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さまよう羊のように6.0

大使館に向かうための準備が始まった。
まずココは大使館に連絡することにした。ナッツが何も言わなかったので連絡しなかったがよく考えると妙な話だ。一番頼りになりそうなところに連絡せずに自分達だけで計画を立てていたのだから。

大使館に電話をしてココ達は驚くことになる。

何回目かのコールでつながった。
<はい、こちら***大使館です>
<もしもし、私は○○○という者です>
ココは本名で○○○と名乗った。
「○○○さん?」
電話の相手は急にイントネーションを戻した。まあ、同じ国の者だとわかったので当然かと思っていると、
「△△△さんはご存じですか?」
ココはぎょっとした。△△△というのはナッツの本名だ。
「なぜ△△△の名前が・・・・・・?」
「彼は先日こちらに連絡をしてきました。その際にあらかたの事情は把握しています」
「え・・・・・・?」
ココは軽いパニックに陥った。理解の範疇を越えている。
「今から説明しますね」
どうやらナッツはココが助けを求めるとすぐに大使館に連絡したらしい。その時に警察に捕まりそうになったという話もしたそうだ。
  「警察の中にもマフィアの手先がいると?」
  「あいつの話ではそうみたいです。女の子を捕まえようとしたとか」
大使館も警察に連絡することはなかった。どの程度警察にマフィアの毒が回っているのかわからなかったからだ。つまり、警察全体がグル、という可能性が捨てきれなかったということだ。
「そこで△△△さんと私たちは協力することにしたんです」
ナッツは大使館に一緒に協力して警察の闇とマフィアを丸ごと掘り出そう、と持ちかけたらしい。
「驚きましたよ。現実にそんなこと言う人がいるなんてね。こちらのスタッフも最初はまあ、その真に受けていなかった、のですが・・・・・・説得されちゃいました」
「・・・・・・さすがあいつですね」
「何者ですか、彼は?」
「一般人ですよ。ただのね。・・・・・・今、あいつはマフィアのところです」
「え?」
「捕まったんです。貫通線の駅で・・・・・・」
「ちょっと待ってください」
電話の向こうでスタッフが集まる気配がした。
「・・・・・・はい、今スピーカーにしました。何があったんですか?」
「貫通線に乗って彼の家に逃げ込もうとしていたのですが、乗り込む前に彼が発砲したんです」
「彼が・・・・・・ですか?」
「はい。私たちも目を疑いました」
「原因は?」
「推測・・・・・・ですが、変装がばれたんだと思います」
「ふむ・・・・・・。まあ、考えても仕方ないでしょうね」
今までとは違うスタッフの声だ。低くて、ぶっちゃけ偉そうな声だ。
「きっと彼ならなんとかすると思っていたのですが、仕方ありませんね」
これを聞いてココは少し腹が立った。
「・・・・・・それで、これからどうしますか?」
声にトゲが立ってしまった。
「そうですね・・・・・・。こちらに来ることは可能ですか?」
「どうすれば行けますか?」
「地図を用意してください」
ココはイプに地図を持ってくるように指示した。

†††

ココは電話を切った。
<どうなったの?>
シャーミラガいてもたってもいられない、という声でココに尋ねた。
ココは地図を指でなぞりつつ、
<このルートで大使館まで行く>
と返事した。
<マフィアは?大丈夫なのか?>
イプが心配そうな声を出す。
<そうだ・・・・・・。イプも一緒に行ってもらうよ>
イプは目を見開いたが、すぐに納得した顔をした。ナッツが捕まったのだ。ナッツがここを吐かないとも限らない。
<・・・・・・わかった>
イプはあえて確認したりはしなかった。
ココは横目でシャーミラを見つつ、先ほどのイプの問いに答える。
<マフィアは心配ないそうだ。見張りが少ないルートなんだってさ>
そう聞いてイプもシャーミラも考え込む様子を見せたが最後には、仕方ないか、といった風にココに賛同した。
ただフォンはじっとココを見つめていた。

†††

『貫通線』とはまた別の線の駅にココ、フォン、シャーミとテト、イプが到着した。マフィアの目をかいくぐってこの駅まで来たことは言うまでもない。
<ふう、なんとかここまでは来れたか>
そう言ったのはココだ。貫通線と比べて人があまりいない駅だった。だからといって貫通線の時よりも楽に乗り込めるわけではない。見張りの数は少ないが乗客の人数も少ないので見張りの目に必ずさらされるだろう。
今回はシャーミラ、イプ、フォン、テトが『親子』、ココが緊急事態に対応する役になった。前回ばれたのはきっとココが外国人だから目立ったためだとココが自らその役を買って出たのだ。最優先はフォンなのだ。
シャーミラ、とテト、が一人で駅の中に切符を買いに行く。イプとフォンは日なたで、ココは物陰でそれを待つ。シャーミラは『夫』と『娘』に切符を笑顔で渡し、残り一枚をひらりと地面に落とした。そのまま駅の中に入っていく。
後からそれをココが拾う手はずになっていた。
ココは地面に落ちた切符に張り付かせていた視線を引き剥がし、歩き出した。

†††

「ココは?」
一番最初に口を開いたのはシャーミラだった。客車に無事に乗り込んでからしばらく経ってもココが現れない。
そんなシャーミラと同じくフォンも目を不安げに揺らす。今までずっと一緒にいてくれた人がいないのだ。当然だろう。
イプはそんな二人とは違った。はっと何かに気づいたようにポケットに手を突っ込み、紙を取り出した。
駅に入る前にココがイプに渡したものだ。
幾重にも折り畳まれた中に書かれていたのは一言。

<フォンを頼んだぞ>

†††
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