあ、座ってくれよ。ちょっと散らかしてるけど」
「おおきに・・・・・・」
「お茶いる?」

ジョンはクラリスを椅子に座らせ、テーブルの上や床に散乱した物を手早くまとめてベッドの上に放り投げた。ついでにクラリスに出すためのお茶を用意し始めた。

「もらうわ」

クラリスの様子を気にしながらジョンはお茶の用意をした。ミリアが出て行ってからクラリスはどこか雰囲気が変わったような気がしていたが、今日は特に変だとジョンに思わせるほどに挙動不審であった。


***


「はいよ。淹れたてのお茶」
「おおきに・・・・・・」
「さあ、話してくれ。何か大事なことなんだろ?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「実は・・・・・・ミリアが行方不明になった原因は・・・・・・ウチ、やねん」
「え?」
「ウチがミリアを・・・・・・ここから追い出してん。せやから、せやから・・・・・・」
「クラリス、落ち着け」
「ウチが悪いんや、ウチが・・・・・・」

ジョンはいきなり泣き出してしまったクラリスをなだめてミリアが屋敷を出ていった本当の理由を聞いた。
クラリスが王様からジョンを惚れさせるよう言われたこと、ベンジャミンが協力したこと、計画は見事に成功してしまったこと。

「・・・・・・そうだったのか」
「今更何を言っても意味ないけれど・・・・・・、ジョン!ごめん!ごめんなさい」
「・・・・・・頭を上げてくれ、クラリス」
「ウチ・・・・・・」
「いいから」

ジョンは涙で顔を腫らしたお姫様を正面から見据えて断言した。

「クラリス、よく聞け。・・・・・・ミリアは俺が連れて帰る。必ずだ」
「ジョン・・・・・・」
「俺はクラリスのせいだとは思わない。それでも何か言いたいんならミリアに直接言ってくれ」
「・・・・・・」
「ビンタの一つくらいは覚悟しといた方がいいかもしれないけどな」
「・・・・・・せやな。ミリアにほっぺたひっぱたいてもらうわ。それでチャラにしてもらう」
「・・・・・・いつも通り図々しくなったな。それでいいよ。ちょうどいい」
「・・・・・・おおきに、ジョン」


***


「さてと・・・・・・」

クラリスが自室へ帰った後、ジョンは椅子に崩れるように座り、手で顔を覆った。

(・・・・・・・・・・・・)

クラリスに見せていた笑顔とは打って変わって沈んだ表情でジョンはしばらくの間何かを考えていた。


***


その夜。屋敷を出発する予定の時刻の一時間前。

「さて、と。心譜<スキル>を取りに《塔》に行くか。さっさとスキル取らないとシャープに置いて行かれるからな」

ジョンは一枚の札を具象化すると「入口」と書いた。そして仰向けに寝転がり、札を鳩尾のやや上あたりに置き、目を閉じた。


†††

詰みゲー! 4-45

†††4-45

ジョンは《隠者の忍び屋敷》の一室でパッチリと目を開けた。
目を覚ましたジョンにアニー(社長)、レイン(白髪の少女)、シャープ(爺さん)、オーレン(元執事)が声をかける。

「おー、目が覚めたね。おはよ~」
「あ、ジョン。おはよう」
「おお、起きたか」
「おはよう、よい夢は見れたかい?」

ジョンはあくびをしながら答える。

「・・・・・・ん、おはよう。時間はどのくらい経ったんだ?」
「まー、二時間くらい寝てたね」
「そうかぁ」
「でも多分『夢』に入ってたのは一瞬だよ。みんなそうだもん」
「アニー、みんなってなんだよ」
「あたしが今までに夢見の面倒を見てきた人たち。君はちょっとヘンだけどその点は同じだと思うよ」
「俺がヘン?」
「うんそう。君の夢にあたしいなかったでしょ?」
「いなかった」
「それよ。いつもだったらあたし夢の中に行くし、しゃらくせーから試練とか代わりにクリアしちゃうのに」
「するなよ」
「今回は入り口まで君を連れてったらそこでシャットアウト。ハイ、サヨナラって。ビックリしたねー、アレには」
「それって珍しいの?」
「珍しいって言うか初めてだねー。初体験さー。きっとなんかとんでもないもんがここに」

アニーがジョンの胸を指で何度もつつく。

「あるんだろうねー」
「やめてくれよ」
「おや、こりゃ失敬。・・・・・・で?どんなスキルだったの?見せてよ」
「それが・・・・・・」

ジョンは恥ずかしそうに頭をぽりぽりと掻いた。

「まだ取れてないんだ」

***

「つまり、取れたのはスペルの<抽出ポンプ>だけだったと?」
「うん、その通り」

翌朝、一旦眠ることにした面々は朝食前に一室に集まっていた。
なお、多忙なアニー社長は帰り、ここにいるのはレイン、オーレン、シャープ、今朝から参加したロベルト、そしてジョンである。
アニーはレインに「その後の経過を連絡してねー。あと、魔譜の件よろしく」と釘を差して出ていった。伊達に社長じゃない。多忙なんです。

「つまり・・・・・・どういうことですか?」

昨日の出来事をあまり理解していないロベルトが首をひねる。見かねてオーレンが説明を始めた。

「昨日、シャープがジョンに『ミリアが死んでも構わん』と言い捨てたのは実はジョンを試すためのものだったのです」
「そうなんですか」
「我々はジョンの決意が固ければ応援してやろう、という結論を出していたのですよ。で、見事ジョンはその晩に脱出を試みるという無謀な挑戦をしてその意志を示しました」
「そうなんですか」
「ミリアを助けるためにはまず力が必要です。つまりはスキル。そのためにわざわざスキル能力者まで手配していました」
「そうなんですか。で、その人はどこです?」
「昨日のうちに帰りました。忙しい人なので。それで、その結果、」
「魔力を抽出するスペルが使えるようになったんだよ」

最後はオーレンに代わってジョンが話した。

「昨日、夢の中の試練の塔ってところで鎧の騎士を倒したんだ。そしたら番人が『もう一回奴を倒したらスキルが使えるようにしてやる』って言ったんだ。でも、負けた場合に死んじゃうことを考えて一度戻ってくることにしたんだ」
「ほうほう」
「戻るって言ったら番人が今度は『騎士を一回倒したからスペルを一つだけ使えるようにしてやる』って言うから、」
「魔力抽出のスペルをもらってきたのか?」
「そうだよ」
「なぜそれなんだ?」

ジョンは試練の塔に行く際には、「往復」と「復活」に魔力が必要となることを簡単に説明し、抽出スペルがあれば魔力の回復が早くなるのだと説明した。
ジョンが説明を終えるとシャープが疑問を投げかけた。

「回復なんて待たなくても魔譜でいいんじゃないのか?」
「それがどうもダメみたいなんだ。俺が自分で貯めた魔力や魔譜でないと持っていけないんだって」
「理由は?」
「無いらしいよ」
「そうか。どのくらいで必要な魔力は貯まる?」
「今夜にももう一度『塔』に行くよ」
「そうか。なら出発は今夜だな。用意しておけよ、ジョン」
「・・・・・・ミリアを助けに行くのか?」
「そうだ。お前が言い出したことだろう?」
「シャープ!」

ジョンはいたずらっぽく笑う老人に抱きついた。シャープは「まさか孫と同じ年の子供と旅に出るとは」と言って苦笑した。


†††

詰みゲー! 4-44

†††4-44


「おはよう!気分はどうだ?」
「ん・・・・・・?うん・・・・・・?」

ジョンは番人に肩を叩かれて目が覚めた。

「あれ、俺は・・・・・・?」
「死んだって?そーだよ、死んだ。奴に、エヴリスに斬り殺された。だから俺が君の肉体を再生した」
「あー、そうなの?ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして」
「負けたかあ・・・・・・」
「ああ、惨敗だったね」
「それを言うなよ~・・・・・・」

落ち込むジョンの肩をぽんぽんと番人が叩いた。

「まあ、落ち込むなよ。また挑戦すればいいじゃん」
「そうだな、よし!」
「お?もう行くか?」
「ああ!」
「よーし、じゃあ、行ってこい!」
「始めてくれ!」
「いざ・・・・・・、始めッ!」

ジョン対エヴリスの第二戦目が始まった。
・・・・・・始まってしまった。

「「あ」」

ジョンと番人の両方が同時に間抜けな声を出した。


***


おさらいしよう。前回番人が言っていたのだが、「ジョンが生き返ることができる回数は一回」であった。また、決闘が始まればそれを終えるには勝敗がつく(どちらかが死ぬ)以外に無いこともわかっている。
以上の点をふまえれば、
何も考えずに惨敗した相手に二戦目を挑んだジョンは、三途の川に片足を突っ込んだも同然なのだ。

「ああああああーーーーー!やっちまったぁーーーーーー!」
「ジョン!いいか、よく聞け!俺が指示を出す。素直に従え!」
「くっ、わかった!」
「まず、エヴリスを正面から見ろ!目を絶対に逸らすな!」

ジョンはのしのしと歩いてくるエヴリスを真っ直ぐに見た。一度殺されているジョンにはエヴリスが死神にしか見えなかった。エヴリスを見ていると自分の存在が消えてしまうかのような恐怖に襲われた。
思わずジョンはエヴリスから目を逸らした。

「ジョン!目を背けるなッ!死ぬぞ!」
「でもあいつの目がっ・・・・・・」
「目を見ても死なねえ!だけど目を見なければ死ぬんだ!ジョン、目を見ろ!」

(目を見ても死なない。目を見なければ・・・・・・死ぬ!)

ジョンはエヴリスの目を見た。不思議と恐怖は薄らいでいた。
エヴリスが剣を振り上げる。ジョンはその動作をさきほどよりものろいと感じた。
ジョンはその時間で片刃の剣を具象化した。

ぎん!

左手で柄を、右手で刃を支えてエヴリスの刃を受け止めた。しかし、エヴリスの剣の圧力はケタ違いに強く、徐々にジョンの剣は押し込まれていった。
エヴリスの剣がジョンの額にゆっくりと下りてくる。

「ジョン!」

番人の声がする。しかし、ジョンにはそれが妙に遠くに聞こえた。
今にも斬り殺されるジョンは不敵に笑った。番人はてっきりジョンが発狂したのだと思った。

「なあ、エヴリス・・・・・・。お前強ええよな。俺なんかよりずっと。でもさあ、俺にできて、お前にできないことが一つあるんだぜ・・・・・・」

ジョンは一際口元を歪めると、大声で宣言した。

「《具象化する拘束服<エンボディド・リストリクション>》!!!」

エヴリスの全身は一瞬にしてガラス質の結晶体で覆い尽くされた。
鎧の関節という関節が全て硬化してエヴリスは身動き一つ取れなくなった。

ジョンが番人を振り返る。

「俺のネーミングセンスどう?」

†††

詰みゲー! 4-43

†††4-43


そんなこんなでジョンは試練の塔で鎧の騎士(エヴリス)と一騎打ちをすることになった。
ちょっと緊張してきたジョンは剣を具象化しながら(ジョンと同じ顔の)番人と雑談を続けた。

「そういえばこれが初めての実践だな。夢の中だけど」
「あ、言い忘れてたけど死んでも大丈夫だけど生き返れる回数には限りがあるから」
「何回くらい生き返れる?」
「えーと・・・・・・。まあ、一回くらいは生き返れるぜ」
「へー」
「まあ、一回目は何も考えず行けば?」

へいへい、と番人の言葉を流しつつジョンは前へ進み出る。

無言のままのエヴリスは近寄るほどにその圧力を増した。

(でかい鎧だな。2メートルはある。どうすれば勝てるかな?)
「始めていいかー?」
「いいぜー」
「じゃあいくぜー・・・・・・、始めッ!」

番人の言葉とともにエヴリスの瞳に光が灯った。


***


エヴリスは起動するやいなやその右腕に握っていた長剣をジョンに向けてすさまじい速さで振るった。
ジョンとしてはちょうどいい距離を取っていたつもりだったが、エヴリスの動きが予想以上に機敏であったこと、そして予想以上に自分が動けなくなっていたことが原因となって、ジョンの剣は弾き飛ばされた。

「くそッ!」

動けない自分に悪態をつく間にエヴリスはとどめのもう一振りを構えていた。上段に高々と振り上げられた剣は見上げるほどであった。

(くっ、動けねえ!)

圧力にすくみあがってしまったジョンであったが、必殺の剣が振り下ろされるとジョンは反射的に硬質のマテリアルを具象化した。

がいん!

腕で頭をかばいながらも繰り出したとっさの魔術は未熟ながらも効果を示した。
もっともそれは致命傷を避けた、という程度の効果であり、逸れた必殺の斬撃はジョンの左腕の肘のあたりをすっぱりと両断していた。

「あ、あ・・・・・・」

完全にパニック状態に陥ったジョンは再び剣を構えるエヴリスを目の前にして、背を向けて逃げ出した。エヴリスは狭い室内で大量の血を流して逃げる相手を静かに、微動だにせず、ただ見ていた。
ジョンは番人が立っている部屋の隅に駆け寄った。

「た、助けてくれ!」
「何?」
「左腕がっ・・・・・・。血が、止まらない!」
「当たり前だ。斬られたんだからな」
「ち、治療を・・・・・・、」
「ふん、バカが!どちらかが死ぬまでこの決闘は続く。治療なんてするわけないだろ」
「そんな・・・・・・」
「ほら、離れろ。エヴリスがこっちに来るぞ」

ジョンが振り向くとエヴリスがのしのしと近づいてきていた。
ジョンは再びエヴリスに背を向けて走り出した。シャープがこの様を見れば「情けない」と言って叱るだろう。

「はあっ、はあっ」

がしゃん、がしゃん。

「うっ、くうっ・・・・・・」

ジョンが走っているうちはエヴリスは部屋の中央に陣取るように歩いてジョンを追いかけていたが、ジョンが立ち止まったその瞬間、

がっしゃ、がっしゃ、がっしゃ、がっしゃ!

とものすごい音を立てて走り出した。

「ッ!!!」

興奮状態から醒めてきて強く痛みだした左腕をかばうようにジョンはまたダッシュする。

「~~~~~~っ!」

走るときの振動が左腕に激痛をもたらす。

***

そんなジョンの様子を番人はため息混じりに見ていた。

(こりゃあ、ダメだな・・・・・・)

番人の感想としては、「あいつ、完全にビビってるな」だった。

(まあ、初の実践で「鎧の騎士」じゃなあ・・・・・・。スライムとかがいいよなあ)

ジョンは初の実戦で出くわした敵の圧力にビビってしまった。ビビってるから、正常な判断ができない。判断できないからきちんと相手の力量が測れない。力量がわからないから、怖い。怖いから逃げる。逃げると、逃げ道のない部屋の中でいつか力つきて殺される。

(悪循環だなあ。あ、循環じゃないか連鎖か。恐怖を克服できればいいんだけどなあ。できるかなあ)

心配そうに見ていた番人の予想通り、ジョンは一分後に後ろから足を切られ、その三十秒後に後ろから心臓を斬られて死んだ。


†††

詰みゲー! 4-42

†††4-42


平野。見渡す限り一面の平野が広がっている。どこもかしこも緑と空色で埋め尽くされている。

が、その平野に不自然なほどに細く、長い象牙色の塔が一つ立っていた。
その中にジョンは吸い寄せられるように入っていった。

***

「君はどんな夢をよく見ますか?」
「夢?」
「そーよ」

アニーがジョンの前で片膝を立てて座る。

「この前は仮面を付けた女の夢を見たよ。よく覚えてないけど」
「いつ?最近?」
「いや、屋敷に来る前」
「なあんだ」
「どう、いけそう?」
「だめねー。夢をあんまり見ないタイプよ。一番面倒くさい奴だわ。・・・・・・帰っていい?」
「ダメよ。仕事はキッチリしてって」
「しょうがないなあ。・・・・・・魔譜の件、頼んだわよ」
「はいはい」

レインとアニーのやりとりを見ながらジョンはシャープに質問した。

「アニーって何者?魔譜って?」
「魔譜は覚えてるか?」
「魔力を溜めとく譜を書いた札だろ?」
「そう。彼女は国軍の魔譜を製造している大会社の社長だ。まあ、それだけではないがな」
「社長!?俺と変わんない年なのに?」
「母親から継いだのだ。彼女はミルキーウェイ家の九代目当主だ」
「へー・・・・・・。ミルキーウェイ家って凄いの?」
「この国で十本の指に入る魔術師の名家だ。特に商業に特化した家だな」
「ふーん」
「あたしの話はそのくらいでいいでしょ?君は今すぐ寝なさい」
「は?」
「いいから寝なさい」
「え?どういうことだよ。え?」
「彼女のスキル『睡眠学習<スイミングスクール>』でスキルとスペルを習得するのよ」
「え?何?寝ればいいの?」
「「そーよ」」

最後はレインとアニーの返答がハモった。

かくしてジョン眠りにつき、アニー社長が魔女のような笑みを浮かべてすやすやと眠るジョンの頭の上で手をかざしたのだった。


***


見渡す限りの平野と一本の塔。

(ああ、夢か。あの社長のスキルのせいかな)

とりあえずジョンは塔を目指した。塔の入り口には「試練の塔」と書いた看板があった。ゲームみたいだな、と思いつつジョンはさっさと塔に入った。

「よーこそ」

入ってすぐの部屋にはジョンと同じ顔の男がいた。

「・・・・・・なんで同じ顔なんだよ」
「知らねえよ。そんなに不都合なことでもないだろーが」
「それもそうか。で、お前なに?」
「なにってなんだよ。番人だよ、番人。この塔の」
「へー・・・・・・」
「そっちは何しに来たんだ?」
「スキルをもらいに来た」
「あー、はいはい。アレね。じゃあ、とりあえずこいつと戦ってくれ」

男は指をパチンと鳴らした。すると部屋の中央にどこからともなく鎧の騎士が出現した。

「どこから出たんだ?」
「夢だからな。その辺は気にするな」
「ふーん。で、何?あいつを倒せばいいの?」
「そういうことだ。あ、あと今のお前の魔力の半分を魔譜にして渡せ」
「なんで?」
「魔力が無いとこっから現実世界に戻れないからな。預かってやるんだよ」
「ん?夢見てるだけなんだろ?なんで魔力が必要になるんだ?」
「細かいことを気にするな。いいからよこせ」
「ったく・・・・・・。仕方ねーなー」

ジョンは魔力を魔譜に込めた。

「あれ?俺スペル使えたっけ?」
「まあ、夢だからな。でも魔譜以外は使えないぜ」
「なんじゃそりゃ」
「背伸びは今の一回限りってことだよ」
「ふーん」
「じゃ、魔譜は確かに受け取った。存分にエヴリスと戦ってくれ」
「エヴリス?」
「ああ、あの鎧の騎士のことだよ」
「そういう名前なんだ」
「いや、今つけた」
「そんなんでいきなり呼ばないでくれる!?」
「じゃ、がんばれよー」
「おう」
「エヴリス」
「そっちかい!」


†††