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北の海の魔女 114

読者の方がもしも寒気を感じてくれたら僕はとても嬉しいです。


114 幻


レイケン将軍は少年の言葉にぐうの音も出なくなったかに思えた。

しかし、当の将軍はいきなり低い声でのどを鳴らして笑い始めたのである。その寒気のするような笑いが終わるとレイケンは少年の耳元に低い声で囁いた。

レイケン「・・・・・・小僧、舌先三寸ではどうにもならにことがあるって教えてやるよ」

そう言うや、レイケンは少年の喉元に突きつけていた短刀の力を強くした。少年の首がわずかに切れて血が一筋垂れる。

少年「っ・・・・・・!一体、何を・・・・・・!」
レイケン「お前たちを殺して逃げるのさ」
少年「さっき言ったじゃないか!あなたは逃げきれないよ!」
レイケン「構わないさ。このままお前たちに利用されるよりもマシだ。いっそ逃亡途中で殺される方がいい」

その時、両手を頭の後ろに組んでいたホルトゥンが手を下ろした。

レイケン「おい!何をしている!手を・・・・・・」
ホルトゥン「下げたらどうだって言うんだ。どうせ、俺たちを殺すんだろ。だったら、」

関係ないじゃないか、そう言ってホルトゥンは振り返った。その目を見た少年は自分の首に刃物が突きつけられているということも忘れてしまった。

冷たい。そう表現するほかない。
その目で睨まれれば寒さのあまり凍死してしまいそうだ。
少年の背筋にぞぞぞぞぞ、と寒気が走り全身に鳥肌が立つ。恐怖で少年の瞳に涙がにじむ。冷たい瞳の宿す鋭い殺意で心が切り刻まれる。

少年が怯えていることに気づいたホルトゥンは一言、

「・・・・・・君はしばらく幻でも見ていろ」

と告げて少年に<幻影《ファントム》>をかけた。

少年が見たのは春の野にいるという暖かい幻だった。

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