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詰みゲー! 4-35

†††4-35

ジョンが午前中の稽古を終えて、平野から戻って(『屋敷』には中庭の奥に馬術訓練等に適した「平野」まである)、中庭を通ると、ベンチにミリアがまた無表情で座っているのを見つけた。


「・・・・・・今日はどうしたんだよ?」
「あら、ジョン。今日は馬術?」
「ああ、そうだよ。で、質問の答えは?」
「今日はどうしたかって?別にどうもしないわよ」
「座るぜ?」
「お好きにどうぞ」

ミリアが少しベンチを詰める。
ジョンはミリアが微妙に視線を外そうとしているように思えた。
視線をベンチの正面の梅の木あたりに固定したままでミリアが口を開いた。

「ねえ、ジョン」
「なんだ?」
「・・・・・・花蓮さんのこと、聞いていい?」
「・・・・・・ああ」
「どういうところが好きだった?」
「いきなりだな」
「いきなりよ」
「そうだな・・・・・・。たとえ、相手がどんな人間でも困っていたらつい助けてしまう・・・・・・、そんなところかな」
「ふぅん」
「なんだよ、変な目で見るな」
「具体的には?」
「・・・・・・ちょっと昔話をしたいなあー」
「どんな?」
「聞けばわかる」
「いいわよ」
「じゃ、遠慮なく。・・・・・・昔々、それはそれは酒癖の悪い男がおりました」
「変な冒頭ね」
「男はそれはそれは性格の悪い女と結婚し、しばらくすると男の子が一人できました」
「あら、おめでたい」
「男と女は男の子を置いてどこかに行ってしまいました。男の子が後で聞いたところでは、女は浮気、男は借金、とのことでした」
「へーえ」
「男の子はその後、親戚の家をたらいまわしにされました」
「あらあら大変ね」
「男の子に両親がいないことを知ると近所の子供たちはよってたかって彼にケンカを売ってきました。」
「つらい、つらいなぁ~」
「少年は売られたケンカは全部買う主義だったので、毎日ケンカに明け暮れていました」
「壮絶な幼少期ねえ」
「中学校に行く頃には少年の周りに敵はいませんでした」
「中学校?」
「中くらいのガッコ。少年は中学校でもケンカケンカの毎日でした」
「まさに仁義無き戦いねー」
「高校に上がる頃にはもう誰も少年とケンカしなくなりました。また家賃の安いアパートで一人暮らしも始めました」
「それはヤバいわね」
「少年はようやく手に入れた平穏な日々を孤独に有意義に過ごしていました」
「要はぼっちでしょ?」
「・・・・・・そんなぼっち少年はある日、風邪をひいてしまいます。当然、看病してくれる人などいません」
「ははは、マヌケね」
「・・・・・・」
「冗談よ。続けて続けて」
「・・・・・・。しかし、少年が目を覚ますと、一人の少女が目の前に座っていました。彼女が看病をしてくれていたのです。彼女は先生に頼まれた、と言っていました」
「あら、急に早口になって」
「・・・・・・こんな感じかな?ビビりながら不良の看病するような奴なんだよ、アイツは」
「嬉しかった?」
「・・・・・・ああ。・・・・・・当たり前だ」

ジョンはベンチから立ち上がって、思いっきり伸びをした。

「アイツのおかげで俺がどれだけ救われたか・・・・・・。今、俺が笑えるのはアイツのおかげだよ」
「そんなに?」
「ああ。アイツと出会わなければ俺は道を踏み外してただろうな」
「・・・・・・言い切れる?」
「ああ」

その返事を聞いた後で、ミリアもベンチから立ち上がった。

「ねえ、ちょっとひまわりを見に行きましょうよ」

***

「やっぱりまだ咲いてないわね」
「それでももうすぐ咲くぜ」
「わかるの?」
「わかる」
「ふうん。でもあたしはそれを見れそうにないわ」
「どうしてだ?」
「あたし、仕事が入っちゃってね。ここには戻る暇もないくらい忙しくなるのよ。だからここから出ていこうと思ってるの」

ジョンは驚いたようにひまわりを見るミリアの横顔を見やり、すぐに自らの視線もひまわりに移した。

「そう、か」
「荷物は全部持っていくわ。でもキティは置いていこうと思ってる」
「なんでキティを置いていくんだ。連れていけよ」
「忙しくてね。かまってられないのよ」
「そんなに忙しいのか・・・・・・?」
「うん」
「・・・・・・やめちまえよ、そんな仕事」
「そうもいかないのよ」

ミリアが首を振る。ジョンはミリアの目を見た。

「・・・・・・わかった。キティは置いていけ。世話くらいしといてやる」
「ありがと」
「メイドさんがな」
「あたしの感謝を返せ」
「やだね。まあ、でも無理するなよ。いつでも昼寝に来ればいい」
「・・・・・・ふん、生意気なこと言うわね。プータローのくせに」
「うるせえよ、さっさと出てけ。この魔女め」
「言ったわね」
「言ったぜ?」
「後悔させてやるっ。おらー!」
「うおっ、やめろ。杖で殴るなー!」
「まてこらー!」
「やーい、ここまでおいでー・・・・・・」
「まちなさーい・・・・・・」

ジョンはミリアから逃げて庭園の奥へ、ミリアもジョンを追いかけて後へ続いていった。きっと追いかけっこは昼ご飯まで続くのだろう。平和なことだ。
・・・・・・こんな平穏な日々がいつまでも続けばよかったのに。


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