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北の海の魔女 37.0

†††37.0

自称魔法使いが目を丸くする。しかし、その顔には余裕があった。
「へい、お頭。小僧がどこにもいませんぜ」
「何だと!」
お頭が自称魔法使いをすり抜けて少年の目の前に立った。・・・・・・少年と目が合った。
「・・・・・・いないな」
しかし、お頭はそうつぶやくと、大声で少年を見張っていた若い男と思われる名前を大声で叫びながらどこかへいってしまった。
少年は魔法使いに、何が起こったんだ、と言おうとした。
何が、くらいは言ったはずだ。

しかし少年には何も聞こえなかった。
ぎょっとして耳をすますと普通の物音はきちんと聞こえた。
だんだん頭が混乱してきた少年だがもう一度声を出してみた。
何も聞こえない。
少年は藁にすがるような気持ちで魔法使いを見た。魔法使いはくるっとそっぽを向いてどこかへ行ってしまった。
まさか、と思って追いかけようとした少年の耳元で小さな声がした。
「しばらくじっとしていて」
魔法使いの声だった。
「この洞窟にいる誰も君を見ることはできないし、君の声を聞くこともできない。君自身にもだ」
少年はえっ、と思って自分の手を見た・・・・・・つもりだったがそこには何もなかった。
「気づくのが早いね。君は君自身からも透明だ。でも君の触覚は残してある。だから気をつけて」
「触覚があるってことは誰かに触れられてしまえばバレるということ?」
と少年は何も聞こえないため困難だったが声にした。魔法使いが傍にいる気がしたからだ。
「本当に鋭いな、君は。そうだ。誰にも触れられてはいけないんだ」
一呼吸おいて魔法使いは続ける。
「いいかい。しばらくしたら盗賊達が移動し始める。そうしたら君は盗賊達の少し後から付いてくる程度でいいから付いてきて。いいかい、付いてくるんだよ。離れすぎちゃ、ダメだ。それに誰にも触れられちゃダメだからね。いいね」

少年はしばらくその言葉を吟味するように考えていましたが、やがて
「わかった」
と言いました。

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