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夢幻 3.0

†††
白田薫と椿は病院を出たその足で結果報告に出向いた。

カオルはだん、と机に蒼い玉を乱暴に置いた。カオルの向かいに座っているそいつはそんなカオルを、そんなに乱暴に扱うなとでも言うように一にらみして度のきつい眼鏡をかけた。
「なにが『拝み玉』だよ」
とカオルは苦虫でも噛みつぶしたような顔で目の前のそいつに言った。
ちっとも効果無いじゃないか、とぼやくカオルにしっぽのふわふわしたそいつは眼鏡を外して告げる。
「こいつは使用済み、だねえ。もう使えないよ」
カオルはそんなこったろーよ、という顔をした。
「そんな顔するな。これでも十分高く売れる」
「金の話なんかしてねーよ」
カオルは狐の着物の胸ぐらをひっつかんでぐいっと顔を近づけた。
「いつもいつも紛いもんばっかりつかませやがって。てめえ、ちゃんと探す気あんのか?」
しかし、狐はそんなカオルの文句にも眉一つ動かさず、平然とキセルの煙をぷはーっとカオルの顔に吐きかけた。
「いつもいつも文句言いやがって。探してると言っているだろうが。それだけ難しいんだ」
「てめえ・・・・・・!!」
なおも怒りの収まらないカオルの首元を椿がひっつかんだ。
「頭を冷やせ」
そう言ってカオルの頭を机に叩きつけた。
「手荒じゃのお・・・・・・」
カオルが悶絶する様を見てにやにやと狐は嗤った。
「・・・・・・それで?次は?」
椿が冷たい目で狐に問いかける。狐は意地の悪い目で立ったままで上から見下ろす椿の目を見据えて言う。
「ギンパチが『断病の鎌』を持っている、という話を聞いたことがある」
「ギンパチ・・・・・・。猫又か」
「そうだ。奴はあの森の一角の長だ。手強いぞ」
「・・・・・・上等だ」
そこでカオルが起きあがった。目には燃えるような光を宿している。
「『梟の森』の猫どもを相手に奪ってきてやるよ。その鎌をな」

†††

カオルと椿は狐の家を出て、ようやく帰り道を行き始めた。
「使用済みか・・・・・・。そんなこともあるんだな」
「前にも何度かあった」
へええ、と椿が息を吐く。
「で、猫又相手に何か手はあるのか?」
「ギンパチねえ・・・・・・。さすがに初対面の相手じゃあ策も練りようがない」
「必要なら・・・・・・」
「いや、それは無い。お前が俺といる限りな」
「いつまでそんなことをいってられるのかねえ・・・・・・」
カオルは椿を振り返り、その腰の刀にちらりと視線をやり、再び椿を見据えた。
「これが俺のやりかただ。いままでも、これからもな」

†††

「ただいま」
「おかえりー」
カオルが古びた一軒家の玄関扉をがらがらと開けると奥から間の延びた声が聞こえた。
「晩ご飯はー?」
「唐揚げー」
「わかったー」
「弁当はー?」
「後でもってくー」
カオルは自分の部屋の戸を開けてベッドに倒れ込んだ。
「生身の体があると大変だな」
「ふん」
倒れ込んだままカオルはお前は悩みなさそうでいいよな、と言った。
椿は口は笑みの形に歪めたが、
「代わるか?」
と言ったその声は冷え冷えとしたものだった。
「冗談だよ」
カオルは起きあがった。


†††

「このコンビあんまり面白くないわねえ。ねえ、カオ?」
「んー、そうだね」
カオルは高校の宿題を猛スピードで解きながら、隣でお笑い番組を見ている母の感想に一応同意した。
「ねー、カオー、この問題教えてー」
「ん・・・・・・、じゃあこの問題解いてみろ」
その更に隣にいる妹がわからないというので、少し簡単な例題を出してやる。
「解いてよー」
「ダメだ。自分で解け」
「ちっ」
最後に妹は一瞬だけ素に戻ったが、大人しく例題を解き始めた。
「なー、カオー、これ解いてくれよー」
今度は大学生の兄がからんできた。
「大学の問題はわかんねえって」
「ちぇっ」
でもきっと説明したらわかるんだぜ、こいつ、などとぼやいている。
ちなみにカオルにはちらっと問題が見えたのだが、説明なしでもいけるな、と感じたとか。
「なあー、カオー」
「親父もかよ!」
父親も輪に入りたかったのだ。

†††





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