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詰みゲー! 4-47 

†††4-47


本の中。試練の塔にて。
目の前にいた番人がジョンに声をあいさつする。

「よう、早かったな」
「ああ、急いでるしな」
「まあ、知ってるけどな。ここでの時間は元の世界では一瞬だからあんまり気にしなくてもいいぜ」
「それは助かるな」
「ああ、そういえば塔の外にお前に会いに来た奴がいるぜ」
「は?」
「早く行きな。彼女ずいぶん待ってるみたいからな」
「え?彼女?」
「いいから行けって」

番人が何を言っているのかまるでわかっていないジョンを塔の番人は外に押し出した。

「ほら、向こうの木の下だ。見えるだろ」
「・・・・・・!」

ジョンは草原に立つ一本の木の下に一人の少女が立っているのを見るや、その木に向かって走り出した。それを見て番人が笑ってつぶやく。

「おやおや、あんなに急いで。そんなに会いたかったのかねえ。・・・・・・まあ、知ってるけどな」


***


少年は木の下に立つ少女に遅れたことを謝った。

「悪い、待ったか?」
「・・・・・・遅いわよ。何かあったの?」
「悪い悪い。目覚ましが鳴らなくてさ」
「そもそもセットしてたの?」
「そうだったな。無かったな、目覚まし」
「まったく・・・・・・、変わってないわね」
「そうかな」
「・・・・・・どのくらい経ったの?」
「まだ一年経ってないよ」
「ふーん・・・・・・。それなのに新しい女に惚れちゃったのね」
「いっ!?」
「わからないと思ったの?あきれたわね」
「・・・・・・怒ってる?」
「ええ、ちょっとね。でもちょっと嬉しかったわ。あんたが立ち直ってくれたってわかったから。あたしが腹を立ててるのは、アンタがその女(ひと)をどこかにいかせてしまったことよ!知ってるんだからね!行かせた理由も!」
「り、理由?俺はあいつが仕事だって言うから・・・・・・」
「だったらアンタがついていけばよかったじゃない。今みたいに必死になって周りに頼み込めばよかったのよ」
「それは・・・・・・」
「理由を言いましょうか?・・・・・・あたしよね?あたしに遠慮したんでしょう?」
「・・・・・・そんなことは、」
「図星でしょ?」
「・・・・・・全部わかってるのか」
「そりゃあ、アンタの考えてることくらいわかるわよ。アンタ単純だもん」
「言ってくれるぜ・・・・・・」
「翔太」
「なんだよ」
「彼女を助けなさいよ」
「・・・・・・ああ」
「ゼッタイよ。約束して」
「ああ、約束する。必ずミリアを助け出してみせる」
「よし。では勇者クン。キミにこれを授けよう」
「なんだよ、そのノリ」

少女はポケットから黄色くて細長い物を取り出した。

「これは?」
「ハチマキよ。あたしからの餞別」
「・・・・・・ちょっとダサくないか?」
「ああ?」
「何でもないです」
「・・・・・・うん。よし、じゃあ、あたしは帰るわ」
「え!?もっといてくれよ!」
「あたしはもうアンタみたいなのとは関わっちゃいけないのよ。今回会えたのは本っ当にすごいことなんだからね」
「行っちゃうのか」
「ええ」
「もう会えないのか」
「ええ。二度はないわ」
「そうか。・・・・・・花蓮」
「ん?」

どこかに歩き去っていこうとしていた少女が振り返る。

「・・・・・・その髪留め、似合ってるぜ」
「ふふ・・・・・・。ありがと」

少女は笑って礼を言い、木陰から出て光となって消えていった。


***


「やっと戻ったか。・・・・・・泣いてるのか?」
「うるせえ。さっさとエヴリスと戦わせろ」
「そうせかせかするな。物事には順序がある。まず帰りの分と復活の分の魔譜を出せ。分量はわかるな?」
「ほらよ」
「確かに」
「早くしてくれ」
「わかったわかった。それにしてもお前そのハチマキはどうしたんだ?」
「うるせー。早くしろ」
「・・・・・・わかったよ。エヴリス!」

部屋の中央に巨大な鎧の騎士が現れた。


***


『隠者の忍び屋敷』玄関ホールにて。
出発の準備を終えたシャープがロベルト、レイン、オーレン、クラリスと別れのあいさつをしていた。

「おや、やっと大将の到着だ。・・・・・・どうだ、ジョン!スキルは手には入ったか!」
「ああ!バッチリだ!」

二階から下りてきたジョンにシャープたちが駆け寄って「どんなスキルだった?」「強い?」「使える?」「そのハチマキなに?」などとジョンを質問責めにした。

「ちょ、ちょっと待ってくれよ。いっぺんには答えられないって」
「じゃあ、スキルの名前は?」
「ずばり《魔導の極意<スペルハート>》だ!」
「スペルハート?どんな能力なんだ?」
「さあ?」
「は?お前のスキルだろう?」
「説明されたけどよくわかんなかった」
「おいおい・・・・・・大丈夫か?」
「大丈夫だって。また説明聞きに行けばいいんだし」
「まだ試練の塔に行けるのか?」
「ああ、行けるよ。来いって言ってたし」
「ま、まあスキルの詳細はそのうち・・・・・・。セントリアに入るまでには把握してくれ」
「オッケー」
「大丈夫かなあ・・・・・・」
「大丈夫だって」
「ところでその黄色いハチマキはどうしたんだ?」
「餞別だよ」
「誰からの?」
「・・・・・・さーてと。行くぜ、シャープ!」
「あ、ああ」

あからさまに話題を逸らしたことに誰もが気づいたが聞き直す者はいなかった。みんなは空気が読めますから。

「あ、待ってジョン」
「何だ、レイン?」
「今回のミリア奪還作戦は軍の正式な作戦になったわ。王様の許可も得てあります」
「あ。それはありがとう。知らないところで頑張ってくれて」
「いいのよ。つきましては、ジョンを正式に軍人に任命しなくちゃならないの」
「いいよ」
「そのためには名前が要るのよね。サッカーだかサッキーだかそんなあやふやな名前では困るのよ」
「いや、俺はサッカーなんて言った覚えないぞ。サッキーも無いけど」
「だから今決めてちょうだい、名前」
「坂井翔太で」
「却下」
「何で?ホント今更だけど何で?」
「呼びにくいし変換が面倒」
「おいお前いま変換って言ったか?」

そこでいきなりシャープが割って入った。

「ジョン。さっきのスキルの名前なんか中々いいじゃないか。アレにしたらどうだ?」
「は?」
「ジョン・スペルハートと名乗るのだよ」
「いやいやいや。それは無いだろ」
「なぜだ?」
「それだと俺はスキルを使う度に『スペルハート!』って自分の名前を叫ぶ奴になるじゃないか」
「うむ。だがそれがいい」
「何考えてんだ、爺さん」

更にそこにロベルトがやたら楽しそうに口をはさんだ。

「ではジョナサン・S・ハートにすればよいのでは?これで問題は解決です」
「いいわね、それ採用」
「勝手に採用するなよ、レイン。・・・・・・ロベルト、Sは何の略だ?」
「スペルです」
「やだよ!解決してねえよ!」
「うぉっほん!えー、それではジョナサン・S・ハートよ。汝を、」
「勝手に名前採用すんな。あと大事なことをドサクサに紛れてやろうとするな」
「いいじゃんしつこいもん。みんなも飽きてきてるよ?」
「ヤなもんはヤなの!」
「でも、もう書いちゃったもん。これ正式な紙で出生証明書とかに使う奴。変更できないんだよねー」
「え・・・・・・。ちょ、おま、なんて書いたんだよ・・・・・・?」
「サッキー・ジョン。」
「あー!あー!い、一番キライなヤツを書きやがった!」
「わたしはこれが一番気に入ってるからねー」
「う、ウソだろぉ・・・・・・」

かくして勇者は旅に出るのであった!!


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