さまよう羊のように 9-5
†††9-5
「止めろ」
タームの静かな声に車内の全員が反応した。
「何を言っている。取引を反故にしたいのか」
「いや、確認をしたい。貴様が発信機を持っていないかどうかをな」
「ふん。ギャットたちも調べたのか?」
「あいつらはじきに救急車に乗る手はずになっている。連中とウチの組員が一緒にいるところを押さえられなければいいからな。あいつに付いていようがいまいがそんなことは問題ではない」
「なるほどな。こっちはずっと一緒に行くからな」
「そういうことだ。カブ、そこの店でこいつに着せる服を買ってこい。適当でいいから一分で戻れ」
「はい!」
「いや、ダメだ。キソンに行かせろ」
「・・・・・・。キソン、行け」
キソンが買い物に行く。車内に残ったのはココ、ターム、カブ。
「妙な奴だ。なぜキソンをそんなに行かせたがる?」
「・・・・・・そいつを買いに行かせてその間に俺を殺す魂胆だったんじゃないのか?ええ?」
「何を言っているんだお前!タームさんがチャックを見捨てるようなことするはずがねえだろ!」
助手席のカブが振り向いて後ろのココにつかみかかる。
「信頼されてるねえ、タームさん?」
「鬱陶しい奴だ。被害妄想も大概にするがいい・・・・・・!」
憎々しげにタームが吐き捨てる。相当に腹を立てているらしい。その時、着替えを買いに行っていた側近が戻った。タームは車内でココを素早く着替えさせ、カブに身体検査させると再び車を走らせた。
***
やがてナッツから無事に救急車に乗ったとの連絡が入った。
「よかった・・・・・・」
ほっと安堵のため息をつくココにタームは鋭く言い放った。
「さっさとチャックのところへ案内しろ。ギャットとナッツを助けたいならな」
「どういう意味だ」
「貴様が私を裏切ってチャックの居場所へ案内しないのならすぐにでも部下を病院へ向かわせて始末をつけさせる、という意味だ」
「けっ。・・・・・・安心しろよ。チャックの所へ必ず連れていってやるよ」
「それが賢明だな」
その後しばらくしてココたちは一つの廃工場にたどり着いた。
「チャックはこの中だ。・・・・・・入るぞ」
***
かつかつ・・・・・・
かつかつ・・・・・・
四人分の足音が静まり返った工場跡に響きわたる。何を作っていたのかはわからないが巨大な工具・機械がそこかしこに放置されたままになっている。買い手がつかなかった機械たちだろうか。
「この奥の小部屋だ」
ココが先導するように前を歩く。その少し後ろをタームが歩く。妙な動きをしないように、とココに銃を突きつけている。それはキソンも同じで、違うのはタームの左後ろにいるということ。カブはきょろきょろと辺りを見回している。
(妙な真似を始める前にこいつを始末するべきだが・・・・・・、チャックをこの目で確認するまでは殺せん!)
タームは額を流れる汗が目に入っても瞬き一つせずにココの動作を見ていた。
やがてココは奥にある小部屋の扉にたどり着いた。しかし、ココが扉を開けようとするとタームがそれを制し、キソンに開けるように指示を出した。
「待て。お前は下がれ。・・・・・・キソン、開けてくれ」
久しく油など差されていないのだろう。扉はひどく甲高い音を立てて開いた。暗い部屋だったので目が慣れるまで少しかかった。
・・・・・・中には誰もいなかった。
「キサマっ、騙したなっ!」
チャックの不在を確認したタームが激昂して銃を構えるが、そこにココの姿は無い。タームたちが部屋の中に気を取られている内にココは工場内に点在する機械たちの間を縫うようにして走っていた。
「こっちだ!チャックはこっちの部屋にいる。早く確かめに来いよ!」
走りながらそんなことを叫んでいた。
「くそっ。何が狙いだっ・・・・・・。お前たち、左右に分かれて奴を追えっ。私は真っ直ぐ行く。絶対に逃がすな!」
「「承知しました!」」
†††
「止めろ」
タームの静かな声に車内の全員が反応した。
「何を言っている。取引を反故にしたいのか」
「いや、確認をしたい。貴様が発信機を持っていないかどうかをな」
「ふん。ギャットたちも調べたのか?」
「あいつらはじきに救急車に乗る手はずになっている。連中とウチの組員が一緒にいるところを押さえられなければいいからな。あいつに付いていようがいまいがそんなことは問題ではない」
「なるほどな。こっちはずっと一緒に行くからな」
「そういうことだ。カブ、そこの店でこいつに着せる服を買ってこい。適当でいいから一分で戻れ」
「はい!」
「いや、ダメだ。キソンに行かせろ」
「・・・・・・。キソン、行け」
キソンが買い物に行く。車内に残ったのはココ、ターム、カブ。
「妙な奴だ。なぜキソンをそんなに行かせたがる?」
「・・・・・・そいつを買いに行かせてその間に俺を殺す魂胆だったんじゃないのか?ええ?」
「何を言っているんだお前!タームさんがチャックを見捨てるようなことするはずがねえだろ!」
助手席のカブが振り向いて後ろのココにつかみかかる。
「信頼されてるねえ、タームさん?」
「鬱陶しい奴だ。被害妄想も大概にするがいい・・・・・・!」
憎々しげにタームが吐き捨てる。相当に腹を立てているらしい。その時、着替えを買いに行っていた側近が戻った。タームは車内でココを素早く着替えさせ、カブに身体検査させると再び車を走らせた。
***
やがてナッツから無事に救急車に乗ったとの連絡が入った。
「よかった・・・・・・」
ほっと安堵のため息をつくココにタームは鋭く言い放った。
「さっさとチャックのところへ案内しろ。ギャットとナッツを助けたいならな」
「どういう意味だ」
「貴様が私を裏切ってチャックの居場所へ案内しないのならすぐにでも部下を病院へ向かわせて始末をつけさせる、という意味だ」
「けっ。・・・・・・安心しろよ。チャックの所へ必ず連れていってやるよ」
「それが賢明だな」
その後しばらくしてココたちは一つの廃工場にたどり着いた。
「チャックはこの中だ。・・・・・・入るぞ」
***
かつかつ・・・・・・
かつかつ・・・・・・
四人分の足音が静まり返った工場跡に響きわたる。何を作っていたのかはわからないが巨大な工具・機械がそこかしこに放置されたままになっている。買い手がつかなかった機械たちだろうか。
「この奥の小部屋だ」
ココが先導するように前を歩く。その少し後ろをタームが歩く。妙な動きをしないように、とココに銃を突きつけている。それはキソンも同じで、違うのはタームの左後ろにいるということ。カブはきょろきょろと辺りを見回している。
(妙な真似を始める前にこいつを始末するべきだが・・・・・・、チャックをこの目で確認するまでは殺せん!)
タームは額を流れる汗が目に入っても瞬き一つせずにココの動作を見ていた。
やがてココは奥にある小部屋の扉にたどり着いた。しかし、ココが扉を開けようとするとタームがそれを制し、キソンに開けるように指示を出した。
「待て。お前は下がれ。・・・・・・キソン、開けてくれ」
久しく油など差されていないのだろう。扉はひどく甲高い音を立てて開いた。暗い部屋だったので目が慣れるまで少しかかった。
・・・・・・中には誰もいなかった。
「キサマっ、騙したなっ!」
チャックの不在を確認したタームが激昂して銃を構えるが、そこにココの姿は無い。タームたちが部屋の中に気を取られている内にココは工場内に点在する機械たちの間を縫うようにして走っていた。
「こっちだ!チャックはこっちの部屋にいる。早く確かめに来いよ!」
走りながらそんなことを叫んでいた。
「くそっ。何が狙いだっ・・・・・・。お前たち、左右に分かれて奴を追えっ。私は真っ直ぐ行く。絶対に逃がすな!」
「「承知しました!」」
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