北の海の魔女 115 招かれざる客 - 天邪鬼者の作文書庫

北の海の魔女 115 招かれざる客

2015年08月17日01:17  北の海の魔女

丸一ヶ月くらいトンズラしててすみませんでした。色々あって(主に暑くては)やられていたので何もできなくなっていました。
今後は週一更新できるはずです。


前回のあらすじ
レイケン将軍を説得するために彼を捕縛していた幕舎にやってきたシャイン(少年)とホルトゥンは、拘束を解いたレイケンによって逆に追いつめられてしまう。シャインを今にも殺そうとしたレイケンに対してホルトゥンは殺意を向けた・・・・・・。


115  招かれざる客


ホルトゥンはシャインに春の野原の<幻影《ファントム》>を見せた。自身が殺意を抱いている姿を見せたくなかったためだ。シャインを外野に押しやるとホルトゥンは低い声で質問した。

「・・・・・・レイケン、お前がどうしてまだ生きているのかわかるか?」

その唐突な問いにレイケンは困惑しながらも答えた。

「知らん。貴様の連れの魔法使いが何か妙な術でも使ったのだろう。貴様は<幻影《ファントム》>しか使えんという話だからな」

連れの魔法使いというのはグルップリーのことだ。

「はずれだ」

そう言ってホルトゥンは指を鳴らした。

「・・・・・・っ!」
「動けまい。お前に魔法薬を与えて命を救ったのは私だ。つまりお前は私に『借り』がある」
「魔法か・・・・・・?」
「そうだ。古い禁魔術<返済《ペイバック》>だ。借りを強制的に返済させる」

ホルトゥンはレイケンを指さし、『命令』した。

「『私が貸したものは汝の命。その借りを今・・・・・・』」
「ホルトゥン!!」

大声を出してホルトゥンの『命令』を遮ったのは<幻影>をかけられていたはずのシャインだった。

「ホルトゥン・・・・・・!見損なったぞ。お前はそこまで非道な奴だったのかっ!」

ホルトゥンが未だ殺意の抜けきっていない冷えた眼をシャインに向けた。

「・・・・・・<幻影>から抜け出すとはな。さすが、といったところか」
「何の話だっ!」
「・・・・・・私が今レイケンに使用している魔法は<返済《ペイバック》>という。借りのある者をあらゆる命令に従わせる魔法だ」
「魔法の説明なんて不要だ。なぜレイケンを殺そうとした!」
「レイケンはいくつ『盾』の欠片を隠し持っているかわからない。生かしておけばまた同じ目に遭うかもかもしれない。次は殺されるぞ」
「だからなんだ!殺していいとでも言うのか!?」
「自分が殺されてもいいのか?」
「構わない。そんなことで人を殺すくらいなら自分が死ぬ」
「・・・・・・」
「ホルトゥン、<返済>を解いてくれないか?」
「レイケンへの『借り』は一つしか作っていない。今解けば・・・・・・もう私には助けられないんだぞ」
「いいよ」
「・・・・・・そうか」

ホルトゥンはいつの間にか殺意の消えた目に戻っていた。

「『汝の借りは免除する』。・・・・・・もう動けるぞ」
「・・・・・・」

シャインはまだレイケンの腕に拘束され、ナイフを突きつけられたままだった。レイケンは身動きが取れなかったのでシャインはその気になればそこから抜け出すこともできたはずだった。
レイケンはシャインのつむじをジッと見つめた。

「・・・・・・どうして・・・・・・逃げなかった?」

レイケンはしばしの沈黙の後、そう少年に問いかけた。

「忘れてたから」

少年はあっけらかんとそう答えたのだった。


***


少年はほくほく顔でホルトゥンは仏頂面という、いつもとは逆の表情で二人は幕舎に戻っていた。

「無事にレイケンを説得できてよかった」
「・・・・・・ムチャしすぎだよ」

ざくざくと芝生をふみしめながら歩いていく。少年は周りの兵士たちの視線を感じながらも平然と歩いていた。『西の国の』文官の服を着たホルトゥンと一緒であればとがめられることはないのだ。ちなみにホルトゥンの服は<幻影>による錯覚だ。

「ホルトゥン、よく考えたらレイケンを殺すと計画に差し支えるじゃないか。全部水の泡になるところだよ?」
「悪かったね。つい、ね」
「まあ、僕を守るためだったんでしょ。お礼は言っておくよ、ありがとう」
「どういたしまして」
「ところでさぁ」

ふと少年は足を止めた。これが本当に聞きたかったことなのだろう。ホルトゥンも足を止めた。質問の内容も予想はついていた。

「・・・・・・さっき<幻影>から抜け出せたんだけどさ。あれってどういう・・・・・・」
「それは・・・・・・」

ホルトゥンが少年の質問に対する答えに詰まっていると、二人の頭上から低い声がした。

「クックック・・・・・・、裏切り者とはあなたのことでしたか、宮廷魔法使い殿」
「「!?」」

シャインとホルトゥンが見上げると、そこには黒いローブを着た男が浮かんでいた。地上十メートルほどの高さでふわふわと風船のように揺れながら男は陰気な声で笑った。

「お久しぶりです。今の名前はホルトゥン、とか言いましたか?」
「ベリオか。雇い主は・・・・・・東の国だな?」
「あなたの目は誤魔化せませんねえ。できれば相手などしたくないのですが・・・・・・、まあ金を積まれれば、ねえ?」
「君は相変わらずだな。灸でも据えてやろう」
「お手やらかにお願いしますよ、先輩」

ホルトゥンはベリオという黒ローブから視線を離さずに囁いた。

「シャイン、グルップリーをここに連れてきてくれないか」
「オッケー。でも質問には後でキッチリ答えてくれよ」
「わかった」

シャインはホルトゥンの言葉に従って幕舎に向かって走り出した。

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