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詰みゲー! 4-40

†††4-40


つかつか、つかつか。

ジョンがもの凄い早足で屋敷の廊下を歩いていく。屋敷を出る前にミリアが買ってきた服を着て。今まではやや気恥ずかしくて敬遠していたその服の帯を思い切り締めて。

ジョンは玄関扉の脇に立っているロベルトを見つけた。

「おはよう、ロベルト」
「おはよう、ジョン」
「鍵くれ」
「断る」

しばらくジョンとロベルトは睨み合った。
やがて、ロベルトが口を開く。

「確かに手紙を見せたのは私だ。だが、それはお前には知る権利があると思ったからであってお前に助けに行ってほしかったからではない」
「ああ。わかってる。別に助けに行く気なんか無いさ。ただ新しい服を買いに行きたいだけだ」
「・・・・・・ミリアが買ってきた服か?似合ってるじゃないか。勇ましい服だ。・・・・・・さっさと道場に行って稽古してこい。お前ではまだ彼女は助けられん」
「だったらいつ助けられるんだよ?ベンジャミンか、シャープくらい強くなれば行ってもいいのか?一体何年かかるんだよ」
「私にあたるな。私だってつらいんだ」
「はっ」

ジョンは足下にあった椅子を蹴っ飛ばした。
そのとき、会議を終えたシャープ、レイン、オーレンが二階から下りてきた。

「あら、ジョン。椅子が嫌いなの?」
「ああ、大っ嫌いだね」
「こりゃあ、大分キレてるな。お疲れ、ロベルト」

オーレンの労いの言葉にロベルトは黙って会釈した。

「ジョン、いい加減にせんか。ワシらだってお前のことを・・・・・・」
「やかましいッ!」

子供を諭すようなシャープの言をジョンは遮った。

「ミリアを助けるのか、助けないのか、どっちだ!ハッキリ言葉にしろ、シャープ!」
「助けん。ミリアは見捨てる。これがワシらの決定であり軍の決定だ」
「ふざけんな!」
「ふざけるわけなかろうがッ!」

ジョンの罵倒にシャープの堪忍袋の緒が切れた。

「ミリアのことでワシがふざけるわけないだろうが、小童が・・・・・・。ミリアを助け出したいのはお前だけだとでも思っているのか!思い上がりも大概にしろ!」
「ミリアが死ぬんだぞッ」
「構わん!」

シャープの怒鳴り声を聞いてジョンはシャープを睨み、足早に自室へと戻っていった。


***


深夜。
午前二時を時計が示した時、ジョンはむくりと何の前触れもなく起きあがった。そのまま十分間ほど自分が何をしようとしているのか改めて考えて、ベッドから床に足を下ろした。

その時に限ってやたら軋むドアを開けてジョンは廊下に出た。ひたひたと冷えた素足が妙な足音を立てた。手に持ったランプの灯りで写った自分の影がおどろおどろしくゆらめく怪物のように見えた。
ロベルトの部屋の前まで来てジョンはためらうことなく、ドアノブを回した。
部屋の右の方からロベルトの寝息が聞こえた。ジョンは彼が起きないようにできるだけ静かに部屋の左側へ移動し、そこにある棚を次から次へとひっくり返すように物色していった。
本職の泥棒ではないジョンはおおいに緊張し、おおいにもたついていた。しかしそれでも、部屋の主が起きなかったことが幸いしてジョンはお目当ての「鍵」を手に入れた。

意気揚々と部屋を出たジョンはそのまま玄関へ向かうと鍵をドアノブに突っ込んで回そうとした。
が、鍵は回らなかった。

「え・・・・・・?」

その後も何度も何度も試すが鍵は回らなかった。ジョンは鍵をじっくりと見直したが、それは大きさや装飾のデザインがミリアが何度見せてくれた鍵にそっくりだった。
鍵は合っているはずなのに回らなかった。

「くそぉっ!」

ジョンは鍵を床に叩きつけた。
するとその鍵を拾う手があった。

「ダメじゃないか。物を乱暴に扱っては」
「オーレン・・・・・・。起きてたのか」
「ついてこい」


***


すたすたと歩いていくオーレンの後ろを歩きながらジョンは尋ねる。

「なんでまだ起きてたんだ?」
「君を待っていた」

振り返ってオーレンが微笑む。

「君なら諦めずに出ようとするだろうと思ってね。鍵を盗るってのも予想してたうちの一つだよ」
「他にはどんな予想を?」
「まあ扉を力づくで、とか、誰かが帰る瞬間に、とか、かな」
「その手があったか」
「フフ。どうして鍵が使えなかったかわかるか?」
「わからない。違う鍵だったんじゃないの」
「惜しい。ここの鍵は<鍵番>との契約を示す『譜<スペル>』が必要なんだ。君は契約したか?」
「いや。俺はそもそもスペルを修得してないから……」
「まあ、落ち込むな。何事もこれからだ。どう進むか、が肝心なのだ」

そう言ってオーレンは一つの扉の前で立ち止まる。ジョンも止まった。

「昼間のシャープの話、どうだ?納得いったか?」
「いや、俺には無理だ」
「よし」

オーレンはどん、とジョンの背中を叩くと目の前の扉を指さした。

「入りな」


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