北の海の魔女 116 当千の槍 - 天邪鬼者の作文書庫

北の海の魔女 116 当千の槍

2015年08月26日23:58  北の海の魔女

ぎりぎりセーフ。更新日(水曜)に間に合ったぜ……!!!




なんやかんやでレイケンを説得したシャイン(少年)とホルトゥンだったが、突如現れた黒ローブの魔法使いベリオの襲撃にあってしまった・・・・・・。


116  当千の槍


「くっそ~、折角順調に進んでたのに!全部台無しじゃないか!」

ヒゲ将軍の幕舎に向かって走りながらシャインはボヤいた。予想外の襲撃が腹立たしいのだ。

「まだ動かせる魔法使いが東の国にいたなんて・・・・・・!」

シャインは走った勢いのままで幕舎に入った。しかし、戻っていると期待していたグルップリーはいなかった。

「くそっ、戻ってない。まだ説得してるのか」

シャインがホルトゥンの応援を頼む内容の手紙をグルップリー宛に書いていると、一人の伝令兵が幕舎に駆け込んできた。

「将軍閣下!大変でありま、す・・・・・・」

伝令兵と少年は目があった。伝令兵は見知らぬ人間が将軍の幕舎にいることに対して警戒心を露わにした。

「・・・・・・な、何者だお前っ!?」
「私の名はシャイン。グルップリー指南役の補佐官をしています」

シャインは咄嗟に口から出任せを言った。

「そうですか・・・・・・。失礼ですがご身分を証明できるものは?」
「ありません。しかし、ここに指南役がいらっしゃれば私の身分を証明してくれるでしょう」
「・・・・・・疑って申し訳ありません。その言葉で十分です」
「構いません。それより何か連絡事項があったのでは?私から将軍閣下に伝えておきましょう」
「はっ、はい。東の国から大軍が攻めて来たのです!」
「なっ・・・・・・、はあぁ!?」

兵士の報告にシャインは目を丸くして驚いた。


***


東の国から更に東に進むと、『深緑の森』と呼ばれる広大な森が広がっている。うっそうとした森で、その周辺に住む人間は少ない。それは森に棲む大型の生物も原因ではあるのだが、主な理由は不気味な魔法使いが森に住んでいるからであった。
その魔法使いは、今まさにホルトゥンと対峙していた。




「・・・・・・やはり『盾』を持っているのか。<幻影《ファントム》>が効かない」
「東の国の大臣に貸していただいたんですよ。まあ、死ぬまで返すつもりは無いんですがね」
「ちぇっ、変わらないな。お前は」

降り注ぐ鉄球の雨を避けながらホルトゥンは叫んだ。
ベリオが扱う魔法は<浮遊《フライ》>と<鉄《フェルム》>である。<浮遊>は宙に浮く魔法、<鉄>は鉄を生み出す魔法。それらを組み合わせたハメ技がベリオの得意戦法だった。
すなわち、<浮遊>で敵の手の届かない空中を漂い、そこから<鉄>で生み出した鉄のかたまりを落としまくるのだ。

「まったく、性格の悪い戦法だよ!」
「幻術ハメ戦法メインの先輩に言われたくありませんね!」

言い返しながらベリオはポイポイと鉄塊をまき散らしていく。それをホルトゥンがすんでのところで回避していく。

「無駄だ。お前の<鉄>は単調すぎる。避けるのは難しくない」
「じゃあ、体力的に避けるのが難しくなるまでつきあってもらうまでです」
「性格悪いぞ!」
「問答無用です。先輩は今ここで死んで下さい」

ホルトゥンはげんなりした顔で降り注ぐ鉄球の雨の中を走り抜けた。


***


「東の国が攻めてきた・・・・・・!?」

衝撃のあまりシャインは伝令兵の言葉を復唱した。

「ええ。私はそのことを将軍閣下にお伝えしに来たのです」
「わかりました。閣下は今第九区画にいらっしゃいますよ。それと、グルップリー指南役にも会うことができたら第七区画へ行くように言っておいてください」
「・・・・・・わかりました」

そう言って伝令兵は踵を返し、幕舎を出ていった。

(第七区画にいきなり現れた魔法使いは東の国に雇われた、と言っていたな。東の国はおそらく内と外からの二重攻撃でこちらを翻弄するつもりなのだろう。それだけあの魔法使いが強いということだ。ホルトゥンとグルップリーがここにいることは知られている。その上で奴を差し向けてきたのだから。だとすれば、グルップリーを行かせるのは正解・・・・・・なのか?)

シャインは幕舎の中をぐるぐると歩き回りながら思案していた。東の国の攻撃に対してどのように対応するべきなのかを。
そうしてシャインが幕舎の中をぐるぐる回っていると、新しい客が二人入ってきた。今度の客は鎧を着込んだ厳めしい格好をしていた。

「動くな。伝令の者にお前のことを聞いた。怪しい子供がいるとな。悪いが来てもらおうか」
「・・・・・・しくじったか」

シャインはごついおっさん二人に両脇をがっちりと抱えられて連行されていった。


***


「大変だ!第七で戦闘が起きているみたいだぞ!」
「魔法使い同士でやりあっているらしい!」
「へ、兵士長!兵士長ーっ!」
「兵士長め、バックレやがったなチクショウ!」

ばたばたと兵士達が走り抜けていく足音をレイケン将軍は槍を磨きながら黙って聞いていた。しかしやがて立ち上がって幕舎から、ぬっと顔を出した。

「レイケン将軍、幕舎から出てはなりません。お戻り下さい」
「・・・・・・なにやら外が騒がしいようだが?」
「どうやら陣中に敵が現れたようで」
「てこずっているのか」
「そのようで」

ふむ、と言ってレイケンはにやりと笑った。
その笑みをいぶかしんだ見張り役の二人は次の瞬間、レイケンの槍の殴打で気を失ってしまった。

「鍛え方が足りんな」

レイケンは鼻で笑うと槍を右手に持ったまま外に出た。外では第七地区の襲撃による騒ぎで兵士たちが右往左往していた。魔法使いの襲撃と聞いて兵士長がバックレてしまったのだ。混乱をまとめる者はいなかった。
そんな兵士たちの波をレイケンはがしがしと突き進んでいった。レイケンは東の国の軍服(鎧は着ていない)であり、ただでさえ目立つ上にレイケンは大柄であった。兵士たちの中で頭一つ突き出した彼の姿は看板のように目立っていた。

「き、貴様っ、東の国の者か!?」
「なぜここにいる!?」
「間者か!?」
「取り押さえろ!!」
「やかましいぞ、貴様らっ!」

レイケンが槍を一振りする。兵士たちは紙切れのように吹っ飛んでいった。

「ふん!お前らごときがこの俺を止められるものか!安心しろ、俺は敵ではない。お前たちが手をこまねいているという魔法使いを代わりに倒してやろうじゃないか。俺は今、『魔法使い』という奴に一泡吹かせたくてたまらんのだ!」

そう言ってレイケンはにやりと笑って柄尻をガン!と地面に叩きつけた。


関連記事
トラックバックURL

http://amanojakumono.blog.fc2.com/tb.php/348-51c72510

前の記事 次の記事