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さまよう羊のように 9-1

†††9-1


テリフィオール氏の邸宅敷地内
第三棟 地下
B122号室

「・・・・・・縄がキツい」
「我慢しろ、ココ」
「俺は縛られるのに慣れてないんだよ。しょうがないだろ」
「さりげなく俺が慣れてるみたいな言い方すんな。・・・・・・慣れてるけどな」
「あー、アバラが痛え・・・・・・」
「折れてるのか、やっぱり」
「ああ、どうもそうらしい。・・・・・・くそっ」

眉間にしわを寄せて不機嫌そうにギャットが舌打ちをする。一般人二人が無傷で着地に成功したのに対し、現職の警察官(停職中だが)が失敗・骨折したという事実に彼のプライドは人知れず傷ついていた。

「あー・・・・・・、カッコ悪りい・・・・・・」

数時間前まで銃撃戦を乗り切った人物とは思えないほどの落ち込みようだった。


***


今までのことをまとめておくと、
ココとギャットは捕まえたマフィアの一人からナッツの居場所を聞き出した。これは彼ら二人にとって半年分の労苦が半分くらいは報われた瞬間であった。
それでも警戒しつつ向かったホテルで二人は待ち伏せ・閉じこめに遭う。入った部屋の入り口からマフィアが銃撃戦を仕掛けてきたのだ(ホテルの壁が分厚くて助かった。薄ければ隣の部屋から壁越しに撃たれるところだった)。
罠だ、と悟った二人。当然ナッツなど居るわけはない、と思われたが予想に反してナッツはその部屋にいた。ナッツを加えた三人で脱出もとい四回からの飛び降りを断行。ギャットがあばらを骨折しながらも逃げ仰せたかに思えた瞬間、現れた黒の外車。マフィアの幹部、タームのお出ましである。
タームは部下をも切り捨てると宣言し三人はその非常さを前に逃げきれないと観念して捕まったのである。そしてマフィアの敷地の隅っこの建物の地下の隅っこの部屋に連れられて仲良く三人イスに並んでぐるぐるに縛り付けられたのだった。


***


ココ、ナッツ、ギャットの三人の前には見張りのマフィアが二人。その奥に扉が一枚。その扉を出るとどうなっているのかは三人はよく知らなかった。なにせ目隠しをされていたのだ。階段を下りたことから地下だということはなんとなくわかっていたが。

「なあ、ココ・・・・・・。シャーミラはどうなった?」
「どうって?」

ココが怪訝な顔で聞き返す。ナッツが妙にしんみりした声色で尋ねたからだ。ちなみにシャーミラというのはナッツの妻だ。

「俺がいなくなって、その・・・・・・取り乱したりとか」
「・・・・・・強かったよ。さすがはお前の嫁さんだな」
「・・・・・・。ふん、当たり前だろ」
「泣くなよ」
「泣いてねえよ。やめろよ、本当に泣いてるみたいじゃねえか」
「じゃあ、間を空けるなよ」
「・・・・・・お前らホンット仲いいな。・・・・・・あぁ、アバラが痛え」
「そこまでアバラをゴリ押しされると嘘くさく聞こえるよな」
「・・・・・・。あぁ、大声が出ないなぁ。アバラが痛いなぁ」
「本当にそんなに痛いのか?フリしてるだけじゃないのか?」
「ナッツ君。ほとんど初対面なのによくそんなことが言えるな、おい」
「あれ?決めゼリフは?」
「あぁ~、アバラが痛いなァ~」

ココのからかいにナッツがすかさず乗る。

「俺はそんな間の抜けた声は出してねー!うっ、アバラが・・・・・・!」「ところで、ココ。俺が前にお前に言ったこと覚えてるか?」
「うん?アバラが痛い、だっけ?」
「あぁ、アバラが痛えぇ~・・・・・・」

ギャットも乗る。ナッツはそれには特に反応せずに続けた。

「フォンを助けて後悔しないのかって聞いたろうが。あれのことだよ」
「ああ、あったな。半年くらい前に」
「今の気分は?」
「後悔してるかって?」
「そうだ」
「してねーよ。まあ、強いて言うならアバラが痛いな」

ひゃははは、と三人が爆笑する。その光景をゴツい銃を持った見張りの二人は呆れ顔で見つめていた。


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