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詰みかけのゲームみたいな世界に迷い込んで

初回スペシャルだ!!
1-1~1-4まで上げるぜ!
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†††1-1

半年前まではバラ色、とまでは言えないが幸せな人生だった。
半年前までは。
あんなことが起こらなければ俺はこんな山に登らなかったし、こんな事態には陥らなかった。

†††1-2

「ごめん、待った?」
「遅いわよ。何かあったの?」
花蓮がぼやく。俺は走ってきた息を懸命に整える。
「悪い、悪い。目覚ましが鳴らなくてさ」
「どうせまた、止めちゃったんでしょ」
花蓮が素っ気なく言う。
多分、と答えて俺と花蓮は並んで歩き出す。
「時間間に合う?」
と俺は花蓮の左腕の腕時計を指さした。花蓮は時計をちらりと見て、
「余裕よ」
と言った。

†††1-3

「痛え・・・・・・!」
どうやら転んでしまったようだ。もうとっくの昔に寒さなど感じない。この山に入って何時間だろうか。吹き付ける吹雪が情け容赦なく薄着の俺の体温を奪っていく。
もっともそれは好都合なの、だが・・・・・・。
俺は心のどこかで完全にはそう思っていないことに気づく。いや、今気づかないふりをしていたことに気づいたのか。
「早く死なねえかな・・・・・・」
強がってそうつぶやくが歯はがたがたと鳴って、景気付けの意味が全くなくなってしまった。

俺はこの雪山に死ににきていた。
自殺するなら凍死、と俺は昔から決めている。他の方法と違ってきれいだし、あまり迷惑がかからない。死体が見つかることもないかもしれない。カラスにでも食われれば完璧だ。残るは身内が心配することだけだが、生憎俺には身内がいない。

などと考えていたら転んだわけだ。神様が俺に天罰を下さったのだろうか。
そのまま横になって死のうかと伸びていると見てはいけないものが見えた。

洞窟だ。

†††1-4

中に入ってしまった。
俺はふらふらと奥へ進んだ。手頃な岩が地面においてあった。
俺は思い切りそいつに頭突きした。
「俺は・・・・・・、俺は・・・・・・!」
ろくに死ぬこともできない臆病者なのか。あんなことがあっても生きていこうと思っているのだろうか。
約束を破って。

ああ、と天を仰ぎ見る。洞窟のごつごつした岩の陰影が不気味な色合いをなしていた。
くそっ、とぼやきつつも足は自然と洞窟の奥へ奥へと向かう。そんな自分が情けなかった。それでも足は止まらなかった。


世界が抜ける、という感覚を味わった。
地面を見れば草原、だった。イメージ的には春の野、と言っていい。しかし、今は冬だ。というかそもそもここは洞窟の中のはずだ。なのにまぶしい。見上げれば太陽があった。

夢を見ている、という考えが頭の中を占めていく。きっと俺は雪の中に倒れ込んでそのまま死に導かれる前の最後の夢を見ているんだ、そうに違いない。そう思って俺の心を達成感と寂しさが満たす。

ふう、と息を吐いたとき、声が聞こえた。
「お兄ちゃん、何してるの?」

†††

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