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読み切り?

日本ブログ村でトーナメント(短編の)やってたんで、応募しようと思って書きました。ちなみに『夢幻』の白田薫の少年時代の話です。もちろん『夢幻』読んでなくても問題無く読めます。是非読んでやってください。駄文失礼しました。

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†††

少年がいつもの公園へ行くと、あの子が砂場で声を上げて泣いていた。
「どうしたんだよ」
少年がスコップなんかのおもちゃを一杯にいれていたバケツを傍に置く。
「あ、あの子たち、あの子たちが、あ、あたしの髪留めを壊したの~!!」
少年は言葉を失った。見るとたしかにいつもつけている小さな髪留めをしていない。見回すと少年はすぐそばに何度も曲げられてちぎられた金属性の何かを見つけた。あの髪留めだった。
「お母さんが、せっかくくれたものだったのに~!!」
言い切るとうわーん、と少女はもう一度大泣きに泣いた。
少年は少女の背中をなでて泣かせてやった。

†††

「おい、おまえら」
翌日、少年は三人組の所へ行った。少女の髪留めを壊したやつらだ。あの後で少女に聞いたので間違いない。
「何の用だよ」
「よくも髪留めを壊したな」
少年は言いながら三人に詰め寄る。三人も少年の方に集まってきた。
「お前、女の子の味方していい気になんなよ!」
「あいつはなー、いじめてもいいやつなんだぜ」
「そーだ、そーだ!」
「ママがなあ、あの子のママはおみずの子なのよって言ってたんだ。だからいじめてもいーんだ!」
「ああ・・・・・・?」
少年は奥歯を噛みしめた。腹立たしさのあまり、歯を折ってしまいそうだった。
「お水の子だからいじめてもいいだと・・・・・・?寝ボケんのも大概にしやがれ」
「なんだと!やんのか!」
「見てわかるだろうが!ケンカふっかけてんだよ!」
三人の全身に力がこもる。すぐにも少年にパンチが飛んでくるだろう。
「てめえらの母ちゃんに言っとけ。お水とか言う前にあの人の十分の一でも立派な人間になれってなあ!」

†††

「あら、久しぶり!元気だった・・・・・・ってなによあんたその顔」
「こんばんわ」
少年は三人をぼっこぼこにしたその帰りにたまたま問題のお母さんに出会った。「お水の母ちゃん」である。
少年は腫れた顔をさすりながら気にしないでください、と言った。
「今日は早いですね」
「うん。早く抜けて来ちゃった」
少女の母ちゃん、ミキさんはいひひ、とちょっと悪い笑い方をした。
厚化粧は落としていない。いつも通りだ。ミキさんは少しでも早く少女が一人で待つ家に帰るため、いつも化粧を落とさずに帰ってくる。
「何かあったんですか?」
そう聞いたのは少女のことが気になっていたからだ。あの子は今日もふさぎこみがちだった。
お母さん、ミキさんからもらった数少ないプレゼントが壊されたとあっては当然かもしれないが。
「知ってる?あの子髪留めなくしちゃったみたいなのよ」
多分、あの子は髪留めのことは一切ミキさんに言っていないだろう。忙しい大好きなお母さんに心配かけるような真似はあの子は絶対にしない。でもミキさんにはお見通しだったのだ。しかし一日で見抜くとは、さすがミキさん。
「それでね、落ち込んでるのよ。すごく。それがもう、かわいくって、かわいそうで」
「どっちなんですか」
「どっちもに決まってるじゃない」
ミキさんは少年の目の前で体をくねらせ始めた。
「あたしのあげたプレゼントをなくして悲しむ我が子が愛おしくて愛おしくて・・・・・・食べちゃいたいくらいよ」
「食べないでくださいね」
少年は一応釘を刺す。ありえないとは思うが彼女ならやりかねない。
「ふふふ・・・・・・。ねえ、そのケガ、どうしたの?」
「・・・・・・!何でもないですよ」
不意打ちだったので少し動揺してしまった。
しかしミキさんにはそれで十分だったようだ。
「ありがとうね」
と言って頭をなでられる。表情は見えない。なでる手がけっこう強くて目を開けていられない。
「あの子、明日にはきっと元気になるわよ」
なでるのをやめてミキさんが一歩下がって言う。
「え?」
少年はうふふ、と含みのある笑みを浮かべたミキさんをぽかんとした表情で見ているだけだった。

†††

「おはよー・・・・・・、うわ!」
翌日、ミキさんの言葉に半信半疑になりつつも教室に入ってあの子に挨拶すると、予想外に勢いよく振り返ってきたので少年はびっくりした。
「お、おはよう!!見てコレ!!」
元気一杯やな、と少年が少女の指さす先を見る。そこには前の物よりも一層輝く髪留めがあった。
「昨日、お母さんがくれたの!!いつもお留守番してるからって、ご褒美だって」
満面の笑みで少女は少年に報告する。
少年は理解した。昨日、ミキさんが早く帰ってきたのは落ち込んでいた少女に新しいプレゼントを買うためだったんだと。いつもの時間では店は皆閉まってしまう。
「よかったな。やっぱりミキさんは最高のママだな」
「うん!!」
少女は髪留めの何十倍も、何百倍も輝く笑顔で少年を照らす。
こりゃ、ミキさんの気持ちがわかるわ、と少年は思った。

†††

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