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さまよう羊のように 9-2

†††9-2


「ようやく厄介事が一つ減ったな、ターム」
「はい。おかげさまで片づきました」

三人が縛り付けられているのとは別の建物の中のやや広く薄暗い部屋にタームは来ていた。

「半年か・・・・・・。長い間ご苦労だった」
「すみません、思ったより長くなってしまって・・・・・・」
「いや、他の者には捕まえることすらできなかっただろう。お前だからこそだ」
「身に余るお言葉です」
「謙遜するな。あいつらの処分が済んだらお前に新しい仕事を任せたい」
「どのような内容の・・・・・・」

「しっ、失礼しますっ!」

そこで部屋にいきなり現れた下っ端の声で会話が中断する。そして下っ端はボスとタームが何か大事な話をしていたとわかって恐縮してしまった。見かねてタームがため息混じりに声をかける。

「・・・・・・何のようだ」
「そ、それが・・・・・・警官隊が来ています」
「警官隊だと?何人だ?」
「二十人ほどです」
「多いな」

タームの顔が困惑の色を帯びる。
「・・・・・・わかった。話はそれだけか?」
「はい」
「そうか・・・・・・。もういい、下がれ」

下っ端が出て行くとボスが口を開いた。

「どういうことか見当はつくか?」
「おそらくはあの三人組に関係しているのでしょう。タイミングが良すぎます」
「確かに。そう見るべきだろうな」
「重ね重ねすみません。私の不手際です」
「謝るのは後でいい。お前の思う所を言え」
「はい。恐らくは三人組のうちの一人が警官です」
「ほお・・・・・・、なるほど続けてくれ」
「捕虜を取り返そうとしていた二人組がなぜ中々捕まらないのか不思議だったのです。私が思うにそれは連中のうちの一人は警官だったためかと」
「なるほど。・・・・・・連中が警察と手を組んでいるとしてだ。警察は余程のことがなければワシの屋敷には踏み入れん。この場所にいると確信したから警官隊はここに来たわけだが、その確信はどこから来ていると思う?」
「考えられる可能性は二つあります。一つは連中は警察に見張らせていた場合。警察は連中を捕まえた我々の後を追ってきたのです。この屋敷の中にいると確信して隅々まで調べるつもりでしょう」
「二つ目は?」
「発信機です。おそらく警官が身につけているかと」
「どちらだと思う」
「後者です」
「そうだな、ワシもそう思う。三人組はどこにやった?」
「第三棟の地下です」
「ははあ地下か・・・・・・、抜かりないな。発信機の電波は届かん。さてはこの場の思いつきではないな」
「いえ、警察とつながっているという確信までは・・・・・・」
「さすがだな。・・・・・・警察は敷地内を虱潰しに探すだろう。三人組以外にも見つかるわけにはいかん物はいくらでもある。警察に挙げられても構わない案件をいくらか見つかる程度に隠せいで時間を稼げ」
「はい」
「三人組の方も一応増員しておけ。逃げられでもしたら終わりだ」
「幹部が一人ついています。心配は無いかと」
「油断は禁物だ。・・・・・・ワシは警官隊と挨拶でもするとしよう。お前も早く行け。時間がないぞ」


***


「暇だなあ。しりとりしようぜ。リンゴ。次はナッツな」
「いきなりだなぁ。ゴリラ。次はギャットだぞ」

部屋と三人の配置について正確に述べる。入り口から見て右から順にココ、ナッツ、ギャットである。ちなみに見張りは二人で扉の前に待機している。

「・・・・・・ん・・・・・・?」
「聞いてなかったのか?しりとりだよ」
「あ、ああ・・・・・・。そうか・・・・・・リンゴ」
「いや、ゴリラの次だよ」
「ああ・・・・・・ライオン」
「どうしたんだよ。何か心配なことでもあるのか?」
「俺は自分の安否が心配だよ」
「ナッツは黙ってろ」
「・・・・・・なんでもない。ただ少し眠いだけだ」
「ふーん・・・・・・。しりとりは止めとくか?」
「ああ」
「わかった。しばらく休めよ。・・・・・・ところでさあ、」

そこでココはいきなり見張りの二人に声をかける。

「見張りが二人って多くないか?そんなゴツい銃抱えてさあ・・・・・・。こっちだってけっこう神経すり減らしてるんだぜ?」
「ふん。そうは見えんがな!」
「こいつは眠いって言ってんだろ。そんな銃が目の前にあって眠れるかって。もうマジでしんどいから部屋から出てってくれよ、二人ともさぁ。部屋の外の小窓から見張ればいいじゃん」
「「・・・・・・」」
「休憩だってできるしさぁ。アンタらも何時間も立ちっぱなしできついんじゃないの?」
「・・・・・・」
「・・・・・・ちょっと一旦相談しようぜ」
「・・・・・・そうだな」

見張りの二人は休憩という言葉につられたのか部屋から出ていった。重い銃を抱えて交代無しで数時間も見張りをするというのは彼らにとってもこたえていたのだろう。

「これでしばらくはゆっくり眠れるぜ、ギャット」
「中々やるな。だが礼は言わねえぞ」
「なんでだよ、言ってやれよココに礼くらい。見張りをおっぱらったのに」
「礼は言わない。なぜなら、」

そのとき、ぶちぶちっと音を立ててギャットを縛っていた縄が切れた。切れた縄がはらりと床に落ちる。ギャットが隠していたナイフで切ったのだ。

「これであいこだからだ!」


***


長袖の生地の間に隠していたナイフで縄を切り、束縛から解放されギャットは扉に突進し勢いを殺さずにドアを開けた。それで見張りの片方に扉ごと体当たりをぶち当てた。
いきなり現れたギャットに驚いたもう片方の見張りの反応は驚きによってコンマ数秒遅れた。彼が銃を構えなければ、と思ったときにはもうギャットの掌底があごに炸裂し、膝から崩れ落ちた。

「死ね!このクソ・・・・・・」

体当たりを食らった方がドアの向こうからギャットへ銃口を向ける。ギャットは一度ドアを引き寄せ、見張りの男にドアを再度打ち当てた。衝撃でやや後ろに後退した男にギャットが追撃を仕掛ける。


が、男はギャットの予想よりもやや遠くまで後ずさっていたようだ。

「これでも食らえ!」

見張りの男はマシンガンの引き金を引いた。


†††
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