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北の海の魔女 111

†††111


地に伏したレイケンの元へホルトゥンが歩み寄った。風が吹き抜けて砂埃が舞い上がり、ホルトゥンが目の辺りを覆う。
ホルトゥンがレイケンの傍へ近づいてみると、数十本の矢を受けながらもレイケンにはまだ息があった。瀕死の重傷を負ったレイケンを見てホルトゥンが嘆息する。

「だから言ったじゃないか。容赦しないって」
「く……ぅ……。……一体、何を……した……」
「竜だよ」

レイケンの目はすでに虚ろであり、焦点も定まっていなかった。そんなレイケンの問いかけにホルトゥンが静かに答える。

「〈幻影〉を使って城門の兵士たちに竜を見せたんだ。君が立っている場所に竜の〈幻影〉を写して、城門にいる左大臣に『竜を殺せ』と命令させたのさ」

ちなみに今現在ホルトゥンとレイケンが矢で射抜かれていないのは、竜の〈幻影〉が別の場所に移動したからだ。城門の兵士たちはいもしない竜に向かって今もせっせと大量の矢を放ち続けている。

「どうだい、いい作戦だろう。……って、聞いてないじゃないか」

いつの間にかレイケンは意識を失っていた。
ホルトゥンは振り返り、城門の近くにいたグルップリーに手招きした。グルップリーがホルトゥンの馬を連れて近くまで来るとホルトゥンは指示を出した。

「グルップリー、〈盾〉を外すのを手伝ってくれ」

ホルトゥンとグルップリーは〈盾〉とレイケンを繋いでいた皮のベルトをナイフで切り、〈盾〉を取り外した。ホルトゥンは〈盾〉を手に取ると、自分の馬の背に乗せた荷物鞄に押し込んだ。
〈盾〉を積み込み、両手をはたいて埃を落とすホルトゥンにグルップリーが問いかける。

「・・・・・・ この後はどうするんだ?」
「レイケンを連れて陣に戻る。シャインはそれで納得するさ」
「使者を連れて帰ればよかったからな。この将軍も使者と言えば使者みたいなものか」
「そういうこと」

グルップリーの視線がレイケン将軍の全身にくまなく突き刺さった矢に注がれる。

「ところで将軍はまだ生きているのか。とっくに死んでるなんてことは無いだろうな?」
「大丈夫だよ」

そう返事をしてホルトゥンが携帯鞄から林檎ほどの大きさの小瓶を一つ取り出す。その中には真っ黒な液体が入っていた。グルップリーが液体の色味を見て気味悪そうな顔をする。

「それは何だ?中身は?」
「魔法薬だよ。これで傷が治る」

ホルトゥンはその黒い魔法薬を数滴、レイケンの口に垂らした。
これでよし、と呟いてホルトゥンが小瓶の蓋を閉める。

「これでレイケンは無事だ。しばらくすれば意識が戻るよ」
「本当か?」
「ああ。さあ、さっさと陣に戻ろう。シャインが首を長くして待ってるからね」

そう言ってホルトゥンはニヤリと笑った。


†††


次回更新は来週水曜日です。
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